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「お、おかしいと思わないわけ?」
「……? 何が?」
「だ、だってあたしの素性だって知らないはずだし、口八丁で騙されてるかもしれないのよ!」
「……え、今の嘘なのか?」
「本当よ」
「ならそれでいいじゃねえか」

 すると彼女が顔を背けて、

「だから何でそんなにアッサリと……ううん、あたしにとっては好都合過ぎる展開なんだけど、最初は断られることを前提にしてたから、いろいろ籠絡する手段とか考えてたのに……」
「お~い、何ブツブツ言ってんだ、お前?」
「な、何でもないわよ!」
「きゅ、急に怒鳴るなよ。イチジクもビビっちまったじゃんか」
「キュ、キュゥ……」
「あ、ごめん……ね?」

 素直に謝ってくるファオ。イチジクが小さく頷きを見せると、彼女はホッとしたように微笑む。

(やっぱコイツ、良い奴なんじゃね?)

 確かにいきなり登場してビジネスだから手を組もうと言うなど、怪しさ全開ではあるが、話してみると、嫌な奴というわけではないことが分かった。

「本当は仲間……家族になってくれりゃいいんだけどなぁ」
「か、かかかかかか家族ってアンタね! い、いきなり何言うのよっ!」
「…………何でそんなに顔を真っ赤にして慌ててんだ?」
「だ、だってアンタが変なこと言うからでしょ!」
「はあ? オレ……変なこと言ったか、イチジク?」

 頭を左右に振るイチジクを見て、

「だよな。せっかくだしギルドの仲間になってほしいって思っただけだぞ?」
「へ? ギ、ギルド? ア、アンタってばギルドに所属してたの?」
「まあな。まだメンバーはオレを入れて二人だけど」
「ふ、二人?」
「おう。オレと、ここにいるイチジクだ」
「キュッ!」

 見たかぁ! 的な感じで胸を張るイチジク。とてつもなく可愛い。
 しかしファオはあんぐりと口を開けたままだ。

「…………ちょ、ちょっと待って。ギルドに所属してるというか、もしかしてアンタがギルドマスターなの?」
「あれ? 言ってなかったか? その通りだぞ」
「……そ、その子ってペットモンスターよね?」
「おう。イチジクだ。昨日オレの家族になった」
「キュキュ~」
「……普通ギルドメンバーとしてはペットモンスターは数えないでしょ?」
「そんなこと言うなよ。イチジクはギルドメンバーでもあるけど、家族でもあんだぞ」
「……ああそっか。つまりギルドの仲間=家族ってわけ?」
「おう!」

 こめかみを押さえて盛大に溜め息を吐き出すファオ。

(何か疲れてるみてえだけど、体調でも悪いのか?)

 するとまたファオは顔を背けて、

「はぁ……そういうことならもっと詳しく噛み砕いてから言いなさいよね。プ、プ、プロポーズとか思っちゃったじゃない……」
「何か言ったか? さっきから最後の方、全然聞こえねえぞ?」
「何でもないわよ、バカ」
「うぐ……初対面の奴にまでバカ呼ばわりされた。……なあイチジクゥ、オレってやっぱりバカなのか?」
「キュ~? キュキュキュ!」

 トントンと肩を叩いて慰めてくれるイチジク。

(いや、そこは否定してほしかったんだけどな……)

 師匠にも良くバカ呼ばわりされたことを思い出し暗い気持ちになってしまう。

(まあでも、バカじゃなけりゃ〝魔宮制覇者〟になるなんか言わねえって師匠にも言われてたし別にいっか)

 すぐに気を取り直すのも、アヒロの十八番である。
 ファオが「んんっ」と咳払いをして、アヒロの注意を引きつけた。


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