文字の大きさ
大
中
小
159 / 639
番外編【ネタバレ注意】
書籍化お礼番外編『セバスさんとお仕事編』
「うーん…おかしいな…」
私は机の前で腕を組んで首を傾げた。
「どうしたんじゃ?」
ディムロスじいちゃんがニコニコと私の元に様子を見に来た。
「これね、サイコロ作ってみたの…でもなんかおかしいんだよね」
じいちゃんに作ったサイコロを見せる。
じいちゃんはそれを受け取ると興味深げに観察した。
この世界にもサイコロはあった、でも面数が多い、こちらではダイスと呼ばれている。
六面の真四角の物は無くて八面や十二面などの物だった。
「ああ、ダイスか?四角いのは初めて見たなぁ」
じいちゃんがコロッと転がすと「3」が出た。
「ん?普通のダイスに見えるぞ」
「うーんそれが…」
私が同じようにサイコロを転がすと…
「3」
もう一度…「3」…
「ありゃ3しか出ないのか?」
じいちゃんが苦笑してもう一度転がす。
すると今度は「5」が出た。
「ん?」
じいちゃんもおかしな様子に気がついたみたいだ。
「まさか」
じいちゃんが信じられないと私を凝視した。
私は無言でサイコロを振る…
「5」「5」「5」…
何度振っても同じ目を出した。
「好きな目が出せるのか?」
じいちゃんが恐る恐る聞いてくる。
「さすがにそれは出来ないよ…でも同じのが何度も出るんだよね」
私は作った三個のサイコロを同時に投げた。
すると目は全て「1」になった。
「こうすると同じになるの」
困った様に眉をひそめてじいちゃんを見つめた。
「こりゃ凄い…賭博で稼げるな!」
じいちゃんが感心すると
「ギルマス!ミヅキさんに何を教えているのですか!」
セバスさんがじいちゃんを睨んだ。
「それよりもこちらの書類の確認をお願いします」
ドサッとじいちゃんに大量の書類を手渡した。
「セバスさんごめんなさい…お仕事の邪魔しちゃって…」
「ミヅキさんは気にする必要はありませんよ、今日はベイカーさんが仕事でいないのでこの部屋で待っているように言ったのは私ですからね」
セバスさんはじいちゃんに向けた冷たい目とは正反対の優しい温かい目を私に向けた。
「それで?ギルマスが言っていた物騒な話はなんですか?」
セバスさんも私の手元を覗き込んだ。
「実はゲームを作ろうと思っててサイコロを作ったんですが…どうも私、目がちゃんと出せなくて…」
じいちゃんに見せたように複数のサイコロを振るとまた同じ目を出した。
「こ、これは…」
「これじゃイカサマみたいですよね…別になんにもしてないんだけど、最初はサイコロが変なのかと思ったけどそういう訳でもないみたいです」
私が困った顔で笑うとセバスさんが思案顔を見せた。
「セバスさん?」
怒るか呆れるかされるかと思ったがセバスさんから何も反応がない…それはそれで寂しいな…
反応のないセバスさんをじっと見つめていると
「あっ!すみません…ちょっとお待ちくださいね」
セバスさんは部屋の棚に大量に並んだ書類の中からお目当ての物を探して戻ってきた。
「これですね…ミヅキさん、よかったら私とお仕事に行きませんか?」
セバスさんがにっこりと笑ってこちらを見た。
セバスさんの馬に乗って私達はお仕事の為にちょっと大きな街に向かっている。
セバスさんの前に座らされてガッチリとホールドされる。
後ろからはのんびりとシルバ達が馬を驚かせないように少し離れてついてきていた。
「それでは説明しながら向かいますね、この先の街で賭博場に行った冒険者達が数名奴隷落ちしているんです。どうやらイカサマで負けさせているようなのですがそれを見破る事が出来ないそうなのです」
「えー!イカサマなんて酷い!無計画でやりすぎてお金無くなっちゃうのは仕方ないですが…」
「そうですね、自分のお金で無理なく遊ぶのならいいと思いますがイカサマは許せません…そこでミヅキさんに協力してもらおうかと…」
「私のインチキサイコロですか?」
私が聞くと、セバスさんが苦笑する。
「ミヅキさんのはインチキではありませんよ、あれは加護の力でしょうからね。多分ミヅキさんならどの勝負でも勝ちは揺るがないかと…」
「だといいですけど…私子供ですけど賭博場入れるんですか?」
「貴族の子供などは入店してますから問題無いですが…決して一人で行ってはいけませんよ」
「はーい」
「今回はミヅキさんが貴族の娘、私がその執事としてお供をしている設定です。私の事はセバスと呼んでください」
「えー!無理です!セバスさんを呼び捨てなんて…」
「大丈夫です。お仕事だと割り切って下さい」
「うう…」
「私はミヅキ様とお呼びします」
「様!!」
私が嫌そうな顔をすると…
「それが嫌なら…お嬢様…でしょうか?」
前を座る私の顔を覗き込んでニコリと笑う。
「お嬢様…」
耳元で囁かれて背筋がブルっと震える。
「ミヅキ様でいいです…」
「はい、ミヅキ様」
セバスさんが嬉しそうに答えた。
街に付くとそのままその街のギルドに向かう。
そこで部屋を借りて着替えると…
「ミヅキ様、用意は出来ましたか?」
「あっ!はい」
受付のお姉さんに手伝ってもらい着替えを済ませるとセバスさんから声がかかった。
部屋を出ると、執事服に身を包んだセバスさんが白い手袋をつけて、右手を前の胸元に…左手を後ろに隠して添えて立っていた。
か、かっこいい…
元々執事など最高に似合いそうなセバスさんはなんの違和感もない!
それに比べて私のちんちくりんぶり…穴があったら入りたい…
フリフリのドレスに羽の付いた帽子…服に着られている感半端ないよ…
「ミヅキ様、お似合いです」
そんなセバスさんのお世辞に苦笑いする。
「やっぱり私が貴族とか無理ですよ…」
「そんな事無いです!とっても可愛いらしいですよ」
服を着せてくれたお姉さんが可愛いと言ってくれた。
「はい。でも帽子はやりすぎですね…こんな物があってはミヅキ様の可愛い顔がよく見えませんから」
セバスさんがそっと帽子を外すと髪を整えながらパチッと頭に何かつけた。
「その変わりにこの髪飾りをつけましょう」
そっと触るとリボンの形の髪飾りが付いている。
鏡で確認するとセバスさんと髪と瞳と同じ色の灰色のバレッタだった。
「か、可愛いです!ドレスとピッタリ!」
お姉さんには好評のようだ、まぁ帽子よりいいかも…
私はそっと髪飾りを触ってなんだかくすぐったくて…こっそりと笑った。
私は机の前で腕を組んで首を傾げた。
「どうしたんじゃ?」
ディムロスじいちゃんがニコニコと私の元に様子を見に来た。
「これね、サイコロ作ってみたの…でもなんかおかしいんだよね」
じいちゃんに作ったサイコロを見せる。
じいちゃんはそれを受け取ると興味深げに観察した。
この世界にもサイコロはあった、でも面数が多い、こちらではダイスと呼ばれている。
六面の真四角の物は無くて八面や十二面などの物だった。
「ああ、ダイスか?四角いのは初めて見たなぁ」
じいちゃんがコロッと転がすと「3」が出た。
「ん?普通のダイスに見えるぞ」
「うーんそれが…」
私が同じようにサイコロを転がすと…
「3」
もう一度…「3」…
「ありゃ3しか出ないのか?」
じいちゃんが苦笑してもう一度転がす。
すると今度は「5」が出た。
「ん?」
じいちゃんもおかしな様子に気がついたみたいだ。
「まさか」
じいちゃんが信じられないと私を凝視した。
私は無言でサイコロを振る…
「5」「5」「5」…
何度振っても同じ目を出した。
「好きな目が出せるのか?」
じいちゃんが恐る恐る聞いてくる。
「さすがにそれは出来ないよ…でも同じのが何度も出るんだよね」
私は作った三個のサイコロを同時に投げた。
すると目は全て「1」になった。
「こうすると同じになるの」
困った様に眉をひそめてじいちゃんを見つめた。
「こりゃ凄い…賭博で稼げるな!」
じいちゃんが感心すると
「ギルマス!ミヅキさんに何を教えているのですか!」
セバスさんがじいちゃんを睨んだ。
「それよりもこちらの書類の確認をお願いします」
ドサッとじいちゃんに大量の書類を手渡した。
「セバスさんごめんなさい…お仕事の邪魔しちゃって…」
「ミヅキさんは気にする必要はありませんよ、今日はベイカーさんが仕事でいないのでこの部屋で待っているように言ったのは私ですからね」
セバスさんはじいちゃんに向けた冷たい目とは正反対の優しい温かい目を私に向けた。
「それで?ギルマスが言っていた物騒な話はなんですか?」
セバスさんも私の手元を覗き込んだ。
「実はゲームを作ろうと思っててサイコロを作ったんですが…どうも私、目がちゃんと出せなくて…」
じいちゃんに見せたように複数のサイコロを振るとまた同じ目を出した。
「こ、これは…」
「これじゃイカサマみたいですよね…別になんにもしてないんだけど、最初はサイコロが変なのかと思ったけどそういう訳でもないみたいです」
私が困った顔で笑うとセバスさんが思案顔を見せた。
「セバスさん?」
怒るか呆れるかされるかと思ったがセバスさんから何も反応がない…それはそれで寂しいな…
反応のないセバスさんをじっと見つめていると
「あっ!すみません…ちょっとお待ちくださいね」
セバスさんは部屋の棚に大量に並んだ書類の中からお目当ての物を探して戻ってきた。
「これですね…ミヅキさん、よかったら私とお仕事に行きませんか?」
セバスさんがにっこりと笑ってこちらを見た。
セバスさんの馬に乗って私達はお仕事の為にちょっと大きな街に向かっている。
セバスさんの前に座らされてガッチリとホールドされる。
後ろからはのんびりとシルバ達が馬を驚かせないように少し離れてついてきていた。
「それでは説明しながら向かいますね、この先の街で賭博場に行った冒険者達が数名奴隷落ちしているんです。どうやらイカサマで負けさせているようなのですがそれを見破る事が出来ないそうなのです」
「えー!イカサマなんて酷い!無計画でやりすぎてお金無くなっちゃうのは仕方ないですが…」
「そうですね、自分のお金で無理なく遊ぶのならいいと思いますがイカサマは許せません…そこでミヅキさんに協力してもらおうかと…」
「私のインチキサイコロですか?」
私が聞くと、セバスさんが苦笑する。
「ミヅキさんのはインチキではありませんよ、あれは加護の力でしょうからね。多分ミヅキさんならどの勝負でも勝ちは揺るがないかと…」
「だといいですけど…私子供ですけど賭博場入れるんですか?」
「貴族の子供などは入店してますから問題無いですが…決して一人で行ってはいけませんよ」
「はーい」
「今回はミヅキさんが貴族の娘、私がその執事としてお供をしている設定です。私の事はセバスと呼んでください」
「えー!無理です!セバスさんを呼び捨てなんて…」
「大丈夫です。お仕事だと割り切って下さい」
「うう…」
「私はミヅキ様とお呼びします」
「様!!」
私が嫌そうな顔をすると…
「それが嫌なら…お嬢様…でしょうか?」
前を座る私の顔を覗き込んでニコリと笑う。
「お嬢様…」
耳元で囁かれて背筋がブルっと震える。
「ミヅキ様でいいです…」
「はい、ミヅキ様」
セバスさんが嬉しそうに答えた。
街に付くとそのままその街のギルドに向かう。
そこで部屋を借りて着替えると…
「ミヅキ様、用意は出来ましたか?」
「あっ!はい」
受付のお姉さんに手伝ってもらい着替えを済ませるとセバスさんから声がかかった。
部屋を出ると、執事服に身を包んだセバスさんが白い手袋をつけて、右手を前の胸元に…左手を後ろに隠して添えて立っていた。
か、かっこいい…
元々執事など最高に似合いそうなセバスさんはなんの違和感もない!
それに比べて私のちんちくりんぶり…穴があったら入りたい…
フリフリのドレスに羽の付いた帽子…服に着られている感半端ないよ…
「ミヅキ様、お似合いです」
そんなセバスさんのお世辞に苦笑いする。
「やっぱり私が貴族とか無理ですよ…」
「そんな事無いです!とっても可愛いらしいですよ」
服を着せてくれたお姉さんが可愛いと言ってくれた。
「はい。でも帽子はやりすぎですね…こんな物があってはミヅキ様の可愛い顔がよく見えませんから」
セバスさんがそっと帽子を外すと髪を整えながらパチッと頭に何かつけた。
「その変わりにこの髪飾りをつけましょう」
そっと触るとリボンの形の髪飾りが付いている。
鏡で確認するとセバスさんと髪と瞳と同じ色の灰色のバレッタだった。
「か、可愛いです!ドレスとピッタリ!」
お姉さんには好評のようだ、まぁ帽子よりいいかも…
私はそっと髪飾りを触ってなんだかくすぐったくて…こっそりと笑った。
感想 6,830
あなたにおすすめの小説
過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜
由香過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。
初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。
溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)
星乃和花おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。
団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。
副団長「彼女のご飯は軍事物資です」
私「えっ重い」
胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!?
ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。
(完結済ー本編16話+後日談6話)
【完結】悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
本編完結済です。
もっちもっち感謝祭で、リクエストいただいたお話を更新しています。
皆さまの応援のおかげで『もふもふ獣人に転生したら、最愛の推しに溺愛されています』書籍化、心から、ありがとうございます!
皆の動画をつくりました!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
表紙や動画にAIを使っていますが、小説にはAIを使っておりません
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
一妻多夫の獣人世界でマッチングアプリします♡
具なっしー前世の記憶を持つソフィアは、綿菓子のような虹色の髪を持つオコジョ獣人の令嬢。
この世界では男女比が極端に偏っており、女性が複数の夫を持つ「一妻多夫制」が当たり前。でも、前世日本人だったソフィアには、一人の人を愛する感覚しかなくて……。
そんな私に、20人の父様たちは「施設(強制繁殖システム)送り」を避けるため、マッチングアプリを始めさせた。
最初は戸惑いながらも、出会った男性たちはみんな魅力的で、優しくて、一途で――。
■ 大人の余裕とちょっと意地悪な研究者
■ 不器用だけど一途な騎士
■ ぶっきらぼうだけど優しい元義賊
■ 完璧主義だけど私にだけ甘えん坊な商人
■ 超ピュアなジムインストラクター
■ コミュ力高めで超甘々なパティシエ
■ 私に一生懸命な天才年下魔法学者
気づけば7人全員と婚約していた!?
「私達はきっと良い家族になれます!」
これは、一人の少女と七人(…)の婚約者たちが、愛と絆を育んでいく、ちょっと甘くて笑える逆ハーレム・ラブコメディ。
という異世界×獣人×一妻多夫×マッチングアプリの、設定盛りだくさんな話。超ご都合主義なので苦手な人は注意!
※表紙はAIです
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。