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邪魔者達に敗北
「ふぁ~、長いこと浸かっちゃいましたね。」
「あいつら、騒ぐだけ騒いで先にさっさと上がってったな。」
同僚2人は俺達と遊んで気が済んだのか、これから夜の見回りがあるということで、ついさっき浴場を後にした。
俺とアックスは一応は着替えを済ませたが、髪がまだ濡れている状態だ。アックスはガシガシと自分の髪の毛を拭いた後、「セラも拭かないと。」と言って俺の頭に掛かるタオルに手を伸ばした。
しかしーー…
「セラ!!なんでここに……!」
「あ、オリア!と先輩。」
脱衣所の入り口には、オリアが驚いた顔でこちらを見ている。横にはオリアの隣席の先輩がおり、どうやら仕事終わりに2人でここへやって来たようだ。
オリアは俺の髪からしずくが落ちているのを見ると、急いで駆け寄ってきた。
「髪が濡れてるじゃないか!乾かさずに帰るつもりだろう。」
「違うよ!今から拭こうと思ってたの。」
「嘘をつくな。子どもは皆そう言うんだ。」
「だから、俺は大人だから違うって!」
オリアは俺の頭をタオル越しに撫でるとわしわしと手を動かし始めた。
「ほら、拭いてやる。」
「ちょっと、自分でするよ。」
「次回からは自分でしろ。今日は俺がやってやる。」
「恥ずかしいって……。」
そう言ってはみるものの、お兄ちゃんモードに入ったオリアが簡単に折れるはずもなく……俺は彼の気が済むまでじっとしていた。
「さ、もういいぞ。」
「……ありがと、オリア。」
ありがたくはないが、一応お礼は言っておく。オリアは満足そうに笑うと、先輩と共に奥へと歩いて行った。
「アックス、お待たせしました。」
「いや……気にするな。」
アックスは俺とオリアの関係性がいまいち把握できてないのか、複雑な表情をしていた。
(えっと、彼は俺のことが妹に見える病気なんです。)
俺は説明するのも難しく、はははと笑って誤魔化した。
それから、次の仕事までまだ時間があるというアックスは、休憩室へ寄ろうと誘ってきた。
案内された部屋は、フローリングにカーペットが敷いてあり、皆クッションを枕に思い思いの体勢で休んでいる。側には売店もあり、こうして見ると本当にあちらの世界の温泉施設のようだった。
「セラ、飲み物でも買ってこよう。何がいい、」
「あれ?……セラ君じゃん!」
アックスの言葉に被せて、誰かの声がした。近づいてくる男3人を見ると、初日の武器管理課で出会った騎士達だった。
「お疲れ様です。」
「セラ君もお疲れ。もしかして、今日はここで職場体験中?」
「いえ、今日はもう終わって、お風呂に入ってきたんです。」
「そうなの?じゃあ喉渇いたでしょ。いつもシシルさんにはお世話になってるし、何か買ってあげ、………トロント様!」
俺に話し掛けてきた騎士は、後ろで影になっていたアックスに気付くと、ビシッと背筋を伸ばした。他の騎士達も同じポーズだ。
アックスが「直っていい。」と一言言うと、騎士達は腕を後ろに組んで、あちらの世界の学校でいう『休め』のポーズを取った。
「俺の事は構わなくていい。セラに話があるんだろう。」
「はい!……えっと、何か飲む?」
騎士のその言葉に、俺はコクリと頷いた。
売店では、3人が俺にいろいろと買い与えようとし、断るのが大変ではあったが、なんとか数点の品を受け取る。
「「またね~ 。」」
3人とはそこで別れ、座って待っているアックスの元へ急いで戻った。
「すみません、今日はお待たせしてばかりですね。」
「いや、大丈夫だが……セラは人気者だな。」
「そんなことないです。俺が慣れない場所にいるから、皆さん親切にしてくれるだけです。」
そう言って隣に座ると、さりげなくクッションを後ろに置かれる。そして湯冷めしてはいけないと、ブランケットも用意してあった。
(さすが人気No.1攻略キャラ!配慮が凄い。)
「ありがとうございます。あの、これ一緒にどうですか?」
俺は2つのジュースとつまめるお菓子を何個か袋の上に広げた。
「いいのか?」
「俺が買ったわけじゃないんですけどね。……アックスにって勝手に選んだんですが、いいですか?」
「ああ。俺の好みだ。」
一緒にいる時、彼はコーヒーやお茶はあまり好んで飲まないようだったので、俺は冷えたフルーツジュースを選んだ。
「俺の好きな味をよく知ってるな。」
「料理の好みだって知ってますよ。」
「俺もセラの好きなものなら分かるぞ。」
アックスが競うようにそう言う。子どものような態度におかしくなって、俺は自然に笑みが溢れた。
それから2人で寝沿り、他愛もない話で盛り上がっていると、アックスが俺の髪を撫でた。
「アックス?」
「セラ、明日からはここへ来ないんだな。」
「はい。でも、もしかしたら間違えて朝、騎士棟に来ちゃうかもしれないです。」
朝は寝ぼけていることも多いし、癖で騎士棟の門へと向かってしまいそうだ。
「来たらいい。」
「え?」
「セラさえ良ければ、騎士棟で働か、」
「え!!セラさん?!」
アックスが話す途中で、また誰かが自分を呼ぶ。この声はほぼ毎日聞いており、誰なのか見なくても分かる。そして、案の定駆け寄ってきたラルクが、隣にいるアックスを見てビシッと背筋を伸ばした。
「えっと……今日は、いろんな人に会いますね。」
俺がアックスに耳打ちして笑う。
「……そうだな。」
アックスはそう言いながら、溜息をついていた。
父が終わる時間まで大浴場で過ごす予定だったという彼に、俺も一緒に待とうかと提案したところ、パァアアと顔を明るくして喜んでいた。
アックスは仕事の時間が始まるようで、俺とラルクに軽く挨拶をして去っていき、残った俺達は、休憩室で寝転がって父の就業時間までの時間を過ごした。
父の仕事は夜の8時までらしく、時計を見ると良い時間だ。俺とラルクは父を迎えに大浴場のある施設を出た。
「いやー、びっくりしましたよ。なんでトロント様と大浴場にいたんですか?」
「仕事終わりに誘われたんです。」
「へぇ~、トロント様、セラさんのこと相当お気に入りですよね。」
「お気に入りっていうか、うん。そうだね。」
未来の恋人なのだと言っても、ラルクに不審がられるだろう。俺は黙って廊下を歩いた。
「あ、明かり点いてる。」
ラルクが少し早足になる。そんな姿を見ていると、父のことが本当に好きなのだと分かって微笑ましい。
扉の前に立ったラルクが武器管理課のドアをノックし先に入ると、中から「ラルクさん!」と父の嬉しそうな声がした。
(3日ぶりだから、2人とも夕食の時はテンション高いだろうな。)
ここ最近ラルクは夜勤が続き、父も仕事が立て込んでいたため2人は3日ぶりに会うのだ。俺はリビングで酒を飲んではしゃぐ2人を想像し、笑いながら中に入ろうとするが……「んッ」とラルクの声がした。チラッと覗くと父とラルクの顔が近い。どうやら父がキスをしたようだ。
「ちょ、シシルさん?!」
「ラルクさんが迎えに来てくれて嬉しくて。あの、嫌でした?」
「そんなわけッ!あっ、でも今は、」
「私達3日も会ってないんですよ。」
「あの、えっと、」
父からキスをされた嬉しさから、俺がいるから帰ろうと言い出せないでいるラルク。これではいつまで経っても帰れそうにない。
父が目を瞑り、ラルクが父の肩を掴んだ時、申し訳ないと思いつつ扉を開けた。
「……あの、父さん?」
「ッ!!!」
父はバッと顔を上げ、俺の姿を確認すると目をこれでもかと見開いた。
「えっと、続きは家でしてもらえる?」
「セラ????!!!!」
父は真っ赤な顔でラルクを突き飛ばし、彼はカウンターに勢いよくぶつかった。
「あいつら、騒ぐだけ騒いで先にさっさと上がってったな。」
同僚2人は俺達と遊んで気が済んだのか、これから夜の見回りがあるということで、ついさっき浴場を後にした。
俺とアックスは一応は着替えを済ませたが、髪がまだ濡れている状態だ。アックスはガシガシと自分の髪の毛を拭いた後、「セラも拭かないと。」と言って俺の頭に掛かるタオルに手を伸ばした。
しかしーー…
「セラ!!なんでここに……!」
「あ、オリア!と先輩。」
脱衣所の入り口には、オリアが驚いた顔でこちらを見ている。横にはオリアの隣席の先輩がおり、どうやら仕事終わりに2人でここへやって来たようだ。
オリアは俺の髪からしずくが落ちているのを見ると、急いで駆け寄ってきた。
「髪が濡れてるじゃないか!乾かさずに帰るつもりだろう。」
「違うよ!今から拭こうと思ってたの。」
「嘘をつくな。子どもは皆そう言うんだ。」
「だから、俺は大人だから違うって!」
オリアは俺の頭をタオル越しに撫でるとわしわしと手を動かし始めた。
「ほら、拭いてやる。」
「ちょっと、自分でするよ。」
「次回からは自分でしろ。今日は俺がやってやる。」
「恥ずかしいって……。」
そう言ってはみるものの、お兄ちゃんモードに入ったオリアが簡単に折れるはずもなく……俺は彼の気が済むまでじっとしていた。
「さ、もういいぞ。」
「……ありがと、オリア。」
ありがたくはないが、一応お礼は言っておく。オリアは満足そうに笑うと、先輩と共に奥へと歩いて行った。
「アックス、お待たせしました。」
「いや……気にするな。」
アックスは俺とオリアの関係性がいまいち把握できてないのか、複雑な表情をしていた。
(えっと、彼は俺のことが妹に見える病気なんです。)
俺は説明するのも難しく、はははと笑って誤魔化した。
それから、次の仕事までまだ時間があるというアックスは、休憩室へ寄ろうと誘ってきた。
案内された部屋は、フローリングにカーペットが敷いてあり、皆クッションを枕に思い思いの体勢で休んでいる。側には売店もあり、こうして見ると本当にあちらの世界の温泉施設のようだった。
「セラ、飲み物でも買ってこよう。何がいい、」
「あれ?……セラ君じゃん!」
アックスの言葉に被せて、誰かの声がした。近づいてくる男3人を見ると、初日の武器管理課で出会った騎士達だった。
「お疲れ様です。」
「セラ君もお疲れ。もしかして、今日はここで職場体験中?」
「いえ、今日はもう終わって、お風呂に入ってきたんです。」
「そうなの?じゃあ喉渇いたでしょ。いつもシシルさんにはお世話になってるし、何か買ってあげ、………トロント様!」
俺に話し掛けてきた騎士は、後ろで影になっていたアックスに気付くと、ビシッと背筋を伸ばした。他の騎士達も同じポーズだ。
アックスが「直っていい。」と一言言うと、騎士達は腕を後ろに組んで、あちらの世界の学校でいう『休め』のポーズを取った。
「俺の事は構わなくていい。セラに話があるんだろう。」
「はい!……えっと、何か飲む?」
騎士のその言葉に、俺はコクリと頷いた。
売店では、3人が俺にいろいろと買い与えようとし、断るのが大変ではあったが、なんとか数点の品を受け取る。
「「またね~ 。」」
3人とはそこで別れ、座って待っているアックスの元へ急いで戻った。
「すみません、今日はお待たせしてばかりですね。」
「いや、大丈夫だが……セラは人気者だな。」
「そんなことないです。俺が慣れない場所にいるから、皆さん親切にしてくれるだけです。」
そう言って隣に座ると、さりげなくクッションを後ろに置かれる。そして湯冷めしてはいけないと、ブランケットも用意してあった。
(さすが人気No.1攻略キャラ!配慮が凄い。)
「ありがとうございます。あの、これ一緒にどうですか?」
俺は2つのジュースとつまめるお菓子を何個か袋の上に広げた。
「いいのか?」
「俺が買ったわけじゃないんですけどね。……アックスにって勝手に選んだんですが、いいですか?」
「ああ。俺の好みだ。」
一緒にいる時、彼はコーヒーやお茶はあまり好んで飲まないようだったので、俺は冷えたフルーツジュースを選んだ。
「俺の好きな味をよく知ってるな。」
「料理の好みだって知ってますよ。」
「俺もセラの好きなものなら分かるぞ。」
アックスが競うようにそう言う。子どものような態度におかしくなって、俺は自然に笑みが溢れた。
それから2人で寝沿り、他愛もない話で盛り上がっていると、アックスが俺の髪を撫でた。
「アックス?」
「セラ、明日からはここへ来ないんだな。」
「はい。でも、もしかしたら間違えて朝、騎士棟に来ちゃうかもしれないです。」
朝は寝ぼけていることも多いし、癖で騎士棟の門へと向かってしまいそうだ。
「来たらいい。」
「え?」
「セラさえ良ければ、騎士棟で働か、」
「え!!セラさん?!」
アックスが話す途中で、また誰かが自分を呼ぶ。この声はほぼ毎日聞いており、誰なのか見なくても分かる。そして、案の定駆け寄ってきたラルクが、隣にいるアックスを見てビシッと背筋を伸ばした。
「えっと……今日は、いろんな人に会いますね。」
俺がアックスに耳打ちして笑う。
「……そうだな。」
アックスはそう言いながら、溜息をついていた。
父が終わる時間まで大浴場で過ごす予定だったという彼に、俺も一緒に待とうかと提案したところ、パァアアと顔を明るくして喜んでいた。
アックスは仕事の時間が始まるようで、俺とラルクに軽く挨拶をして去っていき、残った俺達は、休憩室で寝転がって父の就業時間までの時間を過ごした。
父の仕事は夜の8時までらしく、時計を見ると良い時間だ。俺とラルクは父を迎えに大浴場のある施設を出た。
「いやー、びっくりしましたよ。なんでトロント様と大浴場にいたんですか?」
「仕事終わりに誘われたんです。」
「へぇ~、トロント様、セラさんのこと相当お気に入りですよね。」
「お気に入りっていうか、うん。そうだね。」
未来の恋人なのだと言っても、ラルクに不審がられるだろう。俺は黙って廊下を歩いた。
「あ、明かり点いてる。」
ラルクが少し早足になる。そんな姿を見ていると、父のことが本当に好きなのだと分かって微笑ましい。
扉の前に立ったラルクが武器管理課のドアをノックし先に入ると、中から「ラルクさん!」と父の嬉しそうな声がした。
(3日ぶりだから、2人とも夕食の時はテンション高いだろうな。)
ここ最近ラルクは夜勤が続き、父も仕事が立て込んでいたため2人は3日ぶりに会うのだ。俺はリビングで酒を飲んではしゃぐ2人を想像し、笑いながら中に入ろうとするが……「んッ」とラルクの声がした。チラッと覗くと父とラルクの顔が近い。どうやら父がキスをしたようだ。
「ちょ、シシルさん?!」
「ラルクさんが迎えに来てくれて嬉しくて。あの、嫌でした?」
「そんなわけッ!あっ、でも今は、」
「私達3日も会ってないんですよ。」
「あの、えっと、」
父からキスをされた嬉しさから、俺がいるから帰ろうと言い出せないでいるラルク。これではいつまで経っても帰れそうにない。
父が目を瞑り、ラルクが父の肩を掴んだ時、申し訳ないと思いつつ扉を開けた。
「……あの、父さん?」
「ッ!!!」
父はバッと顔を上げ、俺の姿を確認すると目をこれでもかと見開いた。
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