僕の従魔は恐ろしく強いようです。

緋沙下

文字の大きさ
31 / 84

29話冒険者ギルド(中編)

しおりを挟む
ドラスさんはビックリした顔で僕を見て、ゲーハさんに顔を向ける。
僕は静かにゲーハさんの答えをまった。

「そんな真剣な顔で見つめられても、俺にその毛はないからな」

ハ?真剣な話をしてるつもりなのに、何言ってんのこの人⁉︎
僕だって、おじさん趣味はない。てかこれまで人間の女の子との触れ合いもないのに、男なんてそもそも眼中にない…。

「そう睨むな。場を緩めようと思っただけだ。俺の冗談はいつも通じないのが悲しいがな」

「真剣な話の時に冗談なんてよく言えますね…」

「お前の言いたいことはわかった。お前らを離すつもりは考えてないし、離したところで意味がないからな。危害を加えるつもりもないさ。聞きたいことは山ほどあるがな」

横でどうして良いかわからずオロオロするドラスさん。ルピはずっとゲーハさんから目線を離さず臨戦態勢をとっているように見える。
きっと僕を守ろうとしてくれてるんだろう。

「まずはお前たちのステータスが見たい。ギルドカードに乗せているものではなく、現在のものだ」

「それを見せる意味は?」

「お前と従魔の強さを知るためだな」

「それを知る意味があるんですか?」

「まず1つはお前の強さだ。他の冒険者に知られた以上は、どこで話が漏れるかわからない。その時にお前は従魔がいなくても1人で自分の身を守れるのかを知りたい」

ゲーハさん曰く魔石は貴重なもので欲してる人はかなりおり、闇取引もされているらしい。ギルドでは適正価格で取引しているが、裏ではその何倍も値段がつくこともある。

その魔石を魔物を倒すたびに出せる従魔となれば、欲しい人間は山のようにいる。
狙おうと思えば僕がトイレに行ってる時、寝てる時、歯磨きをしてる時、いくらでも出来るらしい。トイレはさすがに勘弁だな…。

「お前は従魔が離れてる時に自分を守れるだけの強さがあると言い切れるのか?」

「今の僕には…ないでしょうね」

「だろうな」

「2つ目は当たり前だが従魔の強さだ。見もせず魔物を倒せるとなれば、それなりの強さが必要になってくる。強すぎる従魔が街で暴れられても困るからな。抑えるすべを考えるのに知りたいのさ」

「暴れるってっ!そんなことルピがするわけないじゃないですか‼︎」

「それを考え判断するのが俺の役目であって、お前の意見は聞いてない」

ゲーハさんの言い分もわかる。わかるけどルピがまるで街に危害を加えるかもしれないという言い方に、煮え繰り返りそうなほど腹がたつ。
こんな人を本当に信じて良いのか⁉︎

「ギルドマスター、その言い方はあんまりです‼︎ルピが人を守ることはあっても、人を襲うような子ではありません!俺とマーサがよくわかっている!」

「ぬるい考え持つようになったな。お前はこいつらにほだされただけじゃないのか?」

「良い加減にしてください‼︎僕を悪くいうなら言えば良い…。でも、ルピやドラスさんをけなすことは許さない‼︎」

「お前がそうやって感情的になれば、見てみろ従魔を。それが今の現実だ」

横にいるルピを見ると、身構えゲーハさんに襲い掛かりそうな勢いで睨んでいた。ルピがこんな顔をするなんて…驚き言葉が出てこない。

「ヴィルルルルゥゥッ!」

鳴き方がいつもと違う。ルピの声も僕の頭に伝わってこない。僕の…せいなのか…。

「物は壊してくれるなよ。昨日片付けたばかりだからな。今日も片付けさせてくれるなよ」

「ルピ…?」

僕が話しかけても僕を見ようともせず、ゲーハさんをひたすら睨みつけるルピ。これじゃダメだ。ルピの正面に立ちルピを抱きしめる。

「僕は大丈夫だから。ルピ、僕は大丈夫だから落ち着いて」

「ヴィルルルル…」

「大丈夫だよ。落ち着いて。僕を見て」

「ヴィルル…………ピィ…」

「僕の声が聞こえる?」

「ピィ…『聞こえる』」

「良かった…」

ルピ落ち着きを取り戻して僕をまっすぐ見てくれる。僕が感情をあらわにし過ぎてしまったことで、ルピに余計な負担をかけさせてしまったのかもしれない。

「わかったか?お前に万が一のことがあってみろ。その従魔は見境なく周りを巻き込む可能性がある。お前がドラスの家にいる時に襲われいなくなったとして、そいつがドラス達を襲わない保証ができるのか?信頼とか軽い言葉は言ってくるなよ」

今のルピを見て、僕は…返す言葉がない。昨日物は壊しちゃダメだよと話したから、壊さずにいてくれたのかもしれない。
でも、これから起こりえるかもしれないこと1つ1つに、あれはしちゃダメこれはしちゃダメと僕に言えるんだろうか…。これからの事を予測できない僕に言える自信はない。

「わかったようだな。それで、お前はステータスを見せるつもりはあるのか?」

「僕とルピに…メリットがある話なら…」

「そうか。それもそうだな。まずお前はドラスの家を出ろ。迷惑をかけたくないと思うなら、それが一番の得策だな」

急に家を出ろ言われても、それが得策なんだろうか…。一気に話が変わり過ぎてついていけない。

「ギルドマスター!それはあんまりだ!マーヤは2人を子供のように可愛がっている…。俺たちが気を付ければいい話じゃないのか⁉」

「他に知られた以上、内輪だけの話で済む話じゃない。さっきも言ったが万が一のことがあってみろ。従魔は危険だとなった時に、他のテイマーから従魔をお前は取り上げるきか?」

「だがっ‼マーヤの気持ちも考えてやってくれ!」

「個人の感情より、俺はギルドマスターとして全体を見る義務がある。お前達の気持ちだけを優先するわけにはいかないことぐらいわかるだろう‼」

今のルピを見て、僕にはルピを抑えらることができますとは言えない…。ルピがマーヤさんとドラスさんを襲うなんてことは考えられない。
でも、それが街中で起こったとしたら?僕が殺された。いなくなった時に、ルピが暴走しないなんて言えるんだろうか…。

「わかりました…。家を出ます」

「わかってもらえたならなによりだ。冒険者ギルドの地下には職員用の貸し部屋がある。そこで寝泊まりをしろ。ギルドにいる間に襲われる確率は低いからな」

「わかりました」

「数日は期間を貰えるんだろうか…。マーヤの気持ちも考えてやりたい」

「今日ぐらいは帰っていいさ。そんなにすぐ相手も襲ってこないだろうからな。だが、そこの従魔。今日は寝ずお前の主人を見ていろよ。何かあってからじゃ遅いからな。明日からはギルドで寝泊まりしろ」

「ピィ…『わかった』」

明日からはドラスさんたちのもとを離れなきゃいけないのか…。軽い気持ちでいた僕に責任があるけど、あるけど急に別れを告げらるよう言われて気持ちが落ち着かなかった。
しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

処理中です...