妹がいなくなった

アズやっこ

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「確かに宰相になって元婚約者の公爵令嬢と婚姻するのが俺にとって、課せられた義務だった。宰相になる為に幼い頃から教育されていたし、元婚約者の愚行にも耐え目を瞑った。義務だけで贈り物を贈り、捨てられ様が罵られ様が耐えるものだと自分に言い聞かせてきた。 不貞をした自分を許す事は一生ないが、婚約破棄出来た事は良かったと心から思うよ」

「ふん、それが強がりなんだよ」

「嫌、俺は今幸せだ。愛する婚約者が居て、婚約者も俺を愛してくれてる。地位や名誉も大事だ。だけど愛しい人が居てこそだと俺は思ってるよ」


 チャーリーは私の頬を優しく撫でる。私の手に口付けした。


「婚約者だって?」

「ああ、俺の愛する婚約者だ」

「チャーリー様の婚約者のキャメル侯爵エミリーヌと申します。私も愛するチャーリー様が婚約者で良かったと心から思いますわ」

 
 私はカーテシーをしてからチャーリーに微笑んだ。


「キャメル侯爵家のエミリーヌ譲の婚約者はマルボール伯爵家のジェフ殿だったはず」

「あら、等の昔に婚約破棄致しましたわよ?」

「え?」

「ジェフ様とは所詮政略ですもの、愛など微塵もありませんでしたわ。私も貴族令嬢、愛のない婚姻でも仕方ないと諦めておりましたわ。ですが、ジェフ様と婚約破棄してチャーリー様とご縁がありまして婚約致しましたの。 チャーリー様を愛し、チャーリー様も私を愛してくれ、婚約も婚姻も愛する殿方とするのが一番女として幸せなのだと気づきましたの。 私達はお互い元婚約者と愛を築けませんでしたけど、愛する温かみも愛される喜びもチャーリー様に教えて頂きましたのよ?」

「お前、王宮勤めの割に貴族の情報は掴めてないんだな」

「う、煩い!」

「王宮勤めをこれからも続けるなら、貴族の情報はいち早く掴め」

「お前に言われるまでもない。たまたま知らなかっただけだ。たまたまだ!」

「なら良いが」

「侯爵家に婿入りするから侯爵令息か、やっぱりな。平民に落ちた者が貴族に戻るには女を騙すしかないもんな!お前は見目は良いからな!それに女の扱いもお手の物だろ? あっちの技で落としたのか?」

「それは俺に対する侮辱か?それとも愛しい婚約者に対する侮辱か?」

「ふん、どっちでも良いだろ、そんな事」

「俺は自分の力でブラウニー侯爵令息になった」

「そんな事出来る訳ないだろ。どうせ宰相殿が自分の息子可愛さに裏で手を回したんだろ?」

「父上は例え息子であっても公平に下す。それに俺は養子だ」

「何?お前はれっきとした宰相殿の息子だ」

「元な、元息子だ。そして新たに養子として息子になった」

「そんな馬鹿な話が通用すると思うのか?」

「通用するも何も事実だ。俺はミリー商会の経営者だ。ミリー商会は隣国に本拠地を置く。この国に支店はあるが、この国にミリー商会を留める為に交渉をされた。隣国を含むミリー商会全体の資産と運営、そして権利全てをブラウニー侯爵家所有にする事、そして経営者である俺を養子として迎えるとな。

ミリー商会は俺の商会だ、俺が頷かなければ商会を所有する事は出来ない。俺はこの国を追放された人間だ。この国に未練があると思うか? 支店は別にこの国じゃなくても他国でも引く手あまただ。この国に居座る義理はない。

ブラウニー侯爵家以外の貴族に声をかけられても俺は頷かない、そうだろ? 俺が追放された時、誰か俺を庇ってくれたか? 元婚約者の愚行を皆知っていた。それでも見て見ぬ振りをしたのは皆だ。

ミリー商会の名声と資産が欲しい貴族は多いだろう。俺を助けようとしなかった者をどうして信じられる? それに貴族の元に入るにしてもこの国の貴族に入る必要はない。隣国の貴族の元に入るさ、隣国は俺を受け入れてくれたからな。

俺を頷かせれるのは陛下か父上だけだ。この国の君主の陛下に言われれば頷くしかない。だけど隣国を本拠地としているミリー商会を陛下が所有する事は出来ない。外交問題になり戦が始まる。

俺が父上の、ブラウニー侯爵家の元に入ったのは言わば謝罪だ。愚息で迷惑をかけた、その罪滅ぼしだ。 俺は正当な権利で侯爵令息になった。 お前が言う様な下衆なやり方はしていない」

「な、何だと!」

「それに俺の愛する婚約者は俺自身の中身を愛してくれてる。見目で選ばれた訳じゃない。俺が不貞したのは事実だ。だからこそ、今度こそ過ちは起こさない」

「一つよろしいでしょうか。そちらの殿方がチャーリー様とどの様なご関係かは存じあげませんが、文官として王宮勤めをしておられるのなら、ミリー商会の名声くらいはご存知ですわよね? 宰相としてこの国に仕える事は出来なくなりましたが、宰相として教育を受けていたからこそ経営者としてチャーリー様がミリー商会の名声を残せたのですわ。賢くなくては経営者にはなれませんのよ?」

「な、な、何を!」

「チャーリー様は宰相としてではなくて、ミリー商会の経営者としてこの国を支えておりますのよ?多額の税、多額の寄付金、それ等は国庫金としてこの国を支えておりますのよ? 文官ならご存知ですわよね」


 殿方は真っ赤な顔をしてこの場を立ち去った。


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