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第四章
第四章第32話 指名依頼が来ました
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「あ! レジーナ様、ごきげんよう。ローザさん、いえ、ローザ様もお久しぶりですの」
食堂に行くと、去年の夏休みにベアヌ高原で会ったネダさんがいました。
「ネダ様、お久しぶりです。えっと、今までどおりの呼び方で大丈夫です」
「そうですの? じゃあ、ローザさんも様じゃなくてさん付けで呼んでほしいんですの」
「はい。わかりました」
「よろしくですの」
ネダさんはそう言うと、ニッコリと微笑みました。
「ネダ、あなたも夕食かしら?」
「はい、そうですの。お二人もですの?」
「ええ」
「ご一緒してもよろしいですの?」
「ええ、いいわよ」
「ありがとうございますの」
こうしてあたしたちはネダさんと一緒に夕食を食べることになりました。
「やっぱりローザさんはマレスティカ公爵家の養女になったんですの。わたくしの予想どおりですの」
席に着くなり、ネダさんはこう切り出してきました。
「えっと……」
「だって、魔法が使える光属性の女の子で、さらに炎まで使えるんですのよ? それにあの件だってありますもの。ローザさんを守るにはマレスティカ公爵家か王家に入れるしかないと思っていましたの」
「そうですわね。でも、直接の決め手は治癒魔法の件ですわ」
「あっ! それも聞いていますの! まさか瀉血がダメだなんて驚きですの!」
「わたくしもそれには驚きましたわ」
「魔法ってすごいんですのね。でもどうして瀉血がダメだなんて知っていたんですの?」
「え、えっと……その……ま、前にツェツィーリエ先生の授業で治癒魔法を……」
「まあ! ツェツィーリエ様の!」
全部言う前にネダさんは勝手にツェツィーリエ先生に教えてもらったと勘違いしてしまいました。
えっと、これ、訂正しなくていいんでしょうか?
授業で教えてもらったんじゃなくて夢で見たドクターZが輸血していたからそうかなって思っただけなんですけど……あれ? でもどうやって説明したらいいんでしょう?
夢で見たなんて、変な子だって思われますよね?
そうしてどうやって訂正しようか悩んでいるうちに話題はどんどんと移り変わっていき、完全にそのタイミングを失してしまいました。
それからも割とあたしに関係のある話をしているのですが、ネダさんがものすごい勢いで話して、それにお義姉さまが適宜答えるという形で話が進んでいて、あたしは話を聞いているだけになっています。
そうしていると、ネダさんが突然話を振ってきます。
「あ! そういえばローザさんはどのクラブに入っているんですの?」
「え? あ、はい。えっと、料理研究会です」
「料理研究会! ローザさんは料理をするんですの?」
「えっと、はい。その、ちょっとですけど……」
「何が得意なんですの?」
「え? えっと、ま、丸焼きとか……」
「丸焼き? すごいですの! そういえばローザさんは冒険者でもあるんでしたの。やっぱり野営をするときは丸焼きですの?」
「え? えっと、はい。そういうときもあります」
「まあ! なら夏になったらローザさんの作った丸焼きが食べたいんですの」
「え? な、夏ですか?」
「そうですの。またベアヌ高原に行くんですのよね?」
「え、えっと……」
「まだ決まっていませんわ。ゴブリンの襲撃もありましたでしょう?」
「でも、騎士たちが頑張ってくれているんですのよね? レジーナ様」
「ええ。ただ、どうしてあれほどのゴブリンが現れたのか、分かっていないのですわ」
「そうなんですの。それは怖いですの」
明るく話していたネダさんが少ししゅんとなってしまいました。
「あ、えっと、じゃあ、今度のお休みに狩りをしてご馳走――」
「ローザ、そういう約束はいけませんわ」
「え?」
「ローザは公爵家の養女になったのですわ。ローザが狩りに出かけるなら、かなりの人数の護衛をつけなければならなくなりますわ。そのことを理解していて?」
「あ……ごめんなさい」
そうでした。ふらりと森に行って狩りをするのはもう難しいんですよね。
あれ? ということは、もしかしてあたし、もう冒険者を続けるのって難しいんでしょうか?
「ローザ、ベアヌ高原の問題が解決できそうなら、ネダを招待すればいいだけですわ。ほら」
「あ、は、はい。わかりました。えっと、ネダ様。ベアヌ高原のゴブリンの問題が解決したら、えっと、ご招待します。そのときに丸焼き、ご馳走させてください」
「ええ。ローザさんからの招待を楽しみにしていますの」
そう言ってネダさんはニコリと微笑んでくれたのでした。
◆◇◆
それから少し経ったある日、冒険者ギルドからあたしに一通のお手紙が届きました。
一体なんでしょうか?
とにかく、中を開けて見てみましょう。
封筒を開け、中の手紙を読んでみると、なんと指名依頼が来ているので、冒険者ギルドまで来てほしいって書いてありました。
えっと、指名依頼って、あの指名依頼ですよね? すごい実績があって信用されている人だけが受けられるっていう。
えっと、あたし、毛皮やお肉を売ったくらいしかしてないと思うんですけど……どうしてあたしなんでしょうか。
えっとえっと、よく分からないですけど、確認してきたほうがいいですよね?
じゃあ早速……って、一人で出歩いちゃダメなんでした。公爵家の娘が一人で外を歩くと誘拐されるってお義父さまから注意されてるんです。
えへへ、本当の娘じゃなくて養女なんですけどね。
えっと、じゃあ、今度一緒に冒険者ギルドに行ってもらえる人を探さないといけませんね。
となると……。
食堂に行くと、去年の夏休みにベアヌ高原で会ったネダさんがいました。
「ネダ様、お久しぶりです。えっと、今までどおりの呼び方で大丈夫です」
「そうですの? じゃあ、ローザさんも様じゃなくてさん付けで呼んでほしいんですの」
「はい。わかりました」
「よろしくですの」
ネダさんはそう言うと、ニッコリと微笑みました。
「ネダ、あなたも夕食かしら?」
「はい、そうですの。お二人もですの?」
「ええ」
「ご一緒してもよろしいですの?」
「ええ、いいわよ」
「ありがとうございますの」
こうしてあたしたちはネダさんと一緒に夕食を食べることになりました。
「やっぱりローザさんはマレスティカ公爵家の養女になったんですの。わたくしの予想どおりですの」
席に着くなり、ネダさんはこう切り出してきました。
「えっと……」
「だって、魔法が使える光属性の女の子で、さらに炎まで使えるんですのよ? それにあの件だってありますもの。ローザさんを守るにはマレスティカ公爵家か王家に入れるしかないと思っていましたの」
「そうですわね。でも、直接の決め手は治癒魔法の件ですわ」
「あっ! それも聞いていますの! まさか瀉血がダメだなんて驚きですの!」
「わたくしもそれには驚きましたわ」
「魔法ってすごいんですのね。でもどうして瀉血がダメだなんて知っていたんですの?」
「え、えっと……その……ま、前にツェツィーリエ先生の授業で治癒魔法を……」
「まあ! ツェツィーリエ様の!」
全部言う前にネダさんは勝手にツェツィーリエ先生に教えてもらったと勘違いしてしまいました。
えっと、これ、訂正しなくていいんでしょうか?
授業で教えてもらったんじゃなくて夢で見たドクターZが輸血していたからそうかなって思っただけなんですけど……あれ? でもどうやって説明したらいいんでしょう?
夢で見たなんて、変な子だって思われますよね?
そうしてどうやって訂正しようか悩んでいるうちに話題はどんどんと移り変わっていき、完全にそのタイミングを失してしまいました。
それからも割とあたしに関係のある話をしているのですが、ネダさんがものすごい勢いで話して、それにお義姉さまが適宜答えるという形で話が進んでいて、あたしは話を聞いているだけになっています。
そうしていると、ネダさんが突然話を振ってきます。
「あ! そういえばローザさんはどのクラブに入っているんですの?」
「え? あ、はい。えっと、料理研究会です」
「料理研究会! ローザさんは料理をするんですの?」
「えっと、はい。その、ちょっとですけど……」
「何が得意なんですの?」
「え? えっと、ま、丸焼きとか……」
「丸焼き? すごいですの! そういえばローザさんは冒険者でもあるんでしたの。やっぱり野営をするときは丸焼きですの?」
「え? えっと、はい。そういうときもあります」
「まあ! なら夏になったらローザさんの作った丸焼きが食べたいんですの」
「え? な、夏ですか?」
「そうですの。またベアヌ高原に行くんですのよね?」
「え、えっと……」
「まだ決まっていませんわ。ゴブリンの襲撃もありましたでしょう?」
「でも、騎士たちが頑張ってくれているんですのよね? レジーナ様」
「ええ。ただ、どうしてあれほどのゴブリンが現れたのか、分かっていないのですわ」
「そうなんですの。それは怖いですの」
明るく話していたネダさんが少ししゅんとなってしまいました。
「あ、えっと、じゃあ、今度のお休みに狩りをしてご馳走――」
「ローザ、そういう約束はいけませんわ」
「え?」
「ローザは公爵家の養女になったのですわ。ローザが狩りに出かけるなら、かなりの人数の護衛をつけなければならなくなりますわ。そのことを理解していて?」
「あ……ごめんなさい」
そうでした。ふらりと森に行って狩りをするのはもう難しいんですよね。
あれ? ということは、もしかしてあたし、もう冒険者を続けるのって難しいんでしょうか?
「ローザ、ベアヌ高原の問題が解決できそうなら、ネダを招待すればいいだけですわ。ほら」
「あ、は、はい。わかりました。えっと、ネダ様。ベアヌ高原のゴブリンの問題が解決したら、えっと、ご招待します。そのときに丸焼き、ご馳走させてください」
「ええ。ローザさんからの招待を楽しみにしていますの」
そう言ってネダさんはニコリと微笑んでくれたのでした。
◆◇◆
それから少し経ったある日、冒険者ギルドからあたしに一通のお手紙が届きました。
一体なんでしょうか?
とにかく、中を開けて見てみましょう。
封筒を開け、中の手紙を読んでみると、なんと指名依頼が来ているので、冒険者ギルドまで来てほしいって書いてありました。
えっと、指名依頼って、あの指名依頼ですよね? すごい実績があって信用されている人だけが受けられるっていう。
えっと、あたし、毛皮やお肉を売ったくらいしかしてないと思うんですけど……どうしてあたしなんでしょうか。
えっとえっと、よく分からないですけど、確認してきたほうがいいですよね?
じゃあ早速……って、一人で出歩いちゃダメなんでした。公爵家の娘が一人で外を歩くと誘拐されるってお義父さまから注意されてるんです。
えへへ、本当の娘じゃなくて養女なんですけどね。
えっと、じゃあ、今度一緒に冒険者ギルドに行ってもらえる人を探さないといけませんね。
となると……。
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