[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

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第21話 恋人の存在

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 ルニア伯爵に落ち込む2人を任せ、解放されたキサラギはマリを抱いたまま客室へと戻って来た。

 女王に相応しい豪華な客室だ。
 ルニア伯爵の館から察するに、王国で女王の次に偉いのはルニア伯爵なのだろう。

 キサラギは知らないが、処刑されたリアン侯爵の住んでいた城よりも立派な館だ。

 有事の際には長砦とは別に、この館でも籠城戦が可能となっているのだろう。

 部屋を進みベットにマリを寝かそうとするが、手は未だにキサラギの首に回されており離してくれそうも無い。

 「ふー……ほら、マリ。 ベットに着いたよ? 横になれるかい?」

 キサラギが優しく声を掛けると、マリは漸く首に回した手を離した。

 「んー……? うぷっ、あぁ~気持ち悪い。 ありがとう、キサラギさん。 いやぁ……ヨハネさんの方が良い?」

 マリは意地の悪い笑顔を浮かべながらベットへと横になる。

 なんとも情けない顔をする恋人を見て、マリは更に笑顔になった。

 「隠していてすまない……許してくれ。出来れば2人の時はヨハネと呼んでくれ。 キサラギは名では無く家名なんだ」

 泥酔した今のマリには、長耳を赤く染めながら謝るヨハネが推しのルーデウスの様に可愛く愛おしく見えている。

 「ふふ……別に怒って無いですよ? うぷ……それに、私を助ける為だったんでしょ? ありがとう……ヨハネ」

 マリはヨハネの手を取り、優しく握る。

 顔まで真っ赤に染めたヨハネは、マリの手を握り返した。

 「はは……まさか、本当にマリとこんな恋仲な雰囲気になれる何てね。 長く生きてきたが……恋とは凄いね」

 「あはは……なにそれ。 変なの、うぷ。 でも、間に合って良かったぁ~……ルニア伯爵に起こされた時は血の気が引いたんだよ? 従者2人が税務管のエルフを地下牢で拷問してるって聞かされた時は……。 もう! 2人にはヨハネは味方だよってちゃんと言ったのに!!」

 マリはベットで横になったまま従者2人の顔を思い浮かべながらプンプンと怒る。

 「ありがとう、本当に助かったよ。 それと……すまない。 2人に……マリと交際している事を話した」

 申し訳無さそうに謝るヨハネを、マリは怒る素振りも見せずに答える。

 「……いいよ、多分隠すのは無理だろうなーって思ってたから」

 ヨハネは気付かない。
 マリが微かに胸を痛めている事を……。

 「あ、でも……秘密の取り引きは話してない。 それは、絶対に誰にも漏らさないよ」

 「うぷ……ありがとう。 あぁ……気持ち悪い。 ごめーん、また少し寝るよ」

 非常に度数の高い鬼殺しをカプカプと飲みまくったのだ。常人なら、既に死んでいるだろう。気持ち悪いで済んでいるマリが異常なのだ。

 「あぁ、勿論だよ。 おっと……そうだ、忘れていた。 ラガンがマリにコレを口に含ませろと言っていたよ。 酔い冷ましの実だ」

 ヨハネは懐から酔い冷ましの実を取り出し、マリの口へと入れてやる。

 「むご……むにこぬねの! ぬごいぬごい!」

 余程効果が有ったのか、先程までの様子からガラリと変わり元気にモゴモゴと喋っている。

 「あはは! マリ、何を言ってるか全然分からないよ。 あ、その実は飲み込まないようにね。 人間の身体には良くないから」
 
 「ぷっ! うわー! これ凄いね!! 気持ち悪いの無くなった!」

 ヨハネが差し出した布に実を吐き出したマリは、いつも通りの元気を取り戻していた。元気なマリにヨハネの頬も弛む。

 「ふふ、それは良かった。 お酒に弱い獣人が使う実でね。 獣人の国以外では採れないのさ」

 「ふ~ん、いつかうちの王国に輸入してくれないかな」

 「そうだね。 それぐらい……平和になって欲しいね」

 「うん……そうだね。 でも、大丈夫よ……私が平和にするから」

 「あはは……マリ、私も共に」

 「ありがとう……ヨハネ」

 穏やかな時が流れる。

 メリーとジャックは知る由も無い。

 ヨハネという恋人の存在が、壊れかけのマリを支えている事を。

 「あ! そうだ、私が寝ちゃってから他の皆はどうなったの?」

 「ふふ、皆から伝言を預かってるよ。まずは、ミケルとルキから――――

 2人の穏やかで甘い時間は、夕食に呼ばれるまで続くのであった。
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