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ダメ人間と海 ②
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都市部を進んでいると徐々に建物の高さが低くなってくる。
流れる川の幅も広くなり、海の匂いが漂い出した。
真夏の朝のムワッとした熱気を浴びながら、目的もなく海に向かう。
「はあ、コンビニめっちゃ涼しい~。生き返るわ」
「ほら、環くん立ち止まってないで、コーヒー買うんでしょ?はい、これ」
そういって、日向はドリンクコーナーからコーヒーを取ってきて環に渡す。
「おお、さんきゅ。そうそう、これこれ。よく好きなやつわかったな」
「環くんのことだからどうせ、ブラックかなって。誰も聞いてないのに、眠気覚ましに飲んでるだけって言いながら、ブラック飲んでる自分かっけー、って思ってそうだなって。」
「つらいんだけど...。コンビニでコーヒー買っただけでそんな言われることある?」
「じゃあ、ブラックが本当に好きなの?」
「...」
日向に言われたことに自覚があり、恥ずかしくなった環はうつむきながらカフェラテを取ってきた。
「素直でよろしい!」
再び原付きでノロノロと走り出す。
名古屋港に近づき、あたりは工業地帯の様相を帯びてきた。
「この先に海浜公園みたいなところがあるらしいから、とりあえずそこ向かうか」
「そうしますか」
夏休み中ではあるが、工業地帯の奥の方にあるちっぽけな公園には誰もおらず、貸し切りの状態だった。
「海だ!あんまりきれいじゃないけど、海だ!」
「都会の海だからなー。透き通ってはないな。」
「まあ、一旦昼飯にしようぜ」
そういって、コンビニで買ったおにぎりを取り出す環に対して、海に来てはしゃいでいる日向は大げさなジェスチャーをしながら話しかける。
「おいおい、正気かブラザー?買ったものをただ食べる、いつからそんなつまんねー男になっちまったんだよ...。そんな姿を見たら母さんも悲しむぜ?」
「留年で俺らの母さんはすでに悲しんでるけどな...」
「「........」」
波の打ち付ける音と、工場の機械音だけがきこえる。
しばしの静寂が公園を包みこんだ。
「釣りでもするか.....!」
「そ、そうだね!釣りしよう!」
「だよな!せっかく海に来たんだし、自分たちの食料は自分たちで調達する、それが人間ってもんだ!」
「そのとおりだよ!」
無理やり気持ちを立て直した二人は流れで釣りをすることになった。
最近は100円ショップでも釣り道具が売られており、ちょっと遊ぶくらいならそれで十分に釣りを楽しめる。
以前に何度か釣りの経験のあった環の主導のもと一通りの釣り道具を買い揃え、再び公園に戻ってきた。
港からせわしなく出港する貨物船を横目に、誰もいない公園でのんびりと糸を垂らす。
昼時になり暑くはなってきたが、幸い大きな木の陰に入ることができてそこまでではない。
やりたいことも、夢も希望もなくて。
何もかもうまくいかなくて、失敗ばかりな人生で、
親に迷惑をかけながら、毎日を惰性で生きているクズ二人だけれど。
それでも、こうして二人並んでくだらない話をしているこの時間だけは間違いではないのだろう。
流れる川の幅も広くなり、海の匂いが漂い出した。
真夏の朝のムワッとした熱気を浴びながら、目的もなく海に向かう。
「はあ、コンビニめっちゃ涼しい~。生き返るわ」
「ほら、環くん立ち止まってないで、コーヒー買うんでしょ?はい、これ」
そういって、日向はドリンクコーナーからコーヒーを取ってきて環に渡す。
「おお、さんきゅ。そうそう、これこれ。よく好きなやつわかったな」
「環くんのことだからどうせ、ブラックかなって。誰も聞いてないのに、眠気覚ましに飲んでるだけって言いながら、ブラック飲んでる自分かっけー、って思ってそうだなって。」
「つらいんだけど...。コンビニでコーヒー買っただけでそんな言われることある?」
「じゃあ、ブラックが本当に好きなの?」
「...」
日向に言われたことに自覚があり、恥ずかしくなった環はうつむきながらカフェラテを取ってきた。
「素直でよろしい!」
再び原付きでノロノロと走り出す。
名古屋港に近づき、あたりは工業地帯の様相を帯びてきた。
「この先に海浜公園みたいなところがあるらしいから、とりあえずそこ向かうか」
「そうしますか」
夏休み中ではあるが、工業地帯の奥の方にあるちっぽけな公園には誰もおらず、貸し切りの状態だった。
「海だ!あんまりきれいじゃないけど、海だ!」
「都会の海だからなー。透き通ってはないな。」
「まあ、一旦昼飯にしようぜ」
そういって、コンビニで買ったおにぎりを取り出す環に対して、海に来てはしゃいでいる日向は大げさなジェスチャーをしながら話しかける。
「おいおい、正気かブラザー?買ったものをただ食べる、いつからそんなつまんねー男になっちまったんだよ...。そんな姿を見たら母さんも悲しむぜ?」
「留年で俺らの母さんはすでに悲しんでるけどな...」
「「........」」
波の打ち付ける音と、工場の機械音だけがきこえる。
しばしの静寂が公園を包みこんだ。
「釣りでもするか.....!」
「そ、そうだね!釣りしよう!」
「だよな!せっかく海に来たんだし、自分たちの食料は自分たちで調達する、それが人間ってもんだ!」
「そのとおりだよ!」
無理やり気持ちを立て直した二人は流れで釣りをすることになった。
最近は100円ショップでも釣り道具が売られており、ちょっと遊ぶくらいならそれで十分に釣りを楽しめる。
以前に何度か釣りの経験のあった環の主導のもと一通りの釣り道具を買い揃え、再び公園に戻ってきた。
港からせわしなく出港する貨物船を横目に、誰もいない公園でのんびりと糸を垂らす。
昼時になり暑くはなってきたが、幸い大きな木の陰に入ることができてそこまでではない。
やりたいことも、夢も希望もなくて。
何もかもうまくいかなくて、失敗ばかりな人生で、
親に迷惑をかけながら、毎日を惰性で生きているクズ二人だけれど。
それでも、こうして二人並んでくだらない話をしているこの時間だけは間違いではないのだろう。
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