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第四章
第四章第36話 解決しました
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2023/08/01 誤字を修正しました。
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それからすぐに大勢の警備隊の兵士がやってきました。
「これは……!?」
「なんということだ!」
「一体誰がこんなことを……」
兵士の人たちはあまりの惨状に顔をしかめ、疑わし気な目つきであたしたちを順々に確認しています。
「た、助けてくれ! そ、そこの女がいきなり……」
あ! 依頼人の男が床で這いつくばったままそう声を絞り出しました。
「なんだと!? どういうことだ!」
兵士の人たちが一斉にラダさんを警戒するように剣を向けました。ですがラダさんは落ち着いた様子です。
「私はラダ・ロスカ。マレスティカ公爵家の護衛騎士です」
「何!? その紋章は……」
ラダさんが持っている剣の鍔を見せると、兵士の人たちは少し困惑しているみたいです。
「我々はそちらにいらっしゃる我らが公爵家のご息女、ローザ・マレスティカ様の護衛でこの場にいます。そこの者たちはお嬢様に剣を向けようとしたため、身の安全を守るために斬ったまでです」
すると兵士の人たちの視線が一斉にあたしに向きます。
「えっと……ローザ・マレスティカです。その、冒険者ギルドでその人の病気を治療するっていう依頼を受けたんですけど、愛人にならないと依頼完了のサインをしないって言われて」
「は?」
「それで、その人が外からあの人たちを呼んで、それで戦いになっちゃったんです」
すると、兵士の中でもちょっと偉そうな感じの人があたしの前で膝をつきました。
「ローザお嬢様、大変失礼ではございますが、マレスティカ公爵家のお方である証はお持ちですか?」
「え? 証……?」
「ローザお嬢様、レジーナお嬢様よりペンダントをお渡ししたと伺っております」
「あ! あれですね」
あたしは胸元からペンダントを取り出して、ペンダントトップを見せました。
「それは! 大変失礼いたしました! おい! お前たち、そこで這いつくばっている男を拘束しろ!」
「ははっ!」
兵士の人たちはあっという間に依頼人の男を拘束しました。
「お! おい! ふざけるな!」
「黙れ!」
「うぐっ」
兵士の人が無理やり立たせ、さらにお腹を蹴り上げました。そうしてぐったりした依頼人の男を何人もの兵士が引きずって連れて行きます。
「お嬢様、あちらの男はいかがいたしましょう?」
ちょっと偉そうな感じの人が、案内してくれたおじさんを指さしています。
「えっと、あの人には何もされていません。あの人はむしろ、止めてくれていました」
「畏まりました。おい! あの男性は参考人だ。丁重に扱え!」
「ははっ!」
するとおじさんはあたしに深々と一礼しました。それから兵士の人に促され、部屋を出ていきます。
「ローザお嬢様、ご協力ありがとうございました。お嬢様に無礼を働いたあの男はすぐにでも処刑されることになります」
「は、はい」
「それでは我々はこの死体を片づけなければなりません。お嬢様にご覧いただくようなものでもありませんので、大変恐縮ではございますがご退室願えませんでしょうか?」
「はい」
ちょっと偉そうな感じの人にびっくりするほどへりくだった態度でそう促され、あたしたちはそのまま依頼人の家を後にしました。
「えっと……ラダさん、ヴィーシャさん、その、守ってくれてありがとうございました」
「それが我々の仕事です」
ラダさんは事もなげにそう答えました。ヴィーシャさんもうんうんと頷いています。
「それより、もう依頼は終わったんだよね?」
「はい。だから冒険者ギルドに……あ! サイン! 依頼完了のサインをまだ貰ってません! あの、今から貰いに行くことって……」
「無理でしょうね。別件の容疑がなければもうすでに処刑されているでしょう」
「え?」
「お嬢様? 何を驚いていらっしゃるのですか?」
「で、でも裁判とか……」
「え?」
ラダさんは驚いたような表情になりましたが、すぐに真顔に戻りました。
「マレスティカ公爵家の令嬢を侮辱し、剣を向けるなどという無礼を働いたのです。お嬢様もマレスティカ公爵家の名を出して証言なさいましたので、あの者が極刑に処されることは間違いありません。であればその場で処刑したほうが早いです。それに、わざわざ見せしめにする必要もありませんから」
「……」
そうなんですね。なんだか複雑な気持ちです。
「お嬢様、これからどうなさいますか? 一度冒険者ギルドに寄られますか? それとも、魔法学園に戻られますか?」
「えっと、冒険者ギルドに行きます。サインが貰えなかったって報告しないと……」
「かしこまりました。それではお供いたします」
こうしてあたしたちは冒険者ギルドへと向かうのでした。
◆◇◆
「ローザ様、おかえりなさいませ」
冒険者ギルドに戻ってくると、見送ってくれた受付のお姉さんが笑顔で出迎えてくれました。
「いかがでしたか?」
「えっと……治療はできたんですけど……」
「どうかなさったのですか?」
「はい。その、実はサインを貰えなくて……」
「サインを貰えなかった? それは一体どういうことでしょう? サインがないと依頼は失敗となり、報酬をお支払いできなくなってしまいます」
あたしは依頼人の家であったことを一つずつ説明しました。
「それは大変でしたね。そういうことでしたら、依頼人による契約違反ということで処理いたしますね」
「えっ? 確認しなくていいんですか?」
「マレスティカ公爵家のお嬢様がそのように仰るのですから、間違いありません」
驚いて聞き返したあたしに受付のお姉さんは笑顔でそう答えました。
「は、はい……」
「それでは、こちらが報酬の一万レウでございます。どうぞお確かめください」
こうしてあたしは一万レウ分の金貨を受けとり、冒険者ギルドを後にしたのでした。
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それからすぐに大勢の警備隊の兵士がやってきました。
「これは……!?」
「なんということだ!」
「一体誰がこんなことを……」
兵士の人たちはあまりの惨状に顔をしかめ、疑わし気な目つきであたしたちを順々に確認しています。
「た、助けてくれ! そ、そこの女がいきなり……」
あ! 依頼人の男が床で這いつくばったままそう声を絞り出しました。
「なんだと!? どういうことだ!」
兵士の人たちが一斉にラダさんを警戒するように剣を向けました。ですがラダさんは落ち着いた様子です。
「私はラダ・ロスカ。マレスティカ公爵家の護衛騎士です」
「何!? その紋章は……」
ラダさんが持っている剣の鍔を見せると、兵士の人たちは少し困惑しているみたいです。
「我々はそちらにいらっしゃる我らが公爵家のご息女、ローザ・マレスティカ様の護衛でこの場にいます。そこの者たちはお嬢様に剣を向けようとしたため、身の安全を守るために斬ったまでです」
すると兵士の人たちの視線が一斉にあたしに向きます。
「えっと……ローザ・マレスティカです。その、冒険者ギルドでその人の病気を治療するっていう依頼を受けたんですけど、愛人にならないと依頼完了のサインをしないって言われて」
「は?」
「それで、その人が外からあの人たちを呼んで、それで戦いになっちゃったんです」
すると、兵士の中でもちょっと偉そうな感じの人があたしの前で膝をつきました。
「ローザお嬢様、大変失礼ではございますが、マレスティカ公爵家のお方である証はお持ちですか?」
「え? 証……?」
「ローザお嬢様、レジーナお嬢様よりペンダントをお渡ししたと伺っております」
「あ! あれですね」
あたしは胸元からペンダントを取り出して、ペンダントトップを見せました。
「それは! 大変失礼いたしました! おい! お前たち、そこで這いつくばっている男を拘束しろ!」
「ははっ!」
兵士の人たちはあっという間に依頼人の男を拘束しました。
「お! おい! ふざけるな!」
「黙れ!」
「うぐっ」
兵士の人が無理やり立たせ、さらにお腹を蹴り上げました。そうしてぐったりした依頼人の男を何人もの兵士が引きずって連れて行きます。
「お嬢様、あちらの男はいかがいたしましょう?」
ちょっと偉そうな感じの人が、案内してくれたおじさんを指さしています。
「えっと、あの人には何もされていません。あの人はむしろ、止めてくれていました」
「畏まりました。おい! あの男性は参考人だ。丁重に扱え!」
「ははっ!」
するとおじさんはあたしに深々と一礼しました。それから兵士の人に促され、部屋を出ていきます。
「ローザお嬢様、ご協力ありがとうございました。お嬢様に無礼を働いたあの男はすぐにでも処刑されることになります」
「は、はい」
「それでは我々はこの死体を片づけなければなりません。お嬢様にご覧いただくようなものでもありませんので、大変恐縮ではございますがご退室願えませんでしょうか?」
「はい」
ちょっと偉そうな感じの人にびっくりするほどへりくだった態度でそう促され、あたしたちはそのまま依頼人の家を後にしました。
「えっと……ラダさん、ヴィーシャさん、その、守ってくれてありがとうございました」
「それが我々の仕事です」
ラダさんは事もなげにそう答えました。ヴィーシャさんもうんうんと頷いています。
「それより、もう依頼は終わったんだよね?」
「はい。だから冒険者ギルドに……あ! サイン! 依頼完了のサインをまだ貰ってません! あの、今から貰いに行くことって……」
「無理でしょうね。別件の容疑がなければもうすでに処刑されているでしょう」
「え?」
「お嬢様? 何を驚いていらっしゃるのですか?」
「で、でも裁判とか……」
「え?」
ラダさんは驚いたような表情になりましたが、すぐに真顔に戻りました。
「マレスティカ公爵家の令嬢を侮辱し、剣を向けるなどという無礼を働いたのです。お嬢様もマレスティカ公爵家の名を出して証言なさいましたので、あの者が極刑に処されることは間違いありません。であればその場で処刑したほうが早いです。それに、わざわざ見せしめにする必要もありませんから」
「……」
そうなんですね。なんだか複雑な気持ちです。
「お嬢様、これからどうなさいますか? 一度冒険者ギルドに寄られますか? それとも、魔法学園に戻られますか?」
「えっと、冒険者ギルドに行きます。サインが貰えなかったって報告しないと……」
「かしこまりました。それではお供いたします」
こうしてあたしたちは冒険者ギルドへと向かうのでした。
◆◇◆
「ローザ様、おかえりなさいませ」
冒険者ギルドに戻ってくると、見送ってくれた受付のお姉さんが笑顔で出迎えてくれました。
「いかがでしたか?」
「えっと……治療はできたんですけど……」
「どうかなさったのですか?」
「はい。その、実はサインを貰えなくて……」
「サインを貰えなかった? それは一体どういうことでしょう? サインがないと依頼は失敗となり、報酬をお支払いできなくなってしまいます」
あたしは依頼人の家であったことを一つずつ説明しました。
「それは大変でしたね。そういうことでしたら、依頼人による契約違反ということで処理いたしますね」
「えっ? 確認しなくていいんですか?」
「マレスティカ公爵家のお嬢様がそのように仰るのですから、間違いありません」
驚いて聞き返したあたしに受付のお姉さんは笑顔でそう答えました。
「は、はい……」
「それでは、こちらが報酬の一万レウでございます。どうぞお確かめください」
こうしてあたしは一万レウ分の金貨を受けとり、冒険者ギルドを後にしたのでした。
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