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1章 隣人の鈴木君
0.とりあえず寝かせてください
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怪しげに煌めく月光に照らされた男の姿はとても綺麗で、彼に組み敷かれている状況でなければ美しさに魅了されていただろう。
改めてこの男は、色々な意味で目の毒となると感じていた。
「もう、やだ!」
睨み付けても、男は全く怯まない。
それどころか、浮かべていた愉悦の笑みを濃くする。
目尻に涙が溜まった目で睨んだって、この鬼畜な男を悦ばせるだけだと理解していても僅かな抵抗を表していたかった。
何故なら、体を動かして抵抗したくとも両手首は自分の頭上に固定され、黒光りする細い鎖で手首を合わせて縛られてしまっている。
下半身は男に乗られているせいで動かすことも出来ない。
着ていた服は切り裂かれ、ギリギリ大事な部位を隠していた。
見えそうで見えないというのは、この男の性癖なのだろうか。
今の恥ずかしい格好ならば、いっそのこと裸にされた方がスッキリするのではないかと思う。
時間をかけて服を切り裂いてくれた男は、全く服装を乱さずに着衣のままというのも腹が立ってくる。
両手首を拘束された裸の女はベッドに転がされ、鬼畜なこの男に理不尽極まりない理由でお仕置きをされているのだ。
「んっ」
冷たくて大きな手のひらが女の体を這う。
やわやわと厭らしく這う長い指から与えられる甘い刺激に、ぎゅっと結んでいた女の口から堪えられない声が漏れた。
悔しい。
両手が動かせたらぶん殴ってやるのに。
「何を……考えている?」
耳に唇を寄せた男に低い声で囁かれて、脳が、体の中が疼いて痺れる。
声は甘さを含んでいるのに、男の目は鋭いまま。
だからあれは誤解だってずっと言っているのに、いい加減、機嫌を直して欲しい。
「何も、いっ!」
男が顔を埋めた首筋に、悲鳴を上げるくらいの鋭い痛みが走る。
「痛い! かっ囓るだなんて、私は、そっちの趣味は無いってば。死ぬって! ちょっ、止めてよ」
非難の思いを込めて、自分を組み敷く男を睨む。
止めてと訴えても彼が噛るのを止めないせいで、鋭い痛みが続き皮膚が破れた傷からはトロトロ血が流れるのが分かる。
「くくくっ、たまにはこんな趣向も良かろう」
流れる血を舐めとり、じゅるじゅると音をたてて啜りだした男に、彼女は全身に力を入れて抵抗を試みる。
「こっの! 鬼畜! 変態! 鬼! 悪魔! おたんこなす! ばかー!」
「おたんこなすって何?」と思いつつ、叫んだ拍子に涙が溢れ出した。
「くっ、くくくっ」
首筋から唇を離した男は小刻みに肩を震わせて笑いだす。
「笑う、ことはないじゃない。痛いのは、嫌だって、うっ、いつも言っているのに!」
「俺を恐れをしない、お前の阿呆な言動が好ましくてな」
愉しそうに目を細めた男は、手を伸ばし人差し指で涙を流す彼女の目元を拭う。
(ああ……何故こんなことになったのだろう? こんな事なら借金してでも引っ越せば良かった)
頬を撫でる男の手がくすぐったくて、目を閉じた彼女は何度目かの後悔をするのだった。
改めてこの男は、色々な意味で目の毒となると感じていた。
「もう、やだ!」
睨み付けても、男は全く怯まない。
それどころか、浮かべていた愉悦の笑みを濃くする。
目尻に涙が溜まった目で睨んだって、この鬼畜な男を悦ばせるだけだと理解していても僅かな抵抗を表していたかった。
何故なら、体を動かして抵抗したくとも両手首は自分の頭上に固定され、黒光りする細い鎖で手首を合わせて縛られてしまっている。
下半身は男に乗られているせいで動かすことも出来ない。
着ていた服は切り裂かれ、ギリギリ大事な部位を隠していた。
見えそうで見えないというのは、この男の性癖なのだろうか。
今の恥ずかしい格好ならば、いっそのこと裸にされた方がスッキリするのではないかと思う。
時間をかけて服を切り裂いてくれた男は、全く服装を乱さずに着衣のままというのも腹が立ってくる。
両手首を拘束された裸の女はベッドに転がされ、鬼畜なこの男に理不尽極まりない理由でお仕置きをされているのだ。
「んっ」
冷たくて大きな手のひらが女の体を這う。
やわやわと厭らしく這う長い指から与えられる甘い刺激に、ぎゅっと結んでいた女の口から堪えられない声が漏れた。
悔しい。
両手が動かせたらぶん殴ってやるのに。
「何を……考えている?」
耳に唇を寄せた男に低い声で囁かれて、脳が、体の中が疼いて痺れる。
声は甘さを含んでいるのに、男の目は鋭いまま。
だからあれは誤解だってずっと言っているのに、いい加減、機嫌を直して欲しい。
「何も、いっ!」
男が顔を埋めた首筋に、悲鳴を上げるくらいの鋭い痛みが走る。
「痛い! かっ囓るだなんて、私は、そっちの趣味は無いってば。死ぬって! ちょっ、止めてよ」
非難の思いを込めて、自分を組み敷く男を睨む。
止めてと訴えても彼が噛るのを止めないせいで、鋭い痛みが続き皮膚が破れた傷からはトロトロ血が流れるのが分かる。
「くくくっ、たまにはこんな趣向も良かろう」
流れる血を舐めとり、じゅるじゅると音をたてて啜りだした男に、彼女は全身に力を入れて抵抗を試みる。
「こっの! 鬼畜! 変態! 鬼! 悪魔! おたんこなす! ばかー!」
「おたんこなすって何?」と思いつつ、叫んだ拍子に涙が溢れ出した。
「くっ、くくくっ」
首筋から唇を離した男は小刻みに肩を震わせて笑いだす。
「笑う、ことはないじゃない。痛いのは、嫌だって、うっ、いつも言っているのに!」
「俺を恐れをしない、お前の阿呆な言動が好ましくてな」
愉しそうに目を細めた男は、手を伸ばし人差し指で涙を流す彼女の目元を拭う。
(ああ……何故こんなことになったのだろう? こんな事なら借金してでも引っ越せば良かった)
頬を撫でる男の手がくすぐったくて、目を閉じた彼女は何度目かの後悔をするのだった。
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