ネイル

足してゆくだけで創る美しさは、容易に手に入る。資金さえあれば良いからだ。

 どんなに私が醜くたって、どんなに私に価値がなくたって、私の指先はこんなにも美しい。お金を払って得た確かな技術が、私に前を向く勇気をくれる。

 私が美と対極である惨めな存在に甘んじている間にも――せめてもの救いに、自分の体の一部だけでも、美しくありたいというのは間違っているだろうか。私が没頭してるのは、本質的な、真っ当な美しさを手に入れた者だけが余白として楽しむ行為であって、それを先取りするのは滑稽なことなのだろうか。
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