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「れ、ぇじ……」

 僕の掠れた声を聞き、怜司はさらに顔を歪ませた。

「兄貴にとことん感じさせてもらって、本当に良かったな! 俺がヤるよりも気持ちよかったんだろ?」

 不機嫌を感じさせるセリフを、怜司に浴びせられたせいで、まぶたを伏せながら視線を逸らした。すると浩司兄ちゃんが、大きなため息を吐いてから口を開く。

「元はと言えば、おまえが龍を最後までイかせなかったのが悪いんじゃないか。龍にあたるなよ」

 浩司兄ちゃんが正論をぶつけてくれたことで、怜司は「悪かった、ホントに……」と呟いた。恐るおそる視線を戻したら、怒っていた表情がなくなったのが目に留まる。

「怜司、あのね――」

 ガラガラ声で話しかけると、ペットボトルの水が怜司の手から目の前に差し出された。

「喉乾いてるだろ……」

「うん、そうだね」

「疲れてるだろうから、俺が飲ませてやる」

 そう言ってベッドに腰かけ、寝ている僕の上半身を抱き起こし、怜司の躰に寄りかからせるようにくっつけた。

 僕の目の前で、手際よくペットボトルの蓋を開けて水を口に含み、そのまま唇を押しつける。冷たい水が少しづつ、僕の口内を潤していった。

「んっ、んっんっ……」

 喉を鳴らしながら水を飲み込んでいくと、やがて水が流れてこなくなり、熱い舌がにゅるりと口の中に挿入される。僕を求めるように蠢く怜司の肉厚な舌のせいで、ふたたび躰に熱が灯りはじめる。

「コラ怜司、龍を休ませないとかわいそうだろ」

 浩司兄ちゃんは僕らの間に腕を突っ込み、無理やり引き離すと、怜司から守るように胸の中に僕を抱きしめた。

「兄貴こそズルい! 龍を独り占めすんなよ!」

「どっちが先に、龍を独り占めしたんだ。俺に眠り薬を盛りやがって!」

「ふたりとも、兄弟喧嘩はダメだよ!」

 慌てて浩司兄ちゃんの胸の中からなんとか抜け出し、睨み合うふたりの間に入り込んだ。全裸という姿を晒すのは、正直すごく恥ずかしかったが、致し方ない。

「龍、兄貴と俺、どっちが好き?」

 淡々とした口調で訊ねた怜司。困って浩司兄ちゃんを見たら。

「俺のほうが、セックスで龍を感じさせることができてるのに、そんな質問するだけムダだろう」

「兄貴はわかってない。セックスの上手い下手で、好きかどうかなんて決められないんだって」

「どんなに好きでも、セックスの相性が悪かったら、1000年の恋もすぐ冷める」

「兄貴はそうかもだけど、相手のことをすっげー好きなら、相性が悪くても俺は平気!」

 僕の気持ちを無視して、ふたりはそれぞれの理論を展開し睨み合う。
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