僕の従魔は恐ろしく強いようです。

緋沙下

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27話伝言と相談

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無言でルピとパン屋ドリーへ向かって歩く。体力的にはそんなに疲れてない。疲れてないけど精神的な疲労感がすごい。

いつもらにぎやかなルピが無言で歩く姿を見ると、かなり疲れさせちゃったのかなと申し訳なくなってくる。

パン屋ドリーのドアを開けると昨日以上に店内はにぎやかで、ドラスさんも手伝いをしていた。
今までは気がつかなかったけど、日中はドラスさんも手伝ってるのかもしれない。
でも、ここでもドラスさんはマーヤさんに尻に敷かれているらしく
アンター!もっと優しくパンを掴みな潰すきかい!と怒られている。

ドラスさん働きに出ないような年齢じゃないだろうけど、仕事してないのかな。

「おや?もう帰ってきたのかい?」

「疲れちゃって。家でお弁当食べて少し休みます」

「なんかあったのかい?まぁ、食べてゆっくり休んでな」

「食べて少し休んだらお手伝いに来ます」

「今日は来なくて良いよ。昨日いたエリア…じゃわかんないね。飴をくれた人がいたろう?エリアがルピはいつ帰ってくるのかと午前来た後午後も来たから、今日は出てこんで良いさね」

なんとなく想像はついたけど、やっぱり来たんだ。ルピも疲れてるしお言葉に甘えさせてもらおう。
台所のテーブルでお弁当を広げると、今日のお弁当は果物をふんだんに使ってあるフルーツサンド。そしてベーコンに玉ねぎスライスが挟んであるサンドイッチ。

ルピとお互いにサンドイッチを手に取ると、いただきますと静かに食べていく。静かな空間に玉ねぎのシャリシャリとした音がやけに響いた。
ルピに少しお昼寝したら?と伝え僕も一緒に2階で横になる。そのままお互い寝てしまったらしく、気がつけば日が沈み始めていた。
ルピは起きる気配がないため僕1人で台所へ向かった。

「部屋を覗いたら2人ともよく寝てたな。そんなに疲れることでもあったのか?」

「今日冒険者ギルドのマスターに会ったり、生産ギルドで薬草の話を聞いたりしてたら疲れてしまって…」

「生産ギルドは俺はあんまり行ったことがないからわからんが、冒険者ギルドのマスターは熱い男だっただろ?」

「熱いかどうかはわからなかったんですけど、怖いイメージが定着しそうです」

「そうかそうか!あの人は見た目怖いが人情溢れる優しい人だから、何かあれば頼れば良い」

「そういえば、ドラスさんにたまには顔を出すようにと伝言を預かってます」

すっかり忘れていた伝言を伝えると、ドラスさんが考え込んだような顔をする。
この前からドラスさんの顔色を曇らせることが多いな…。
でも、ドラスさんはゲーハさんの事を悪い人だとは思ってない感じだったけど。

「昔俺が門番してたとは話したろ?その時の俺の直属の上司だったんだ。ただ、母ちゃんの事があってから仕事辞めて顔合わせなくなってな。風の便りで元気なのは知ってたから安心してたんだが…。そうか。まだ俺のことを気にかけてくれてるのか」

「会うつもりはないんですか?」

「いや、そんなわけじゃないんだが…1度離れると会にだけ行くのも行きづらくてな。大人の事情ってやつさ」

苦笑いをするドラスさん。会いに行きたいなら行けばいいのにな。
会えなくなって後悔しても遅いのだから…。ドラスさんと話をしているとルピが起きてきた。そうだ。あのことをドラスさんに相談してみよう。
この世界で僕が信頼できるのはドラスさんとマーヤさんしか今はいないし、この2人なら相談しても問題ないと思った。

「少し相談というか、聞きたいことがあるんですが良いですか?」

「どうした?俺で答えられることであれば良いんだが」

「ルピってドラスさんから見て異常ですか?」

「異常って、まぁ…パンを焼く従魔は初めて見るから異常といえば異常だな。あとこれだけ感情豊かな従魔もいないが、可愛いからいいんじゃないか」

「いえ、それもあるんですが強さがです」

あぁ。と言いながらドラスさんが街の外で助けられたときに、ルピがヒールを使ったことにはかなりビックリしたと言われた。
ゴブリン3匹を倒したことに関しては、ある程度の強さの従魔なら難しいことではないらしい。
ただし見た目通り強そうじゃない僕が、その強さの従魔を連れていることはありえないがなと言われた。

うーん…。

「そうですか…。あと、僕、ルピの気持ちがわかるんです」

「そりゃ長く一緒にいるんだからわかるだろう。俺も母ちゃんもまだ数日しか一緒にいないが、ルピが腹が減ったとか眠いぐらいならわかるぞ」

「その、ルピが考えてることが頭に直接聞こえてくるんです」

「はっはっは!それはハヤトありえないぞ。ルピの気持ちをハヤトが自分で変換してるだけだろう。子供はよくあることさ。ぬいぐるみ遊びしてる女の子なんか、ぬいぐるみさんが~って言う時があるからそれと同じようなもんだろう」

やばい。僕すごい小さな子と同等と思われてるのかな。そうだとしたら、年齢以上に僕頭の中が幼い子だと思われてる…。

「ルピ。僕は今から扉を出て廊下で待ってるから、ドラスさんに今日のお昼食べたご飯聞いたら教えてに来てくれる?僕に聞こえないようにお話ししてね」

「ピッ!『わかったー!』」

「なんだなんだ。遊びを始めるのか。良いぞルピ!やるか!」

ドラスさんは子供たちの遊びに混ぜてもらえる大人の心境なのか嬉しそうにしてるけど、この後の反応を考えると胸が痛い…。僕はルピにお願いすると扉を開けて廊下へ出る。

「ピィ?(何食べたの?)」

「ルピ、もう少し遠くで話そう。ハヤトが聞き耳立ててるかもしれないからな!」

「ピッ…ピィ(大人げない)」

「そうだろそうだろ。ルピもそう思うだろ!よし!少し離れるぞ」

ルピが話が終わったのか扉を開けて、今日ドラスさんが食べたものはクリームパンに砂糖がたっぷりかけてある揚げパン。
それに僕達も食べたフルーツサンド。甘いものばかりだな…。
あと、僕が聞き耳立ててるから台所の隅に行って話してきたとも言われた。全力過ぎでしょうドラスさん。

「おっ!聞いてきたか。良いぞ答え合わせをしよう!でも、少しヒントもやろうな。ヒントは魚だな」

甘いものしか食べてないのに、なんで魚が出てくるんだ。昼は焼き魚や刺身を食べたとでも言いたいのかな…。

「ドラスさんの今日のお昼は、クリーパン・砂糖たっぷり揚げパン・フルーツサンドですね。あと、僕は聞き耳なんか立ててません」

「よくわかったな!って……なんでわかるんだ。相当耳が良いのか?」

「ルピが教えてくれたんです。あと、台所の隅にこっそりドラスさんが隠してるお酒があることも知ってるらしいです」

「なんでそんなことまで⁉昨日の夜中トイレに起きて来たルピに見られて、内緒にしてくれるようにお願いしたことじゃ…。本当にルピの考えてることがわかるのか⁉」

「だから、そう言ってるじゃないですか」

「ハヤト、それは異常どころじゃないぞ‼ありえない話だ‼」

やっぱり異常なのか…。うーん。どうしようかなぁ。
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