21 / 231
第21話 恋人の存在
しおりを挟む
ルニア伯爵に落ち込む2人を任せ、解放されたキサラギはマリを抱いたまま客室へと戻って来た。
女王に相応しい豪華な客室だ。
ルニア伯爵の館から察するに、王国で女王の次に偉いのはルニア伯爵なのだろう。
キサラギは知らないが、処刑されたリアン侯爵の住んでいた城よりも立派な館だ。
有事の際には長砦とは別に、この館でも籠城戦が可能となっているのだろう。
部屋を進みベットにマリを寝かそうとするが、手は未だにキサラギの首に回されており離してくれそうも無い。
「ふー……ほら、マリ。 ベットに着いたよ? 横になれるかい?」
キサラギが優しく声を掛けると、マリは漸く首に回した手を離した。
「んー……? うぷっ、あぁ~気持ち悪い。 ありがとう、キサラギさん。 いやぁ……ヨハネさんの方が良い?」
マリは意地の悪い笑顔を浮かべながらベットへと横になる。
なんとも情けない顔をする恋人を見て、マリは更に笑顔になった。
「隠していてすまない……許してくれ。出来れば2人の時はヨハネと呼んでくれ。 キサラギは名では無く家名なんだ」
泥酔した今のマリには、長耳を赤く染めながら謝るヨハネが推しのルーデウスの様に可愛く愛おしく見えている。
「ふふ……別に怒って無いですよ? うぷ……それに、私を助ける為だったんでしょ? ありがとう……ヨハネ」
マリはヨハネの手を取り、優しく握る。
顔まで真っ赤に染めたヨハネは、マリの手を握り返した。
「はは……まさか、本当にマリとこんな恋仲な雰囲気になれる何てね。 長く生きてきたが……恋とは凄いね」
「あはは……なにそれ。 変なの、うぷ。 でも、間に合って良かったぁ~……ルニア伯爵に起こされた時は血の気が引いたんだよ? 従者2人が税務管のエルフを地下牢で拷問してるって聞かされた時は……。 もう! 2人にはヨハネは味方だよってちゃんと言ったのに!!」
マリはベットで横になったまま従者2人の顔を思い浮かべながらプンプンと怒る。
「ありがとう、本当に助かったよ。 それと……すまない。 2人に……マリと交際している事を話した」
申し訳無さそうに謝るヨハネを、マリは怒る素振りも見せずに答える。
「……いいよ、多分隠すのは無理だろうなーって思ってたから」
ヨハネは気付かない。
マリが微かに胸を痛めている事を……。
「あ、でも……秘密の取り引きは話してない。 それは、絶対に誰にも漏らさないよ」
「うぷ……ありがとう。 あぁ……気持ち悪い。 ごめーん、また少し寝るよ」
非常に度数の高い鬼殺しをカプカプと飲みまくったのだ。常人なら、既に死んでいるだろう。気持ち悪いで済んでいるマリが異常なのだ。
「あぁ、勿論だよ。 おっと……そうだ、忘れていた。 ラガンがマリにコレを口に含ませろと言っていたよ。 酔い冷ましの実だ」
ヨハネは懐から酔い冷ましの実を取り出し、マリの口へと入れてやる。
「むご……むにこぬねの! ぬごいぬごい!」
余程効果が有ったのか、先程までの様子からガラリと変わり元気にモゴモゴと喋っている。
「あはは! マリ、何を言ってるか全然分からないよ。 あ、その実は飲み込まないようにね。 人間の身体には良くないから」
「ぷっ! うわー! これ凄いね!! 気持ち悪いの無くなった!」
ヨハネが差し出した布に実を吐き出したマリは、いつも通りの元気を取り戻していた。元気なマリにヨハネの頬も弛む。
「ふふ、それは良かった。 お酒に弱い獣人が使う実でね。 獣人の国以外では採れないのさ」
「ふ~ん、いつかうちの王国に輸入してくれないかな」
「そうだね。 それぐらい……平和になって欲しいね」
「うん……そうだね。 でも、大丈夫よ……私が平和にするから」
「あはは……マリ、私も共に」
「ありがとう……ヨハネ」
穏やかな時が流れる。
メリーとジャックは知る由も無い。
ヨハネという恋人の存在が、壊れかけのマリを支えている事を。
「あ! そうだ、私が寝ちゃってから他の皆はどうなったの?」
「ふふ、皆から伝言を預かってるよ。まずは、ミケルとルキから――――
2人の穏やかで甘い時間は、夕食に呼ばれるまで続くのであった。
女王に相応しい豪華な客室だ。
ルニア伯爵の館から察するに、王国で女王の次に偉いのはルニア伯爵なのだろう。
キサラギは知らないが、処刑されたリアン侯爵の住んでいた城よりも立派な館だ。
有事の際には長砦とは別に、この館でも籠城戦が可能となっているのだろう。
部屋を進みベットにマリを寝かそうとするが、手は未だにキサラギの首に回されており離してくれそうも無い。
「ふー……ほら、マリ。 ベットに着いたよ? 横になれるかい?」
キサラギが優しく声を掛けると、マリは漸く首に回した手を離した。
「んー……? うぷっ、あぁ~気持ち悪い。 ありがとう、キサラギさん。 いやぁ……ヨハネさんの方が良い?」
マリは意地の悪い笑顔を浮かべながらベットへと横になる。
なんとも情けない顔をする恋人を見て、マリは更に笑顔になった。
「隠していてすまない……許してくれ。出来れば2人の時はヨハネと呼んでくれ。 キサラギは名では無く家名なんだ」
泥酔した今のマリには、長耳を赤く染めながら謝るヨハネが推しのルーデウスの様に可愛く愛おしく見えている。
「ふふ……別に怒って無いですよ? うぷ……それに、私を助ける為だったんでしょ? ありがとう……ヨハネ」
マリはヨハネの手を取り、優しく握る。
顔まで真っ赤に染めたヨハネは、マリの手を握り返した。
「はは……まさか、本当にマリとこんな恋仲な雰囲気になれる何てね。 長く生きてきたが……恋とは凄いね」
「あはは……なにそれ。 変なの、うぷ。 でも、間に合って良かったぁ~……ルニア伯爵に起こされた時は血の気が引いたんだよ? 従者2人が税務管のエルフを地下牢で拷問してるって聞かされた時は……。 もう! 2人にはヨハネは味方だよってちゃんと言ったのに!!」
マリはベットで横になったまま従者2人の顔を思い浮かべながらプンプンと怒る。
「ありがとう、本当に助かったよ。 それと……すまない。 2人に……マリと交際している事を話した」
申し訳無さそうに謝るヨハネを、マリは怒る素振りも見せずに答える。
「……いいよ、多分隠すのは無理だろうなーって思ってたから」
ヨハネは気付かない。
マリが微かに胸を痛めている事を……。
「あ、でも……秘密の取り引きは話してない。 それは、絶対に誰にも漏らさないよ」
「うぷ……ありがとう。 あぁ……気持ち悪い。 ごめーん、また少し寝るよ」
非常に度数の高い鬼殺しをカプカプと飲みまくったのだ。常人なら、既に死んでいるだろう。気持ち悪いで済んでいるマリが異常なのだ。
「あぁ、勿論だよ。 おっと……そうだ、忘れていた。 ラガンがマリにコレを口に含ませろと言っていたよ。 酔い冷ましの実だ」
ヨハネは懐から酔い冷ましの実を取り出し、マリの口へと入れてやる。
「むご……むにこぬねの! ぬごいぬごい!」
余程効果が有ったのか、先程までの様子からガラリと変わり元気にモゴモゴと喋っている。
「あはは! マリ、何を言ってるか全然分からないよ。 あ、その実は飲み込まないようにね。 人間の身体には良くないから」
「ぷっ! うわー! これ凄いね!! 気持ち悪いの無くなった!」
ヨハネが差し出した布に実を吐き出したマリは、いつも通りの元気を取り戻していた。元気なマリにヨハネの頬も弛む。
「ふふ、それは良かった。 お酒に弱い獣人が使う実でね。 獣人の国以外では採れないのさ」
「ふ~ん、いつかうちの王国に輸入してくれないかな」
「そうだね。 それぐらい……平和になって欲しいね」
「うん……そうだね。 でも、大丈夫よ……私が平和にするから」
「あはは……マリ、私も共に」
「ありがとう……ヨハネ」
穏やかな時が流れる。
メリーとジャックは知る由も無い。
ヨハネという恋人の存在が、壊れかけのマリを支えている事を。
「あ! そうだ、私が寝ちゃってから他の皆はどうなったの?」
「ふふ、皆から伝言を預かってるよ。まずは、ミケルとルキから――――
2人の穏やかで甘い時間は、夕食に呼ばれるまで続くのであった。
17
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました
黒木 楓
恋愛
旧題:悪役令嬢に転生するも魔法を使えることの方が嬉しかったから自由に楽しんでいると、王子に溺愛されました
乙女ゲームの悪役令嬢リリアンに転生していた私は、転生もそうだけどゲームが始まる数年前で子供の姿となっていることに驚いていた。
これから頑張れば悪役令嬢と呼ばれなくなるのかもしれないけど、それよりもイメージすることで体内に宿る魔力を消費して様々なことができる魔法が使えることの方が嬉しい。
もうゲーム通りになるのなら仕方がないと考えた私は、レックス王子から婚約破棄を受けて没落するまで自由に楽しく生きようとしていた。
魔法ばかり使っていると魔力を使い過ぎて何度か倒れてしまい、そのたびにレックス王子が心配して数年後、ようやくヒロインのカレンが登場する。
私は公爵令嬢も今年までかと考えていたのに、レックス殿下はカレンに興味がなさそうで、常に私に構う日々が続いていた。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる