僕の従魔は恐ろしく強いようです。

緋沙下

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58話なんてことでしょう

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目の前にデンと置かれているのは、元風呂敷。ルピとロッソは嬉しそうにしてるけど、僕はあまり嬉しくない。

今度からはもっと言葉選ばないと。前もそう思う瞬間があったのに、僕は学習能力が低いみたいだ…。

出来上がったものは、コリーが作るものと同じ雰囲気を感じる。匠の仕事だ。
なんということでしょう。見えない精霊の手にかかれば風呂敷がいとも簡単に巾着へ…って。おかしいでしょ。そもそも針と糸は?

「ロッソ、なんで針と糸もなくて巾着が出来上がるの?」

『知らないわ。できたんだから良いじゃない』

『良いじゃない!』

はぁ…。自由奔放な従魔を持つ僕は大変だよ。2人と精霊に、今度からは僕に確認してから作ること!と言ったけど、早くアイテムボックスここに作ってと言ってくるから聞いてないかもな。トホホ…。

でも勝手に作ったのは別として、すごく綺麗な巾着が出来上がってきたな。これ本当にどうやって作ったんだろ?

「ルピ、精霊さんに針と糸はどうしたの?って聞いてくれる」

『良いよー!精霊さんハヤトがね---------』

ルピが楽しそうに、うんうん!すごいね!と話しを聞いてくれる。ルピがすごいねって、いったい何してくれちゃったんだ。ロッソも、あら器用なことするじゃないと感心しているし、早く僕にも教えて。

『針はね、ホーンラビットのツノを折って細くして作ったんだって!糸は糸を作る蜘蛛がいるから、その蜘蛛から貰ったんだよ!』

「はい?ホーンラビット倒してツノ折って、蜘蛛倒して糸取ったってこと?」

『違うよ!蜘蛛は倒すと糸取れないの。だから、お願いして貰ったんだって!』

『違うわ。お願いじゃなくて、脅して出させたのよ。蜘蛛が出す普通の糸だと使えないから、それようの糸を出させたのよ』

精霊って可愛いイメージじゃないの?殺してツノ折っただの、脅して出させたって恐喝じゃん…。
2人ともそれを聞いて、すごいだの器用だの言ってたの⁉︎僕との感覚が違いすぎるでしょ!

『精霊さんも一緒に行こう!』

『そうね。精霊がいれば魔石以外のものが取れそうだし、良い考えだわ』

ちょっとちょっとちょっと‼︎
ルピ達にとっては新しい友達と知り合って、あなたも一緒に遊びに行こうよ!って感覚なんだろうけど、内容は魔物討伐だからね?
でも、僕といても暇だろうし仕方ないか。

「ちゃんとコリーに確認してからじゃないとダメだよ。コリーの精霊なんだから」

『聞いてくるー!---------良いよってー!』

やることが早いな。はぁ…。ここで僕が何か言っても構ってやれるわけじゃないしね。3人にあまり遠くまで行かないようにねと許可を出して、僕は家の中へと入って行った。

『主人や、一緒に行かなかったのか?』

「あの3人に人間の僕はついていけないよ。それに、コリーのお皿とか作ろうと思って」

『ほっほっほ。若い主人が情けない事を言う。飛ばして貰えばついていけたじゃろうに。ま、あやつも遊べる相手が増えて嬉しがっとるじゃろう』

飛ばして貰えばって…。きっと魔物討伐を競い合うようにするんだろうから、僕がいれば邪魔になるだろうしね。
皆んなで仲良くしてくれれば、それが一番だよ。

「コリー、外に置いてある丸太の一部貰っても良い?」

『構わんぞ。必要ならすぐ切るぞ』

「そんなにいらないから!」

ルピやロッソも規格外だけど、簡単に家を建てたり、すぐ木を切るぞって言うコリーも規格外だよ。
外に出て丸太の一部を貰うと、どんなものにしようか頭の中で考えを巡らせることに集中した。

「うーーん。コリーみたいに僕も細工できれば良いのに。なんで僕が作ると、子供が描いた絵のようになるんだ」

どうせ作るならと、ルピ達のお皿も新しいものに挑戦中。ルピは羽のデザイン。ロッソは3つの尻尾。コリーは帽子とヒゲをイメージ。
でも、僕が作ると子供がクレヨンで描いた絵のように歪んだ彫刻になってしまう。

失敗しては消して、消しすぎて薄くなれば新しい木材で挑戦していたら、僕の横にはすごい数のコップとお皿が出来上がっていた。

『これはなにをしておるんじゃ。木が泣いておるぞ』

「あ、コリー。うん…ごめん。コリーみたいに細工できないかなってやってみたんだけど…」

『挑戦するのは良いことじゃ。しかし木を無駄にしてはいかん。木にも命はあるのじゃ。使う以上は意義ある使い方をしてやらんとな』

コリーの言う通りだ。できないからとひたすら作った僕が悪い。コリーはお皿やコップを手に取ると、何事も勉強じゃ。これらはおがくずにして畑に撒くかのと無駄にならない方法を考えてくれた。

『主人や、なんでもかんでもスキルでどうにかすると考えちゃいかんぞ。自分で彫ることも味わい深いものじゃ。このようにな』

「はや!って、あの手すりの細工はコリーが彫ったものなの⁉︎」

『そうじゃ。ワシも何百年も彫って彫って身につけたワザじゃ。一朝一夕で真似できるものじゃないぞ。ほーっほっほ』

そっか。いつの間にか僕は自分の力で何かをやるってことをしてなかったのかもしれない。貰った力で、どうにかすることに慣れてしまってたんだろうな。

「コリー。掘るやつ僕に貸してくれる?自分の手で不細工かもしれないけど頑張って彫ってみるよ」

『良いぞ良いぞ。何事も練習じゃ。主人が一生懸命作ってくれれば、ワシらはそれだけで嬉しいのじゃ。見てくれなぞ気にせんでいいぞ』

本当ならもっと怒られても良いのかもしれない。きっとそれをしないのは、僕に自分で気づいて考えて欲しいと思うコリーの優しさなんだろう。

その思いに応えられるよう、僕も頑張らなきゃ!


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