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第11話 ヘリオスダンジョンにようこそ!

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「よう、リオン。今日は大人数だな。社員旅行ですかい?トム爺」
アグーの森のダンジョン入り口の門番だ。
ここでダンジョンの入り口の入場券、何階層まで行くのかそのチケットを見せる。

「うむ。今日は最下層までの配達じゃ」
と、トム爺が事前に用意していた全員分の入場券と最下層までのパスポートを見せる。
「へっへっへっ今日は最下層までひとっ走りだぜ?」と満面の笑みで俺は門番に話しかけた。

「おお!本物のパスポートだ!!リオン!!お前、どこで盗んだ⁉︎」
「ばっか⁉︎ふざけんな!!仕事だ!!」
門番がトム爺を見ると
「うむ。特別依頼でな。最下層まで配達じゃ」

「ほーっ珍しい事もあるもんだ。まあ、気をつけてな?リオン」と他の兵達に合図をして門を通る。
「へへへ。お仕事ご苦労さま♪」
「いつもありがとね~♪」
と、ギャルとアローラが門番に投げキッスをする。
「お気をつけて~♪」と顔を赤らめて上機嫌に手を振る門番たち。

入場門の薄暗いトンネルをしばらく走ると眩い光に包まれて草原が広がり…

「お~いでおいで~♪ヘリオス♪ヘリオス♪ヘリオスダーンジョーン♪
ゆ~かいゆかい~♪ヘリオス♪ヘリオス♪ヘリオスダーンジョーン♪
らららら~らららら~♪」
「ヘリオスダンジョンへようこそ!!
さあ、わっくわくの冒険がはっじまるよーっ!♪」
と、テーマパークの様なお客さま歓迎ソングが鳴り響く。
これにはいつもガクッと来るんだ。
遊園地じゃ無いっつうの!!

「おやおや⁉︎今日もいらっしゃい!!今日も冒険頑張ってみよーう!!」と、ヘリオスダンジョンのゆるキャラの様なイメージキャラの着ぐるみが近づいてきた。
「いつもいつも出迎え御苦労さん。
で、いつもいつも言うけど仕事だよ?」と半ば呆れながら着ぐるみに話しかける。
「おやおや、リオンにナルシスいつもお仕事ご苦労さま!!♪
今日はお友達いっぱいだね?
気をつけて行ってくるんだよー?
アハハっ♪」と言って着ぐるみは別の新規の冒険者のグループに近寄って話しかける。

「キャーっかっわいい!いつ見てもヘリオスマウスは癒される~!
ちょっとアロっち待ってて!!」とギャルはカブから降りると着ぐるみに抱きついてる。
「あ!?ズルいー!!私だって抱きつくーっ!!」と、アローラもカブのサイドスタンドを立てると飛びつく様に抱きつきにいった。
「ったく、何やってんだ?あいつら」
「フッ 乙女心は永遠なりだ。かわいいではないか?リオン」
「ホントお前は人間ができてるよ」

ダンジョン入り口はまさに移動遊園地の様にきらびやかにそこらじゅうにアイテムショップや武器や防具の店、飲食店に宿泊施設、娯楽施設等が立ち並んでいる。
ここで、ダンジョンに入る前に腹ごしらえや装備のチェック、足りない物の補充をするんだ。

初心者冒険者の緊張を癒すためか、もともとがダンジョンテーマパークとして作られた為か全体的なデザインがお祭り的というか、子供向けの遊園地みたいな作りになっている。

そして、この町の中心にあるギルドショップの店内には討伐モンスターや鉱石採掘、探し物の依頼書が掲示板に貼られていたり、それらを案内人が配布したりする。
このギルドショップからの情報はダンジョンを冒険するには非常に重要だ。
俺達もダンジョン15階層の「クイーン」以降に配達に行くにはモンスターのレベルも変わるので事前に最新の情報を得てから行く事にしている。
まあ、ほとんどが10階層の「ルーク」までの配達が多いからたまにしか無いけどね。

トム爺がお得意様に挨拶とお届け物を配達に行っている間に俺とナルシスは情報収集を始める事にした。

ギルドショップの中は屋内の中央に大きな柱がありそこに掲示板があり、それを囲む様に案内窓口等がある。食事や酒も飲める店もあるので相変わらず賑わっている。
ここで仲間を求める者や現在の状況を確認する者や討伐依頼等を受ける者。
いろんな所からいろんな種族が集まるこの空間が俺は好きだ。

「相変わらず、いろんな依頼が張り出されてるな。大手を振って俺達も依頼を受けたいぜ」
「フッ 確かに俺たちは手紙を届ける為に最下層まで行くが、配達を邪魔するモンスター共を倒すのも仕事の内ではないか?」
「違いない♪ゲットできる素材や金目の物はボーナスだ!」2人でニヤリと笑う。
「とりあえず、金目になりそうな案件はチェックしておこう」とニコニコ顔でメモ書きする。いかん!笑顔が次から次へと溢れてしまう。

「そんなに簡単に行くかの?
何やらダンジョン内に不穏な動きがあるみたいじゃぞ?」とトム爺が合流した。

「不穏な動きだって?」
「うむ。さっき配達先でいろいろ話を聞いたんじゃが、最下層付近に生息してるモンスターが20階層付近でも目撃されたそうじゃ」
「変な話だな?モンスター達は縄張り意識が強いから自分のテリトリーを離れたりする事はほとんど無いはずだぜ?」

「何か、最下層で居られなくなった理由ができたって事か?」
口元に手を当て神妙な顔をするナルシス。

ガチャーンッッ!!

突然、飲食スペースの方でガラスや皿が割れる音が鳴り響く。
「この野郎!ケンカ売ってんのか!?」と、屈強なドワーフの戦士が相手につかみ掛かろうとしてる。
トカゲの様な姿の相手は「ほう?俺に手を出す事はどういう事か、わかってるんだろうな?」と躊躇なく剣を抜く。
リザードマンだ。

リザードマンは他の種族と違って好戦的な種族だ。何かとイチャモンを付けては喧嘩をふっかける。
正直、俺は好きじゃない。
「ケンカだ。場所を変えよう」と外に出る事にした。

「まったく。リザードマンはどこでも喧嘩をしよるな。関わらん事が一番じゃ」
「奴らは実に美しくない戦いをする。俺も嫌いだ」

「それにしても意外じゃの?リオンが喧嘩に混ざりに行かんとは」
「どーもね。アイツらのは喧嘩じゃなくて殺し合いになるからな。近寄らないのが一番さ」
「フッ 冒険前の殺し合いは美しくない」と髪をかきあげるナルシス。
と、その時!!

「ジャーンッッッ!!!!」

唐突に着飾ったアローラとギャルが俺達の前に現れた!!
さっきまでの冒険者の格好では無くてセレブの様なサングラスやモフモフなコートにスカート。それに高そうな靴。
そこにヘリオスマウスの耳のカチューシャを頭に付けてる。

「な、なんだ!?お前達のかっこうは!?」さすがの俺も驚いた!!

「いや~っ なんかアッチのショップでね?ブランド店もあってさ~
めっちゃかわいいの売ってて、ギャルと一緒に試着とかしてたらめちゃくちゃ似合うじゃん?2人とも」
「だからウチらでオソロのコーデで決めちゃわねー?ってノリで買っちゃったわけェ!!キャハハハ!♪」と両手に大量にバッグや服等が入った紙袋を2人ともぶら下げて笑い合ってる。

「あ、そうそう!!ちゃーんとあんた達の服とかも買ったから!!特にリオンなんていつも似た様な服ばっかでしょ?
ほら?これ似合うでしょ?」となんだか高そうなオシャレなシャツを俺の体に合わせる。
「お、おい…」
「あ!リオンだーいじょうぶ♪ちゃーんとみんなの分のカチューシャも買ってるしィ!!」と、みんなの頭にカチューシャをはめて回るギャル。

「いや、話を聞けって!
その金はどっから出たんだ?」
「いやいや、セシリーさんからの前払いの支度金あったじゃん!久しぶりの冒険だし、オシャレに決め込みたいでしょ!?必要経費って事であとはよろしく~♪」と満面の笑みのアローラ。

「いくらしたんだ!?」

「お値段はこちらになります~♪」と手をにぎにぎしてるスーツ姿の店員がスッと現れ俺に請求書を渡した。

「!!!!!」
「バカッ!!限度ってものがあるだろっ!!!!」
チラッとトム爺を見る。
「うむ。あの支度金なんじゃが、旅の経費やカブの新しいパーツを作る素材を買ったり、お前達の食糧やその他もろもろの物を買ったら、意外とあんまり残っておらん」

そろりと請求書をトム爺に見せる。

「……お前たち。しばらくはタダ働きになりそうじゃの?」と、顔をひきつらせながら答えた。

「…え?…うそ?… お金無いの?…」
どんどん顔が青ざめていくアローラ。
「アロっち…?」

コクリと全員で頷く。

「アバ…アバババ…
アバババババババッッッ!!」と泡を吹いて 

ドターン!!
と、倒れるアローラ!!

「ア、ア、…アロっちッッッ!!!」
ヒィーって頬を顔で挟むギャル。

こっちがヒィーッッッだよっ!!
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