文字の大きさ
大
中
小
529 / 639
14章
978.おかえり
「ミヅキ!ベイカーさん!」
みんなで集まって話していると聞き慣れた声が聞こえてきた!
振り返ると…
「デボットさん!レアルさん!」
二人が手を振り走りながらこちらに向かってきた!
「おかえり」
笑顔で両手を広げて出迎えてくれる。
「ただいま!留守番ありがとうございます!問題無かったですか?」
駆け寄って抱きつきながら聞くと、二人の顔が少し曇った。
「え!?何かあったの?」
「いや…それがな…」
二人が何か言おうとすると…
「ミヅキ!!遅いです!」
可愛い怒った声にデボットさん達の後ろを覗き込む…そこには頬を膨らませて眉を釣り上げたオリビアがいた。
「オリビア!ただいま」
頬を膨らませている姿が小動物のようで可愛い…私が思わず笑いかけると…
「おかえりなさい…って違います!何日行ってるんですか!帰ってくるの遅いです」
「えーそうかな?ほんの少しだけだよ、それよりオリビアはどうだった?ここに少しは慣れた…みたいだね」
話を逸らしながらオリビアをみてクスクスと笑ってしまう。
そこには町娘の服を着て、買い物袋を下げてる姿が様になっているオリビアの姿があった。
「似合ってる!その格好…」
ププッと笑い声が漏れてしまった。
「こ、これは…リリアンさんやエヴァさんにムツカちゃんがくれたからで…」
オリビアが恥ずかしそうにスカートの端を握りしめた。
「すっごく似合ってるよ!可愛いオリビア!」
オリビアに抱きついてニコッと笑いかけると…
「そ、そうですか?ミヅキがそう言ってくれると…ふふ…中々皆さん見る目があるようですね」
オリビアの怒って膨らんでいた頬がしゅっとしぼんだ!
「ちょ、ちょろいな…俺達にはあんなに当たり散らしてたのに…」
「そうですね…毎日毎日、ミヅキはいつ帰るんだ!って聞きに来てたのが嘘のようです」
デボットさんとレアルさんがそんな日々から開放されるとホッと安堵していた。
「リリアンさん達にも帰ってきた挨拶に行かないと…」
ドラゴン亭に行こうかと話していると、話し足りないと冒険者達がブーブー文句を言いだした。
「えー!ミヅキちゃんもう行っちゃうの?」
「みんなに挨拶したらまたギルドに顔出しますから」
眉を下げ困った顔でそう答えると
「おや?このギルドに子供を困らせる大人がいたとは…教育がなっていませんでしたね」
騒ぐ冒険者達の後ろからセバスさんの楽しそうな声が聞こえる。
「ヒッ…イ、イヤァ…ミヅキチャンユックリト挨拶シテキテヨ…ジャア僕ラハコノ辺デ…」
冒険者達はぎこちない歩き方でその場を少し離れると…ダッシュで去っていった。
「全く仕方の無い人達ですね…しかしミヅキさん、挨拶が終わったらまた顔を出して下さいね。向こうでの事色々と聞かせて下さい」
セバスさんが腰を落として目線を合わせると優しく微笑んでくる。
セバスさんの嬉しそうな顔に私の気持ちも温かくなった。
「はい!私もセバスさんに話したい事いっぱいあります!」
「ふふ…それとお手紙ありがとうございました。大事に取っておきますね」
「あっ…はい…」
騙すような手紙の事を思い出した、本当に嬉しそうな顔を見せるので胸が痛み目線を思わず逸らしてしまった。
手紙の内容に嘘はないけど…
「馬鹿…」
その様子にベイカーさんが小声で駄目だと注意してきた。
うぅ…わかっているけど…セバスさんを騙すなんて…やっぱりやりたくないなぁ…
「じゃ、じゃあセバスさん後でね!」
【シルバ達行こ!】
いたたまれなくなり私は足早にオリビアの手を掴むとその場を去った。
「じゃあ…俺も…」
ベイカーさんとコジローさん達も私の後に続いて私の後を追いかけてきた。
◆
ミヅキ達が言ってしまうと
「ならわしも…」
そっと足を忍ばせディムロスはその場を去ろうとすると…
「何処に行く気ですか?」
後ろを向きながらセバスが声をかけてきた…
ひぃ…あの声は怒ってる…
ディムロスはそっと振り返ると、そこには笑顔で笑うセバスがいた。
「あれ?怒ってないのか?」
拍子抜けしてついそう声をかける。
「まぁ行ったのは不可抗力ですからね、それよりもすぐに帰ってこなかった方が問題ですけどね!」
「そりゃ手紙で説明しただろ!獣人の国のギルドが大変だったと…」
「ええ!報告は受けていますがミヅキさんを巻き込む必要が!?」
「ありゃわしが巻き込まれたんじゃ!」
「どうだか…結局はギルマスのお知り合いの方だったんですよね?」
「そうだけど…」
「詳しい話は仕事をしながら聞きましょうか、いなかった分たくさん仕事が溜まってますよ」
「うぅ…少し…手伝ってくれたりは…」
伺うように上目遣いで見つめて見るが、顔をゆがめて気持ち悪るそうにしている。
「しません!そんな気持ち悪い顔をしないで下さい!手伝えるところは全てしておきましたからね、あとはギルマスの判断が無いと通らない書類ばかりです」
「あいわかった…」
しょぼんと肩を落としてセバスのあとをついて行く。
まぁ向こうでミヅキと楽しい思いをしたからな…少しは仕事をしないと…
そんな事を考えながらついて行くとセバスが何かを思い出した様に振り返った。
「ああ、アランあなたもそんなところで寝てないでギルドの依頼をしてきて下さい」
セバスは誰も反応しないアランが落ちた穴に向かって声をかけた。
「はい…シクシク…」
穴からは悲しそうな泣き声が聞こえてきた。
◆
「あっ!アランさん助けるの忘れちゃった!」
私は隣に落ちたアランさんの事を思い出してしまったと頭を抱えた。
「アランさん?…えっ居たか?」
デボットさんとレアルさんが先程の様子を思い出すように聞いてくる。
「いたんだよ!あーきっと今頃怒ってるよ」
「いや、怒りはしないだろ。なんなら泣いてるかもしれんがな!まぁいい気味だ!アランさんのせいで肉禁止になったからな」
ベイカーさんはもしかしたら気がついてたのかも…
【確かに!あのくらいの反省が必要だろアイツには】
シルバも心配いらないと尻尾を豪快に振っている。
「うーん…」
でも可哀想だから後でなんか料理作ってあげよう…そうすれば少しは機嫌が良くなるかも…
私は何がいいかなぁと考えながらドラゴン亭に向かって足を進めた。
みんなで集まって話していると聞き慣れた声が聞こえてきた!
振り返ると…
「デボットさん!レアルさん!」
二人が手を振り走りながらこちらに向かってきた!
「おかえり」
笑顔で両手を広げて出迎えてくれる。
「ただいま!留守番ありがとうございます!問題無かったですか?」
駆け寄って抱きつきながら聞くと、二人の顔が少し曇った。
「え!?何かあったの?」
「いや…それがな…」
二人が何か言おうとすると…
「ミヅキ!!遅いです!」
可愛い怒った声にデボットさん達の後ろを覗き込む…そこには頬を膨らませて眉を釣り上げたオリビアがいた。
「オリビア!ただいま」
頬を膨らませている姿が小動物のようで可愛い…私が思わず笑いかけると…
「おかえりなさい…って違います!何日行ってるんですか!帰ってくるの遅いです」
「えーそうかな?ほんの少しだけだよ、それよりオリビアはどうだった?ここに少しは慣れた…みたいだね」
話を逸らしながらオリビアをみてクスクスと笑ってしまう。
そこには町娘の服を着て、買い物袋を下げてる姿が様になっているオリビアの姿があった。
「似合ってる!その格好…」
ププッと笑い声が漏れてしまった。
「こ、これは…リリアンさんやエヴァさんにムツカちゃんがくれたからで…」
オリビアが恥ずかしそうにスカートの端を握りしめた。
「すっごく似合ってるよ!可愛いオリビア!」
オリビアに抱きついてニコッと笑いかけると…
「そ、そうですか?ミヅキがそう言ってくれると…ふふ…中々皆さん見る目があるようですね」
オリビアの怒って膨らんでいた頬がしゅっとしぼんだ!
「ちょ、ちょろいな…俺達にはあんなに当たり散らしてたのに…」
「そうですね…毎日毎日、ミヅキはいつ帰るんだ!って聞きに来てたのが嘘のようです」
デボットさんとレアルさんがそんな日々から開放されるとホッと安堵していた。
「リリアンさん達にも帰ってきた挨拶に行かないと…」
ドラゴン亭に行こうかと話していると、話し足りないと冒険者達がブーブー文句を言いだした。
「えー!ミヅキちゃんもう行っちゃうの?」
「みんなに挨拶したらまたギルドに顔出しますから」
眉を下げ困った顔でそう答えると
「おや?このギルドに子供を困らせる大人がいたとは…教育がなっていませんでしたね」
騒ぐ冒険者達の後ろからセバスさんの楽しそうな声が聞こえる。
「ヒッ…イ、イヤァ…ミヅキチャンユックリト挨拶シテキテヨ…ジャア僕ラハコノ辺デ…」
冒険者達はぎこちない歩き方でその場を少し離れると…ダッシュで去っていった。
「全く仕方の無い人達ですね…しかしミヅキさん、挨拶が終わったらまた顔を出して下さいね。向こうでの事色々と聞かせて下さい」
セバスさんが腰を落として目線を合わせると優しく微笑んでくる。
セバスさんの嬉しそうな顔に私の気持ちも温かくなった。
「はい!私もセバスさんに話したい事いっぱいあります!」
「ふふ…それとお手紙ありがとうございました。大事に取っておきますね」
「あっ…はい…」
騙すような手紙の事を思い出した、本当に嬉しそうな顔を見せるので胸が痛み目線を思わず逸らしてしまった。
手紙の内容に嘘はないけど…
「馬鹿…」
その様子にベイカーさんが小声で駄目だと注意してきた。
うぅ…わかっているけど…セバスさんを騙すなんて…やっぱりやりたくないなぁ…
「じゃ、じゃあセバスさん後でね!」
【シルバ達行こ!】
いたたまれなくなり私は足早にオリビアの手を掴むとその場を去った。
「じゃあ…俺も…」
ベイカーさんとコジローさん達も私の後に続いて私の後を追いかけてきた。
◆
ミヅキ達が言ってしまうと
「ならわしも…」
そっと足を忍ばせディムロスはその場を去ろうとすると…
「何処に行く気ですか?」
後ろを向きながらセバスが声をかけてきた…
ひぃ…あの声は怒ってる…
ディムロスはそっと振り返ると、そこには笑顔で笑うセバスがいた。
「あれ?怒ってないのか?」
拍子抜けしてついそう声をかける。
「まぁ行ったのは不可抗力ですからね、それよりもすぐに帰ってこなかった方が問題ですけどね!」
「そりゃ手紙で説明しただろ!獣人の国のギルドが大変だったと…」
「ええ!報告は受けていますがミヅキさんを巻き込む必要が!?」
「ありゃわしが巻き込まれたんじゃ!」
「どうだか…結局はギルマスのお知り合いの方だったんですよね?」
「そうだけど…」
「詳しい話は仕事をしながら聞きましょうか、いなかった分たくさん仕事が溜まってますよ」
「うぅ…少し…手伝ってくれたりは…」
伺うように上目遣いで見つめて見るが、顔をゆがめて気持ち悪るそうにしている。
「しません!そんな気持ち悪い顔をしないで下さい!手伝えるところは全てしておきましたからね、あとはギルマスの判断が無いと通らない書類ばかりです」
「あいわかった…」
しょぼんと肩を落としてセバスのあとをついて行く。
まぁ向こうでミヅキと楽しい思いをしたからな…少しは仕事をしないと…
そんな事を考えながらついて行くとセバスが何かを思い出した様に振り返った。
「ああ、アランあなたもそんなところで寝てないでギルドの依頼をしてきて下さい」
セバスは誰も反応しないアランが落ちた穴に向かって声をかけた。
「はい…シクシク…」
穴からは悲しそうな泣き声が聞こえてきた。
◆
「あっ!アランさん助けるの忘れちゃった!」
私は隣に落ちたアランさんの事を思い出してしまったと頭を抱えた。
「アランさん?…えっ居たか?」
デボットさんとレアルさんが先程の様子を思い出すように聞いてくる。
「いたんだよ!あーきっと今頃怒ってるよ」
「いや、怒りはしないだろ。なんなら泣いてるかもしれんがな!まぁいい気味だ!アランさんのせいで肉禁止になったからな」
ベイカーさんはもしかしたら気がついてたのかも…
【確かに!あのくらいの反省が必要だろアイツには】
シルバも心配いらないと尻尾を豪快に振っている。
「うーん…」
でも可哀想だから後でなんか料理作ってあげよう…そうすれば少しは機嫌が良くなるかも…
私は何がいいかなぁと考えながらドラゴン亭に向かって足を進めた。
感想 6,830
あなたにおすすめの小説
過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜
由香過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。
初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。
溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)
星乃和花おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。
団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。
副団長「彼女のご飯は軍事物資です」
私「えっ重い」
胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!?
ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。
(完結済ー本編16話+後日談6話)
【完結】悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
本編完結済です。
もっちもっち感謝祭で、リクエストいただいたお話を更新しています。
皆さまの応援のおかげで『もふもふ獣人に転生したら、最愛の推しに溺愛されています』書籍化、心から、ありがとうございます!
皆の動画をつくりました!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
表紙や動画にAIを使っていますが、小説にはAIを使っておりません
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
一妻多夫の獣人世界でマッチングアプリします♡
具なっしー前世の記憶を持つソフィアは、綿菓子のような虹色の髪を持つオコジョ獣人の令嬢。
この世界では男女比が極端に偏っており、女性が複数の夫を持つ「一妻多夫制」が当たり前。でも、前世日本人だったソフィアには、一人の人を愛する感覚しかなくて……。
そんな私に、20人の父様たちは「施設(強制繁殖システム)送り」を避けるため、マッチングアプリを始めさせた。
最初は戸惑いながらも、出会った男性たちはみんな魅力的で、優しくて、一途で――。
■ 大人の余裕とちょっと意地悪な研究者
■ 不器用だけど一途な騎士
■ ぶっきらぼうだけど優しい元義賊
■ 完璧主義だけど私にだけ甘えん坊な商人
■ 超ピュアなジムインストラクター
■ コミュ力高めで超甘々なパティシエ
■ 私に一生懸命な天才年下魔法学者
気づけば7人全員と婚約していた!?
「私達はきっと良い家族になれます!」
これは、一人の少女と七人(…)の婚約者たちが、愛と絆を育んでいく、ちょっと甘くて笑える逆ハーレム・ラブコメディ。
という異世界×獣人×一妻多夫×マッチングアプリの、設定盛りだくさんな話。超ご都合主義なので苦手な人は注意!
※表紙はAIです
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。