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第2章 白狼と秘密の練習
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「隊長~、それでどうなんですか?」
「どうって、何がだ。」
顔が少し赤いマックスがガイアスの横に座り、そのさらに横にはケニーが心配そうに控えている。
「分かってるでしょ!隊長の恋人のことっスよ!ラブラブなんスか?」
「ああ。」
「あ!やっぱりいるんですね!いつもはぐらかすのに…言質は取りましたからね!」
顔を近づけてくるマックスが大声を出す。ケニーは、「こらこら」とその腕を後ろに引いて止めている。
「どんな方なんですか?」
ワーワーとうるさいマックスの後ろから、ケニーが尋ねる。
「素敵な人だ。」
「ちょっと!ざっくりしすぎっス!もっと具体的に…てか、紹介して下さいよ!」
マックスがあまりに大きい声で言うので、近くにいた隊員も「なんだなんだ…」と聞き耳を立てる。
「ていうか、同じ隊として挨拶させてくださいっス~!」
「おい…。」
「俺、隊長の恋人見るまで、ここから動きません!」
謎の脅迫でガイアスを脅すマックス。
他の者も、何の話をしていたのか分かったようで、皆興味深々だ。
「え、隊長の好い人が挨拶来るのか?」
「いつだって言ってた?」
ボソボソと周りで話す声が聞こえる。
ガイアスが、「はぁ…」と息をつく。
落ち着いたら、副隊長のジェンを始め同じ隊の者数名には紹介するつもりでいた。
(前からミアは自衛隊の本部に来たがっていたからな。)
『本格的な剣の訓練所を見てみたい』と前から言っていたミアだ。
ついでなら訓練中の様子も見せてあげたい、ガイアスはずっとその機会を伺っていた。
「…あちらが良いと言えばな。」
「え、本当っスか?!やった~!第4隊隊長にも報告しないと!」
飲み会代をもらった分の働きはした、とマックスはご機嫌だ。
「もし失礼なことをしたら…他の隊に飛ばすからな。」
「了解っス~!」
軽く返事をする部下を見る。
明日ミアに聞かなければ…と思いつつ、ガイアスは目の前の酒に口をつけた。
・・・・・
主人がマックスとケニーに連れられ親睦会へ向かってすぐ、ガイアスの屋敷では使用人による会議が行わていた。
「明日、ミア様がこの屋敷にお泊りになられます。」
メイド長が皆に告げる。
「ガイアス様と交際を始められて初めての正式な訪問となります。全員でお出迎えをするように。そこでミア様直々に私達にご挨拶をしていただけるそうです。」
夜にガイアスの部屋に何度か転移したり、ガイアスを玄関まで迎えに行ったりはしていたミアだが、時間がなかなか取れず、屋敷の者達へ正式な挨拶ができていなかった。
「楽しみですわ。」
メイドの1人がうっとり、と目をつむって明日を待ち望んでいる。
「厨房は何か足りないモノがあれば買い出しをお願いします。」
「いや、大丈夫だ。」
「料理長、ミア様がいつ来ても良いように、最近肉のストック増やしてるから全然平気ですよ!」
「…余計なこと言うな。」
料理見習いの青年の頭にゲンコツが落ちる。
「ゔッ…!事実なのに~。」
涙目で青年が料理長を見る。
「お二人は明日、剣の練習を終えられてから屋敷に戻られます。お出迎えをし、お仕度を部屋で整えられたら食堂へ降りてこられますので、再度そちらに集まってください。」
「「「「「「「はい。」」」」」」」
使用人は明るい声で返事をし、会議は無事終わった。
皆、ミアの訪問を心から楽しみにしていた。
・・・・・
カルバンとリースとの夕食が終わり、その後は何も予定が無いというリースを自室に連れていくミア。
「何かあるの?」
「俺もちょっとリースに話があるんだ。」
部屋に入って扉を閉めると、椅子に座るようリースに促し、自分も目の前にある椅子に腰かける。
「あのさ…リース、一緒に勉強しないか?」
「え?」
「それで私を呼んだんですか。ミア様だけでなく、リース様までとは。」
ミアとリースはイリヤの前でお行儀よく座っていた。
部屋に行くと「セックスの勉強をしないか?」と言われ、最初はびっくりしていたリースだったが、ミアが『ガイアスに聞いたものと自分達の性の知識が全く違う』ことを説明すると、「自分も勉強したい。」とリースは首を縦に振った。
「ごめんイリヤ!でも俺、急ぎなんだ!」
「ちょっと…生々しいこと言わないでくださいよ。はぁ~、でもたしかにお二人は年齢に対してそういった知識が不足しています。」
「だろ?だからお願いします!」
「私がそんな授業を開いたとあったら、カルバン様に何を言われるか…。ちょっとお待ち下さい。」
消えたイリヤは、数秒後にすぐ戻ってきた。手には厚い本を抱えている。
「これは図書室にある本です。こちら2冊の内容をすべて読めば、しっかりと学んだことになります。」
「ありがと、イリヤ!」
「ありがとう。」
「ミア様は、特にこの章を読んでおくように。」
丁寧に付箋が付けられている。
「では、何か分からないことがあれば呼んでください。」
「はーい。」
「はい。」
イリヤが用意してくれた本を2人で囲む。
ベッドに胡坐をかいて座るミアと、その横でペタンと足を折りたたんで本を覗き込むリース。
『愛とセックス』『気持ちいいセックスとは?』
(俺が学びたい内容がタイトルに…。)
ゴクリ…と喉を鳴らすと、ミアは口を開いた。
「よし、開くぞ。」
「う、うん。」
「え、ミア!見てこれ。本当に…?」
「うわ!嘘だろ…。」
2人はベッドの上で、声をあげたり後ろにひっくり返ったりと大忙しだった。
2冊目をやっと読み終わる頃には、すっかり夜も更けていた。
眠るのが早いミアにとっては寝ている時間だ。
「はぁ、なんか…凄かったね。」
「昔、一緒に習ったやつとはずいぶん違うけど、これが真実みたいだな。」
リースが、「うん。」と大きく頷く。
「じゃあ、俺は明日…試してくるよ。」
(ガイアスは、なかなか『練習』を始める気がないみたいだし…ここは俺からいかなきゃだよな。)
「え!いきなりで大丈夫?」
「うん、もう知識は頭に入ったからいけそうだ。」
「ミア、かっこいい…ッ!」
深夜のテンションでおかしくなっている2人は、手をがっちりと握ってから別れた。
「どうって、何がだ。」
顔が少し赤いマックスがガイアスの横に座り、そのさらに横にはケニーが心配そうに控えている。
「分かってるでしょ!隊長の恋人のことっスよ!ラブラブなんスか?」
「ああ。」
「あ!やっぱりいるんですね!いつもはぐらかすのに…言質は取りましたからね!」
顔を近づけてくるマックスが大声を出す。ケニーは、「こらこら」とその腕を後ろに引いて止めている。
「どんな方なんですか?」
ワーワーとうるさいマックスの後ろから、ケニーが尋ねる。
「素敵な人だ。」
「ちょっと!ざっくりしすぎっス!もっと具体的に…てか、紹介して下さいよ!」
マックスがあまりに大きい声で言うので、近くにいた隊員も「なんだなんだ…」と聞き耳を立てる。
「ていうか、同じ隊として挨拶させてくださいっス~!」
「おい…。」
「俺、隊長の恋人見るまで、ここから動きません!」
謎の脅迫でガイアスを脅すマックス。
他の者も、何の話をしていたのか分かったようで、皆興味深々だ。
「え、隊長の好い人が挨拶来るのか?」
「いつだって言ってた?」
ボソボソと周りで話す声が聞こえる。
ガイアスが、「はぁ…」と息をつく。
落ち着いたら、副隊長のジェンを始め同じ隊の者数名には紹介するつもりでいた。
(前からミアは自衛隊の本部に来たがっていたからな。)
『本格的な剣の訓練所を見てみたい』と前から言っていたミアだ。
ついでなら訓練中の様子も見せてあげたい、ガイアスはずっとその機会を伺っていた。
「…あちらが良いと言えばな。」
「え、本当っスか?!やった~!第4隊隊長にも報告しないと!」
飲み会代をもらった分の働きはした、とマックスはご機嫌だ。
「もし失礼なことをしたら…他の隊に飛ばすからな。」
「了解っス~!」
軽く返事をする部下を見る。
明日ミアに聞かなければ…と思いつつ、ガイアスは目の前の酒に口をつけた。
・・・・・
主人がマックスとケニーに連れられ親睦会へ向かってすぐ、ガイアスの屋敷では使用人による会議が行わていた。
「明日、ミア様がこの屋敷にお泊りになられます。」
メイド長が皆に告げる。
「ガイアス様と交際を始められて初めての正式な訪問となります。全員でお出迎えをするように。そこでミア様直々に私達にご挨拶をしていただけるそうです。」
夜にガイアスの部屋に何度か転移したり、ガイアスを玄関まで迎えに行ったりはしていたミアだが、時間がなかなか取れず、屋敷の者達へ正式な挨拶ができていなかった。
「楽しみですわ。」
メイドの1人がうっとり、と目をつむって明日を待ち望んでいる。
「厨房は何か足りないモノがあれば買い出しをお願いします。」
「いや、大丈夫だ。」
「料理長、ミア様がいつ来ても良いように、最近肉のストック増やしてるから全然平気ですよ!」
「…余計なこと言うな。」
料理見習いの青年の頭にゲンコツが落ちる。
「ゔッ…!事実なのに~。」
涙目で青年が料理長を見る。
「お二人は明日、剣の練習を終えられてから屋敷に戻られます。お出迎えをし、お仕度を部屋で整えられたら食堂へ降りてこられますので、再度そちらに集まってください。」
「「「「「「「はい。」」」」」」」
使用人は明るい声で返事をし、会議は無事終わった。
皆、ミアの訪問を心から楽しみにしていた。
・・・・・
カルバンとリースとの夕食が終わり、その後は何も予定が無いというリースを自室に連れていくミア。
「何かあるの?」
「俺もちょっとリースに話があるんだ。」
部屋に入って扉を閉めると、椅子に座るようリースに促し、自分も目の前にある椅子に腰かける。
「あのさ…リース、一緒に勉強しないか?」
「え?」
「それで私を呼んだんですか。ミア様だけでなく、リース様までとは。」
ミアとリースはイリヤの前でお行儀よく座っていた。
部屋に行くと「セックスの勉強をしないか?」と言われ、最初はびっくりしていたリースだったが、ミアが『ガイアスに聞いたものと自分達の性の知識が全く違う』ことを説明すると、「自分も勉強したい。」とリースは首を縦に振った。
「ごめんイリヤ!でも俺、急ぎなんだ!」
「ちょっと…生々しいこと言わないでくださいよ。はぁ~、でもたしかにお二人は年齢に対してそういった知識が不足しています。」
「だろ?だからお願いします!」
「私がそんな授業を開いたとあったら、カルバン様に何を言われるか…。ちょっとお待ち下さい。」
消えたイリヤは、数秒後にすぐ戻ってきた。手には厚い本を抱えている。
「これは図書室にある本です。こちら2冊の内容をすべて読めば、しっかりと学んだことになります。」
「ありがと、イリヤ!」
「ありがとう。」
「ミア様は、特にこの章を読んでおくように。」
丁寧に付箋が付けられている。
「では、何か分からないことがあれば呼んでください。」
「はーい。」
「はい。」
イリヤが用意してくれた本を2人で囲む。
ベッドに胡坐をかいて座るミアと、その横でペタンと足を折りたたんで本を覗き込むリース。
『愛とセックス』『気持ちいいセックスとは?』
(俺が学びたい内容がタイトルに…。)
ゴクリ…と喉を鳴らすと、ミアは口を開いた。
「よし、開くぞ。」
「う、うん。」
「え、ミア!見てこれ。本当に…?」
「うわ!嘘だろ…。」
2人はベッドの上で、声をあげたり後ろにひっくり返ったりと大忙しだった。
2冊目をやっと読み終わる頃には、すっかり夜も更けていた。
眠るのが早いミアにとっては寝ている時間だ。
「はぁ、なんか…凄かったね。」
「昔、一緒に習ったやつとはずいぶん違うけど、これが真実みたいだな。」
リースが、「うん。」と大きく頷く。
「じゃあ、俺は明日…試してくるよ。」
(ガイアスは、なかなか『練習』を始める気がないみたいだし…ここは俺からいかなきゃだよな。)
「え!いきなりで大丈夫?」
「うん、もう知識は頭に入ったからいけそうだ。」
「ミア、かっこいい…ッ!」
深夜のテンションでおかしくなっている2人は、手をがっちりと握ってから別れた。
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