俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ

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「ホント、ウチの生徒会長ももう少ししっかりしてほしいもんだわ」

 話の流れで、夜風が自分の学園生活についての不満を言い出していた。

「そういえば夜風さん、生徒会に入ってるんですよね」

 一年生時に生徒会にスカウトされるほど夜風は優秀だったらしい。もっとも本人はやる気はなかったようだが、熱烈な説得に負けたとのこと。
 何でも今は副会長を任されており、次期生徒会長との呼び声が高い。元々人を引っ張るようなカリスマ性に優れていた彼女だったが、成長していくにつれて益々その魅力が強くなっているようだ。

「聞いてよ沖長ぁ。生徒会長ってば、いっつもいっつもアタシに仕事を回してくるのよ! そんで本人はサボってばっかし!」
「サボるのは確かに良くないですよね。でも、それだけ夜風さんが頼りになっている証拠だと思いますよ」
「そ、そうかしら?」
「多くの仕事を任されるというのは信頼の証です。実際俺も夜風さんにはお世話になってますし」
「う~ん、アタシとしてはアンタに迷惑をかけてるような気がしてならないけど……主にバカ弟のせいで」
「はは……でも最近は大人しいって聞きますよ?」
「そう! そうなのよ! ついこの間までアタシとかお母さんたちの言うことを無視したりしてたのに、何だか最近は反発するのも減ってきてるのよ。反抗期が終わったのかしら? だったらちょっと早くない?」

 思春期特有の反抗期ではないはず。何せ、金剛寺銀河は自分が選ばれた主人公のように考えていたと思う。普通とは違う転生者として特典も持ち合わせ、周りからもちやほやされるほどだった。

 しかしその鼻っ柱をへし折った存在がいた。それが沖長である。
 銀河の持っていた特典も沖長が回収したことで失われ、周りにいた者たちも次々と離れていった。その結果、今では銀河は、そこらにいる普通の小学生と遜色ない子供となる。

 いまだに会う度に恨めしそうな目で見られる沖長だが、以前のように馬鹿みたいに突っかかってくることはない。そこが少し不気味ではあるが、大人しくなったという言葉は正しいと思う。

「アイツも自分がしてたことが夜風さんたちに迷惑をかけてることを自覚したんじゃないでしょうか」
「そうだといいんだけどねぇ。……もしかしてアンタが何かした?」
「俺がですか?」
「だってアイツってば、家に居る時はいつも沖長に対する愚痴を言ってたもん。けど今はそうじゃなくなったし、逆にアンタの話題を出すと嫌な顔をしてどこか行くし」
「はぁ……どうしてでしょうね」

 本当のことを話すつもりはないので惚けるが、何かを察したようにジト目を向けてくる夜風。

「……まあいいわよ。話したくないなら別に。ま、アイツが他の人に迷惑をかけないようになったのならそれが一番だし」

 やはりどれだけどうしようもない弟でも、姉として心配だったようだ。今では手がかからないようになったのでホッとしている様子。

「そういえばナクルはどう? 元気してる?」
「元気ですよ。今日も友達の家ではしゃいでるんじゃないでしょうか」
「アハハ、相変わらずみたいで安心したわ! もしよかったら今度家に遊びに来なさい」
「ありがとうございます。きっとナクルも喜びます」

 それからまた少し話した後、店を出て解散しようとした矢先のことだ。
 二人の行く手を阻むかのように、小さな女の子が目の前に立っていた。

「ずいぶんボロボロね、この子。ねえ、あなたどうしたの? 一人?」

 オシャレとは真逆の見栄えのよろしくない衣。ボサボサの髪の少女が顔を俯かせてジッとしている様は、夜風にとって放っておけない相手として認識したのだろう。
 しかし沖長はその少女に見覚えがあった。

「…………エサ」
「夜風さん、そいつから離れて!」
「え……っ!?」

 沖長の言葉に固まる夜風に対し、彼女の目前にいた少女がその手を彼女の首もとへと伸ばしてきた。沖長は咄嗟に一足飛びで距離を潰すと、少女の手を払いのけると同時に蹴りを放った。しかし少女は攻撃をバックステップで回避する。

(コイツ……間違いない。確か――ガラ!)

 少し前に遭遇した〝人造妖魔〟。

「お、沖長? いきなり何してるのよ! 相手はちっちゃな女の子なのよ!」

 夜風が憤るのも無理はない。何も知らなければ、見すぼらしくか細い少女に蹴りを加えようとしたのだから。しかし説明しようにも、何から話せばいいのか分からない。

 しかもココは公衆の面前であり、周りにいる人たちからも注目を集め始めていた。

(マズイな、どうする?)

 このまま戦闘に入れば、多くの者の目に映ってしまう。ガラという存在を知られるのもそうだが、沖長が普通でないということも。それはさすがに勘弁願いたい。

「夜風さん、こっちに!」
「えっ、ちょ、沖長!?」

 夜風の手を引っ張って、路地の中へと入っていく。正直戦うなら夜風は足手纏いになるが、気になったのはガラが夜風に手を伸ばしていたこと。
 もしガラが自分ではなく夜風が目的だとしたら、あのまま一人逃げたのでは彼女を見捨てることに繋がってしまう。

 駆けながらチラリと背後に意識を向けると……。

(やっぱりついてきてるな。つまり間違いなく夜風さんが狙いってわけか)

 そう判断し、何が何でも夜風を一人にできないことを認識する。
 そのまま路地を抜けると、その先にある広い河原へと出た。真っ直ぐ人気のない橋の下へと急いだ。

「はあはあ……はあ……はあ……ちょ、ちょっと待ってよ沖長ぁ」
「あ、すみません夜風さん」

 引っ張っていた手を離すと、夜風は盛大に肩を上下させながら呼吸を落ち着かせ始めた。

「一体……どうしたってのよ? ちゃんと説明しなさい!」
「えっと……そのですね……!」

 言葉に詰まっていると、不意に敵意を感じ夜風の身体を押した。彼女は「きゃっ」と言いながら尻もちをつき、沖長はというと突然やってきた衝撃に数メートル吹き飛んでしまった。

「痛ったぁい! もう! さっきから何なのよぉ! 聞いてるの、沖な……っ!?」

 不満気に沖長の名を呼ぼうとした直後、夜風の表情は固まる。何故なら、彼女の目の前には不気味に口角を上げた先ほどの少女――ガラが立っていたのだから。しかもボサボサの髪が激しく波打ち、異様な雰囲気を漂わせていた。

「あ、あなたはさっきの……?」

 夜風の言葉に返すこともなく、ガラは彼女に手を伸ばす。

「止めろっ!」

 ガラの攻撃によって吹き飛ばされた沖長だったが、すぐに駆けつけてガラに拳を突き出した。だがこれもやはり回避されてしまい、追撃をと蹴りを放つが、それを片手で防御される。

 そしてガラの髪が触手のように伸びてきて、沖長の首へと巻き付いてきた。


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