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「物凄く嫌な予感がするんだけど……何?」
「実はねぇ、いつでもご主人が穿いている下着を奪えるアーティファクトを――」
「却下だボケェッ!」
「えぇー」
「えぇーじゃねえ! 何つうもんを要求してきやがる! ていうかよくもまあノーヴァ様がアンタの行為を許してんなオイ!」
俺だったら即刻側近を解雇だ。城から追放も辞さない。
「んはは~、大丈夫大丈夫、ちゃ~んとお仕置きでチャラにしてもらってるから!」
Vサインしてんじゃねえよ! 良い笑顔で白い歯キラーンじゃねえよ!
「お仕置きって……どんなの?」
「ん? いろいろだよぉ。ご主人の絶対零度の魔術を浴びせられたりぃ」
「……はい?」
「マグマが煮え滾る火山の中に放り込まれたりぃ」
「…………」
「あ、他にも無数の針で全身を貫かれたりかなぁ。いやぁ、さすがにマグマの中に放り込まれた時は死を覚悟したよねぇ」
まるで他人事のように笑っているが、これは笑える話なのだろうか? どれもこれも普通に死ぬんだけど……?
「でもでもぉ、最近はぁ、そのお仕置きが癖になってぇ。はぁぁぁ~今度はどんなお仕置きが待ってるんだろうかぁ~」
「この上ドMってか! だから個性が渋滞するからもう上乗せすんなって言ってんだろうが!」
もう嫌だコイツ。誰か助けて欲しい。
そこへ俺の願いが天に届いたのか、ノックが聞こえた。
「――失礼するぞ、クロメ殿……って、何故お主がここにおるのだ?」
おお、我が救世主ヴァイン! ていうか名前がカッコ良いからさもそれ風に聞こえる。
「やっほぉ、ヴァイン。相変わらずジジ臭い顔してるよねぇ」
「はぁ。お主、よもや客人に失礼なことをしてはおらぬだろうな?」
「してないしてない。果てなき友好を深めていたところだも~ん。ねぇ、クロクロ~」
「いえ、絶対的に迷惑を被っているのでヴァインさん、この変態を遠ざけてください」
「うむ、分かった。そうだろうと思っておったしな」
「そんな!? 酷いよクロクロ! 僕とあんなにもパンツの素晴らしさについて語っていたのにぃ!」
「アホ抜かすなや! てめえが勝手に気色悪いことをほざいとっただけだろうが! そろそろマジで拳でツッコムぞ!」
「や、やだ……そんな突っ込むだなんてぇ。……優しく、だよ?」
「だあもうっ、ヴァインさん! コイツを何とかしてください!」
「う、うむ。本当にすまない。ほらゼリス、主が呼んでいるぞ」
「えっ、マジで! それを早く言ってよぉ! 今すぐ行くからねぇ、ごっ主じぃぃぃんっ」
尻餅をつきながら嘘泣きに耽っていた変態だったが、嬉々とした表情で部屋から出て行った。
「ふぅ、マジで疲れた……」
二十四時間不眠不休で仕事をした感じだ。今すぐ熱い湯に遣って癒されたい。
「あのバカにはしっかり言い聞かせておく。根は悪い奴ではないのだ」
「まあ、それは話してて分かりますが。……ところでノーヴァ様がアイツを呼んでるって本当ですか?」
「…………」
「何で目を逸らすんです?」
「…………咄嗟に思いついたことがアレだった」
わぁ、こっちとしちゃありがたいけど……。
その時、どこかからノーヴァの悲鳴が轟いた。同時に狂ったように笑う変態の声も。
そっか。ノーヴァ、俺のために犠牲になってしまったんだな。
とりあえず両手を合わせて無事だけを祈っておいた。
「そういやヴァインさんはどうしてここへ?」
「おお、そうだった。実は主が夕食にクロメ殿のパンを御所望でな」
「そういうことでしたか。分かりました。多分機嫌が悪いと思うので、出来る限り美味いものを作りますよ」
それがヴァインさんへの感謝と、ノーヴァへの罪滅ぼしになるだろう。
俺はヴァインさんに頼み込み、この城にある厨房へと案内してもらった。
さすがに調理器具だけは無いものは見当たらないし、一流ホテルのような広々とした料理人にとっては夢のような厨房である。
「パンだけじゃ物足りないので、他の料理も作りましょうか?」
「お主、パン以外も作れるのか?」
「はい。料理全般は得意ですよ」
基本的に日本にいた時に作っていた料理の数々は、こちらの世界では無いものが多い。どちらかというと洋食よりなので、和食や中華などは物珍しいらしい。
それでも地域によって作っているところもあるのだが、ノーヴァのことだから初めて見る料理の方が喜ぶと思うし、俺も作るなら喜んで欲しいので精一杯作ることにする。
「ふむ。ではコックにも良い経験だろうし、ともに調理を任せてもよいだろうか?」
「はい、構いませんよ。あ、その前にトイレに行きたいんですけど」
「実はねぇ、いつでもご主人が穿いている下着を奪えるアーティファクトを――」
「却下だボケェッ!」
「えぇー」
「えぇーじゃねえ! 何つうもんを要求してきやがる! ていうかよくもまあノーヴァ様がアンタの行為を許してんなオイ!」
俺だったら即刻側近を解雇だ。城から追放も辞さない。
「んはは~、大丈夫大丈夫、ちゃ~んとお仕置きでチャラにしてもらってるから!」
Vサインしてんじゃねえよ! 良い笑顔で白い歯キラーンじゃねえよ!
「お仕置きって……どんなの?」
「ん? いろいろだよぉ。ご主人の絶対零度の魔術を浴びせられたりぃ」
「……はい?」
「マグマが煮え滾る火山の中に放り込まれたりぃ」
「…………」
「あ、他にも無数の針で全身を貫かれたりかなぁ。いやぁ、さすがにマグマの中に放り込まれた時は死を覚悟したよねぇ」
まるで他人事のように笑っているが、これは笑える話なのだろうか? どれもこれも普通に死ぬんだけど……?
「でもでもぉ、最近はぁ、そのお仕置きが癖になってぇ。はぁぁぁ~今度はどんなお仕置きが待ってるんだろうかぁ~」
「この上ドMってか! だから個性が渋滞するからもう上乗せすんなって言ってんだろうが!」
もう嫌だコイツ。誰か助けて欲しい。
そこへ俺の願いが天に届いたのか、ノックが聞こえた。
「――失礼するぞ、クロメ殿……って、何故お主がここにおるのだ?」
おお、我が救世主ヴァイン! ていうか名前がカッコ良いからさもそれ風に聞こえる。
「やっほぉ、ヴァイン。相変わらずジジ臭い顔してるよねぇ」
「はぁ。お主、よもや客人に失礼なことをしてはおらぬだろうな?」
「してないしてない。果てなき友好を深めていたところだも~ん。ねぇ、クロクロ~」
「いえ、絶対的に迷惑を被っているのでヴァインさん、この変態を遠ざけてください」
「うむ、分かった。そうだろうと思っておったしな」
「そんな!? 酷いよクロクロ! 僕とあんなにもパンツの素晴らしさについて語っていたのにぃ!」
「アホ抜かすなや! てめえが勝手に気色悪いことをほざいとっただけだろうが! そろそろマジで拳でツッコムぞ!」
「や、やだ……そんな突っ込むだなんてぇ。……優しく、だよ?」
「だあもうっ、ヴァインさん! コイツを何とかしてください!」
「う、うむ。本当にすまない。ほらゼリス、主が呼んでいるぞ」
「えっ、マジで! それを早く言ってよぉ! 今すぐ行くからねぇ、ごっ主じぃぃぃんっ」
尻餅をつきながら嘘泣きに耽っていた変態だったが、嬉々とした表情で部屋から出て行った。
「ふぅ、マジで疲れた……」
二十四時間不眠不休で仕事をした感じだ。今すぐ熱い湯に遣って癒されたい。
「あのバカにはしっかり言い聞かせておく。根は悪い奴ではないのだ」
「まあ、それは話してて分かりますが。……ところでノーヴァ様がアイツを呼んでるって本当ですか?」
「…………」
「何で目を逸らすんです?」
「…………咄嗟に思いついたことがアレだった」
わぁ、こっちとしちゃありがたいけど……。
その時、どこかからノーヴァの悲鳴が轟いた。同時に狂ったように笑う変態の声も。
そっか。ノーヴァ、俺のために犠牲になってしまったんだな。
とりあえず両手を合わせて無事だけを祈っておいた。
「そういやヴァインさんはどうしてここへ?」
「おお、そうだった。実は主が夕食にクロメ殿のパンを御所望でな」
「そういうことでしたか。分かりました。多分機嫌が悪いと思うので、出来る限り美味いものを作りますよ」
それがヴァインさんへの感謝と、ノーヴァへの罪滅ぼしになるだろう。
俺はヴァインさんに頼み込み、この城にある厨房へと案内してもらった。
さすがに調理器具だけは無いものは見当たらないし、一流ホテルのような広々とした料理人にとっては夢のような厨房である。
「パンだけじゃ物足りないので、他の料理も作りましょうか?」
「お主、パン以外も作れるのか?」
「はい。料理全般は得意ですよ」
基本的に日本にいた時に作っていた料理の数々は、こちらの世界では無いものが多い。どちらかというと洋食よりなので、和食や中華などは物珍しいらしい。
それでも地域によって作っているところもあるのだが、ノーヴァのことだから初めて見る料理の方が喜ぶと思うし、俺も作るなら喜んで欲しいので精一杯作ることにする。
「ふむ。ではコックにも良い経験だろうし、ともに調理を任せてもよいだろうか?」
「はい、構いませんよ。あ、その前にトイレに行きたいんですけど」
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