文字の大きさ
大
中
小
509 / 639
14章
658.お肉
「えーどうしよう!」
私はズラっと並ぶ肉を見つめると…
「これなんか今流行りのハンバーグの材料に最適だよ!」
一際大きなお肉を見せてきた。
「「ハンバーグ…」」
聞きなれた言葉にコジローさんと顔を合わせる。
「知らないかい?ウエスト国では流行ってるって話だったけど…」
「あっ!知ってますよ!でも獣人さん達が知ってるのにびっくりして…」
「ああ、この先の孤児院の子達が最近売り出したんだよ」
「孤児院…」
まさか…
私達はとりあえず目に付いた肉を買い込むとその孤児院に向かってみた。
「ミヅキ、肉はそれだけで足りるのか?どう見てもあの人達には足らないと思うが…」
コジローさんが先程買った肉の量に疑問を感じて聞いてきた。
「あれは一応ですよ、だってシルバ達がきっといっぱい取ってくると思うから…」
あの三人の事を思って苦笑いをする。
「ああ、なるほど」
コジローさんも納得したのか頷いた。
他のお店も覗きながら孤児院を目指すと…
「いらっしゃ~い!肉汁滴るハンバーグだよ!」
聞いた事のある声が道の先から聞こえた、見ると見た事のある耳が目に入った。
「あっ!ミヅキ~!」
ピコピコと可愛く動く耳が私達に気がついて走ってきた。
「ルーク!」
兎の獣人のルークが笑顔でそばに来ると抱きついて来た!
私はそれを受け止めると…
「元気そうだね!ここがルーク達のお家なんだ…」
後ろに建つ建物を見上げた。
「うん!僕ら親無しだからね!あっ!待っててジュウト兄ちゃん呼んでくる!」
そう言うとルークは慌てて建物の中に入っていった。
「別にいいのに…ジュウトならまた来たのかとか言いそうだよね」
「そうだな」
苦笑して待っていると
「ミヅキ!!」
ジュウトがエプロンを付けてフライ返しを持ったまま飛び出して来た。
そしてこっちを見て驚いた顔をしている。
「あっ!ジュウト~元気?」
ヒラヒラと手を振ると…
「お前ら」
私達の姿を見てほっとした顔を見せた。
あれ?思ってた反応と違う?
「どうしたの?ジュウトの事だからまだ居たのか!とか言われれるかと思ったのに~」
笑っていると…
「わ、悪いかよ…俺が心配したら…」
ぷいっと頬を染めて横を向いた。
ツ、ツンデレ~
可愛いジュウトの仕草にニヤニヤとしてしまう。
ジュウトがチラッとこちらに近づこうとすると…
「ミヅキが来たって本当!?」
店から他の獣人の子達が飛び出してきた。
「わー!本当にミヅキだ!コジローもいる!」
「また会えて嬉しい!」
「あれ?ベイカーとシルバさんは?」
可愛い獣人達がジュウトを押しのけて私達の周りに群がってきた。
ベイカーさん達が呼び捨てでシルバだけさん付け…まぁいいけど…
「ベイカーさんとシルバ達は狩りに行ってるよ。そうだ!この後人族のギルドでみんなでご飯食べるんだ!良かったらみんなも来てよ!」
「「「「「いいの!?」」」」」
獣人達がキラキラとした顔でこちらを見つめる。
「もちろん!ねぇコジローさんいいよね?」
もう条約が交わされたのなら堂々と仲良くしても問題ないだろう!
「ああ、いいんじゃないか?」
コジローさんも笑顔で頷いてくれた。
「いくいくー!ミヅキの料理がまた食べられるなんて…楽しみ!!」
「ジュウト兄ちゃんのハンバーグも美味しいけどミヅキの料理…やったー!」
獣人の子供達が嬉しそうに駆け回る。
「ジュウトも来てくれる?」
私が聞くと
「ま、まぁこいつらだけ行かせる訳にも行かないからな…」
仕方なさそうに頷きながら尻尾はしっかりと左右に揺れていた。
「ふふ、来てくれてありがとう。じゃあこの後もう少し買い物して料理するから夜になったら来てね、他にも来たいって人がいたら大歓迎だよ」
「わかった」
ジュウトは頷くと
「ほら!お前たち夜に行きたいなら自分のする事を終わらせてからだぞ!」
ジュウトが声をかけると
「あっ!僕まだ部屋の掃除まだだった!急がないと!」
「私も頼まれたお使い行ってくる!」
獣人の子供達が慌ただしく動き出した。
「じゃあ俺もまだ料理作らないと…でも終わらせて絶対行くから」
「うん!待ってるね!」
私達はみんなに手を振ってまた買い物へと向かった。
人数が結構増えてしまったが…まぁ大丈夫だろ。
「何を作るんだ?手伝えることはあるか?」
コジローさんが荷物をたくさんの持ちながら聞いてくる。
ここでもやはりあまり収納魔法を見せない方がいいと荷物を持つまでくれたのだ。
「そうですね~やっぱり肉料理やらないとみんなガッカリしちゃうよね」
「まぁ主にシルバさん達だが…」
「後は…肉が苦手な子もいるかもしれないからなぁ…それに量があるのがいいよね!」
何がいいかなぁ…
私は頭を悩ませた。
ギルドに戻ると…
【ミヅキ!やっと帰ってきた!】
ギルドの外でシルバが待っていた。
すぐに寄ってくるとその体をすりすりと擦り寄せて私の体をホールドする。
【シルバおかえり!】
近づいてきたシルバの体をぎゅっと抱きしめた。
【帰ってきたら居ないから驚いたぞ!】
【えーちゃんと出かけますって言ってから出かけたよ?それよりどうだった?狩りは楽しかった?】
下がる眉をグイッとあげて聞いてみると…
【まぁまぁだな、ベイカーとアランがいなけりゃもう少し遠くに行けたんだがなぁ…】
じろりとベイカーさん達を睨みつけた。
「シルバ!なんだよその顔!どうせ俺達の悪口でも言ってるんだろ!」
ベイカーさんがシルバの顔に文句を言いながらヅカヅカと歩いてくる。
「ベイカーさん、おかえり!お肉いっぱい取れましたか?」
「うん…ああ、まぁな。今ギルドの人達に手伝ってもらって捌いてるからミヅキは裏に近づくな」
「はーい!じゃあ表の方を使ってもいいかな?人数多いから手伝ってくれる人いるといいんだけど…」
「大丈夫だろ、ロブさんに声かけとくよ」
「よろしく!じゃあコジローさんとシルバ達はこっちで用意しよ」
【ああ】
シルバ達とギルドの表に向かう事にした。
私はズラっと並ぶ肉を見つめると…
「これなんか今流行りのハンバーグの材料に最適だよ!」
一際大きなお肉を見せてきた。
「「ハンバーグ…」」
聞きなれた言葉にコジローさんと顔を合わせる。
「知らないかい?ウエスト国では流行ってるって話だったけど…」
「あっ!知ってますよ!でも獣人さん達が知ってるのにびっくりして…」
「ああ、この先の孤児院の子達が最近売り出したんだよ」
「孤児院…」
まさか…
私達はとりあえず目に付いた肉を買い込むとその孤児院に向かってみた。
「ミヅキ、肉はそれだけで足りるのか?どう見てもあの人達には足らないと思うが…」
コジローさんが先程買った肉の量に疑問を感じて聞いてきた。
「あれは一応ですよ、だってシルバ達がきっといっぱい取ってくると思うから…」
あの三人の事を思って苦笑いをする。
「ああ、なるほど」
コジローさんも納得したのか頷いた。
他のお店も覗きながら孤児院を目指すと…
「いらっしゃ~い!肉汁滴るハンバーグだよ!」
聞いた事のある声が道の先から聞こえた、見ると見た事のある耳が目に入った。
「あっ!ミヅキ~!」
ピコピコと可愛く動く耳が私達に気がついて走ってきた。
「ルーク!」
兎の獣人のルークが笑顔でそばに来ると抱きついて来た!
私はそれを受け止めると…
「元気そうだね!ここがルーク達のお家なんだ…」
後ろに建つ建物を見上げた。
「うん!僕ら親無しだからね!あっ!待っててジュウト兄ちゃん呼んでくる!」
そう言うとルークは慌てて建物の中に入っていった。
「別にいいのに…ジュウトならまた来たのかとか言いそうだよね」
「そうだな」
苦笑して待っていると
「ミヅキ!!」
ジュウトがエプロンを付けてフライ返しを持ったまま飛び出して来た。
そしてこっちを見て驚いた顔をしている。
「あっ!ジュウト~元気?」
ヒラヒラと手を振ると…
「お前ら」
私達の姿を見てほっとした顔を見せた。
あれ?思ってた反応と違う?
「どうしたの?ジュウトの事だからまだ居たのか!とか言われれるかと思ったのに~」
笑っていると…
「わ、悪いかよ…俺が心配したら…」
ぷいっと頬を染めて横を向いた。
ツ、ツンデレ~
可愛いジュウトの仕草にニヤニヤとしてしまう。
ジュウトがチラッとこちらに近づこうとすると…
「ミヅキが来たって本当!?」
店から他の獣人の子達が飛び出してきた。
「わー!本当にミヅキだ!コジローもいる!」
「また会えて嬉しい!」
「あれ?ベイカーとシルバさんは?」
可愛い獣人達がジュウトを押しのけて私達の周りに群がってきた。
ベイカーさん達が呼び捨てでシルバだけさん付け…まぁいいけど…
「ベイカーさんとシルバ達は狩りに行ってるよ。そうだ!この後人族のギルドでみんなでご飯食べるんだ!良かったらみんなも来てよ!」
「「「「「いいの!?」」」」」
獣人達がキラキラとした顔でこちらを見つめる。
「もちろん!ねぇコジローさんいいよね?」
もう条約が交わされたのなら堂々と仲良くしても問題ないだろう!
「ああ、いいんじゃないか?」
コジローさんも笑顔で頷いてくれた。
「いくいくー!ミヅキの料理がまた食べられるなんて…楽しみ!!」
「ジュウト兄ちゃんのハンバーグも美味しいけどミヅキの料理…やったー!」
獣人の子供達が嬉しそうに駆け回る。
「ジュウトも来てくれる?」
私が聞くと
「ま、まぁこいつらだけ行かせる訳にも行かないからな…」
仕方なさそうに頷きながら尻尾はしっかりと左右に揺れていた。
「ふふ、来てくれてありがとう。じゃあこの後もう少し買い物して料理するから夜になったら来てね、他にも来たいって人がいたら大歓迎だよ」
「わかった」
ジュウトは頷くと
「ほら!お前たち夜に行きたいなら自分のする事を終わらせてからだぞ!」
ジュウトが声をかけると
「あっ!僕まだ部屋の掃除まだだった!急がないと!」
「私も頼まれたお使い行ってくる!」
獣人の子供達が慌ただしく動き出した。
「じゃあ俺もまだ料理作らないと…でも終わらせて絶対行くから」
「うん!待ってるね!」
私達はみんなに手を振ってまた買い物へと向かった。
人数が結構増えてしまったが…まぁ大丈夫だろ。
「何を作るんだ?手伝えることはあるか?」
コジローさんが荷物をたくさんの持ちながら聞いてくる。
ここでもやはりあまり収納魔法を見せない方がいいと荷物を持つまでくれたのだ。
「そうですね~やっぱり肉料理やらないとみんなガッカリしちゃうよね」
「まぁ主にシルバさん達だが…」
「後は…肉が苦手な子もいるかもしれないからなぁ…それに量があるのがいいよね!」
何がいいかなぁ…
私は頭を悩ませた。
ギルドに戻ると…
【ミヅキ!やっと帰ってきた!】
ギルドの外でシルバが待っていた。
すぐに寄ってくるとその体をすりすりと擦り寄せて私の体をホールドする。
【シルバおかえり!】
近づいてきたシルバの体をぎゅっと抱きしめた。
【帰ってきたら居ないから驚いたぞ!】
【えーちゃんと出かけますって言ってから出かけたよ?それよりどうだった?狩りは楽しかった?】
下がる眉をグイッとあげて聞いてみると…
【まぁまぁだな、ベイカーとアランがいなけりゃもう少し遠くに行けたんだがなぁ…】
じろりとベイカーさん達を睨みつけた。
「シルバ!なんだよその顔!どうせ俺達の悪口でも言ってるんだろ!」
ベイカーさんがシルバの顔に文句を言いながらヅカヅカと歩いてくる。
「ベイカーさん、おかえり!お肉いっぱい取れましたか?」
「うん…ああ、まぁな。今ギルドの人達に手伝ってもらって捌いてるからミヅキは裏に近づくな」
「はーい!じゃあ表の方を使ってもいいかな?人数多いから手伝ってくれる人いるといいんだけど…」
「大丈夫だろ、ロブさんに声かけとくよ」
「よろしく!じゃあコジローさんとシルバ達はこっちで用意しよ」
【ああ】
シルバ達とギルドの表に向かう事にした。
感想 6,830
あなたにおすすめの小説
過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜
由香過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。
初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。
溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)
星乃和花おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。
団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。
副団長「彼女のご飯は軍事物資です」
私「えっ重い」
胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!?
ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。
(完結済ー本編16話+後日談6話)
【完結】悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
本編完結済です。
もっちもっち感謝祭で、リクエストいただいたお話を更新しています。
皆さまの応援のおかげで『もふもふ獣人に転生したら、最愛の推しに溺愛されています』書籍化、心から、ありがとうございます!
皆の動画をつくりました!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
表紙や動画にAIを使っていますが、小説にはAIを使っておりません
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
一妻多夫の獣人世界でマッチングアプリします♡
具なっしー前世の記憶を持つソフィアは、綿菓子のような虹色の髪を持つオコジョ獣人の令嬢。
この世界では男女比が極端に偏っており、女性が複数の夫を持つ「一妻多夫制」が当たり前。でも、前世日本人だったソフィアには、一人の人を愛する感覚しかなくて……。
そんな私に、20人の父様たちは「施設(強制繁殖システム)送り」を避けるため、マッチングアプリを始めさせた。
最初は戸惑いながらも、出会った男性たちはみんな魅力的で、優しくて、一途で――。
■ 大人の余裕とちょっと意地悪な研究者
■ 不器用だけど一途な騎士
■ ぶっきらぼうだけど優しい元義賊
■ 完璧主義だけど私にだけ甘えん坊な商人
■ 超ピュアなジムインストラクター
■ コミュ力高めで超甘々なパティシエ
■ 私に一生懸命な天才年下魔法学者
気づけば7人全員と婚約していた!?
「私達はきっと良い家族になれます!」
これは、一人の少女と七人(…)の婚約者たちが、愛と絆を育んでいく、ちょっと甘くて笑える逆ハーレム・ラブコメディ。
という異世界×獣人×一妻多夫×マッチングアプリの、設定盛りだくさんな話。超ご都合主義なので苦手な人は注意!
※表紙はAIです
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。