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イケメンの弊害

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異世界転移して早三か月経った。

後の一人暮らしを考えて、自分のことはするように心がけている。

けれど、すっかり女官達とは仲良しなので、楽しくお話しするついで、身体を磨かれている。
異世界の俺は、髪の毛も艶々でどこかのお坊ちゃま感がある。
可愛い可愛いと周りからべた褒めされているせいで、俺って可愛い。と。そのまま鏡を見て、「かわいないやん!」とセルフボケツッコミをする日々。

…………いけない。本当の自分を見失いかけている。



「ラル、そろそろ新しく住む住居の件、考えて欲しいんだ……」

ラルのベッドで二人裸で寝ころんでいた。先ほどまで呪いの解除に励んだおかげでラルはいつも以上に肌が艶々して色っぽい。汗でべちゃべちゃしているのにお構いなしに密着してくる。

「ん……、住居?」
「うん」

ピロートークにお願いごとを持ってくる俺は小賢しい。大抵の頼みが通りやすくなるだろうと踏んでいると、想定通り「いいよ」と言ってくれる。

「いいの?」
「大好きなアラタの願いなら勿論だよ。どんな家に住みたいの? 家具は? あ、待ってね、家具の商品目録があるから一緒に見ようか」

何故、家具の商品目録がラルの部屋にあるのだろう。
家具を眺めるのが趣味なのだろうか。

ベッドに目録を広げる。この世界は設計図よりのイラストで商品紹介されている。ラルが、あれもこれも俺に似合いそうだねって隣で言う。


「俺、あんまり分かんないなぁ」
「じゃ、今度家具屋へ行って一緒に職人の話を聞こうか」
「うん! へへへ」
「ふふ」

笑い合っているのに、ラルのエクスカ〇バーが力を取り戻し始める。——……う、ぁ……勃起しちゃったものは仕方ない、よな。




朝、目を覚まし、横で寝ているラルの腕を退けて部屋をそそくさと出た。

昨日は、新生活の予感にワクワクしたけれど、スッキリ頭で思い返すと、平民の住居の家具を王子様が選ぶのっておかしいだろう。あと、今更だけど王子に腕枕されてグースカ寝ている俺って……。

ブルブルと首を振って、家具は自分で選ぶことにした。



新生活を送るためには準備がいる。

城外で暮らすための一般常識、教養。俺には先生が付けられた。

そして、書類面だ。異世界の俺がこちらの住人になるには申請がいる。5年間、保護者が必要らしい。
俺は未成年じゃないけれど立場的には未成年的な感じか。

「保護者に私の名を使って。ここに母印を押して」
「一時的にラルの家族になるってことか」
「結婚しちゃうみたいだね」

ラルのジョークに、周りもハハハってホワンな雰囲気に包まれる。

「……おかしいだろ?」

違和感有りすぎだろう。いや、こちらの世界では保護者が必要なんだから…………うん。
なんだか俺の方が間違っている気がしてきた。

「じゃ、この書類は大事に預かるね。……それと、暫く城を離れるよ。いざこざに巻き込まれたんだ。住居が出来上がるまでには解決するから」

「うん。気を付けてな」


そのいざこざというのは、王位継承権のことだった。

ラルは第一王子だけど、呪いをかけられた時に王位継承権を第三王子に譲っている。いつ呪いが解けるか分からなかったからだ。
だけど、呪いが解けた今、王にはラルが相応しいと言う周囲の者が多く、それを鎮めるために説得が必要だそうだ。

ラルは王の素質も人気も充分ある。ラルを王様にしたい周囲の気持ちは分からなくもない。

もし、王様になれば、かなり遠い存在になるなぁ。




ラルが城を空けて、5日目の夜だ。

なんだか、ムラムラした気分になり両手をズボンに突っ込んでオナニーをした。

ん?

陰茎を擦るけれど、気分が乗らない。変だ……だけど、その理由がすぐに分かった。

異世界に召喚されてから前の刺激だけで射精していなかったのだ。前と後ろ、むしろ、ここ最近は後ろの刺激だけでイけるようになっていた。

なるほど。前を擦って射精することに違和感を覚える筈だ。チンコに意識を集中させる。

しかし、手を後ろに持っていきたくて仕方がない。

「…………アナニーしたい」

それで、アナニーした。初めてのアナニーは微妙。
射精はしたけれど、ラルとするのと比べると全く満足感が違う。

しかも指を突っ込みながら「ラル」「ラル」と中指と薬指のことをラル呼びしていた。

オナニー後、賢者タイムに目を閉じた。
オナニーをしていただけなのに、とんでもないことに気づいてしまった。


———男好きになってしまったんだ。

「男かぁ~」


男のもやんとした顔を想像した。むさくるしい男。でも、まぁ、ラルほどの男はこの世にはいないので、全ての人間がもやんとした男だろう。

もやんとした男にキスをする。もやんとした男の肩に腕を回す。もやんとした男のチンコを尻に入れる。もやんもやんと……。

「……うっぷ」

気分が悪くなってきた。超絶イケメンに抱かれ慣れていたから想像が辛い。

このままラルと離れて平気なのか……? でも、ラルは王様になるかもしれない。そうでなくとも呪いがなくなったら俺など必要ない。
今後もやってくるだろう、この欲にどう向き合えばいいのだろう。これは大きな課題だ。
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