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第25話 光刃の姫と会う

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 王都を出てすぐの場所で王国の軍と冒険者ギルドのメンバーが合流した。

 リンネさんに手配してもらい、俺達は精鋭が集まる部隊に配置された。

「私がいるのは場違いな気がします」

 キョロキョロと周りを見回してアネッサさんは縮こまっている。

「へっ、びびってんじゃねえよ」

 逆にカノンはいつも通りでもうちょっと緊張しろと思う。

「いざという時は私が守りますから安心してください」

 リンネさんは本当に頼もしいね。

「なんでお前達がここにいる」

 声のした方を見ると、キッド達レッドデビルズのメンバーがいた。

 そう言えば、こいつらランクAだからここにいてもおかしくないのか。

 あんなことがあれば話しかけるのを避けるのが普通だと思うんだが、こいつらは普通の神経をしていないんだったな。

 他のメンバーを見ると、ロッキーとエロインは俺を睨んでいて、クーフィアは笑顔で手を振っている。

 本当にわかりやすいなこいつら。

「エロインもクーフィアも中々よかったから、また頼むな」

 まともに相手をするのが面倒なので、こちらも煽っておこう。

「きっ、貴様!」

「そこまでです」

 殴りかかってこようとしたキッドをリンネさんが止める。

「重要な作戦の途中です。後にしてもらえますか?」

「はい!」

 リンネさんが睨みをきかせると、キッドはいい返事をしてすぐに仲間を連れて立ち去って行った。

「ダイスケさんも煽らないでもらえますか?」

 俺にはジトッとした目を向けて来て、この場で果てさせるつもりなのだろうか。

「仕込みは大切ですからね」

 今後エロイン達を抱きたくなった時の為にキッド達は常に煽っておく必要がある。

 何もこちらがしてないのにちょっかいをかけてくるくらいで丁度いい。

「あれって光刃の姫でしょうか?」

 アネッサさんのつぶやきを拾い、視線を同じ方へと向けると白銀の髪をした柔和な感じの巨乳の女がこちらへと歩いて来ている。

 更にその隣には見覚えのある勇者ちゃんがいる。

 じっくりと見たことはなかったが黒髪で童顔なその容姿は見覚えがあった。

「そうですね。彼女が光刃の姫です」

 近づいてきている白銀の髪の女が光刃の姫だと、リンネさんがひそひそとした声で教えてくれた。

 光刃の姫と勇者ちゃんは俺の目の前までやって来て立ち止まった。

 なんだ? 俺達に用事があるのか? それにしても美人だな。

 近くで見た光刃の姫は顔立ちの整った美女だった。

「あの、私と一緒に召喚された方ですよね?」

 話しかけてきたのは勇者ちゃんの方だった。

「はい、そうですよ」

「ごめんなさいっ」

 勇者ちゃんは何故か俺に向かって頭を下げる。

「すみません。何故謝られているのか分からないんですけれど」

「あの、それは、えっと……私の召喚に巻き込んじゃったから」

 あの時召喚に巻き込まれたのは勇者ちゃんの所為ではないと思うんだけどな。

「だから謝らなくてもいいと言ったじゃありませんか」

 俺が言葉に詰まっていると、光刃の姫が勇者ちゃんにつっこみをいれる。

「でもでも、私の召喚に巻き込まれちゃったんだよ」

「巻き込んで召喚してしまったのはローゼニアンではありませんか。ユイが責任を感じることなどありません」

「でも……」

「あの時召喚に巻き込まれたのは運が悪かっただけですよ。私はこの世界で楽しく生きていこうと思います」

 生活に潤いを与えてくれそうな人を新たに見つけたしね。

「そう、ですか」

「当人もそう言ってますし、この話は終わりにしましょう」

 こうして会ってみて思ったけど、次の目標はやはり光刃の姫だな。

 今までに会ったことのない高貴な感じを漂わせていて、頭を踏みつけているのを想像しただけで果てそうになる。

「……汚らわしい」

 勇者ちゃんを慰めていた光刃の姫は俺の方を見て明らかに嫌悪の視線を向けた。

「すみません。何か気に障るようなことをしたでしょうか?」

「そんな淫欲に満ちた目で見られて気持ちのいい女性はいないのではないかしら」

 光刃の姫は汚物を見るような目で俺を見た。

 確かに欲情を向けていたのだが、そんな目で見られてはたまらない。

「これは失礼しました。私はダイスケと申します。以後お見知りおきください」

 挑発するためにリンネさんにあらかじめ教えて貰っていた貴族用の挨拶を光刃の姫に行う。

「ふんっ。フルナスター王国の第三王女ティア・フルナスターよ。二度と話しかけないで貰えるかしら」

 俺はいつから罵倒を受けて喜ぶようになったのだろうか。

 不老不死からくる絶対優位がそうさせているのかもしれない。

 柔和だった目をきつく引き締めて俺をみるティアを見ていると、ビンビンになってしょうがなかった。

「ティア様! ……えっと、あっ、私はユイです。それでは失礼しました」

 ユイと名乗った勇者ちゃんは険悪な雰囲気になってしまったティアを連れて離れていった。

「さすがダイスケ。お姫様相手でも変わんねえな」

「斬られるじゃないかとヒヤヒヤしましたよ」

「またあの目を向けて欲しいとか言いそうですね」

「ははっ、もちろんじゃないですか。……ん?」

 ユイとティアが離れていくと入れ違うように白髪の爺さんが近づいてきた。

 何だか見覚えのある爺さんだと思ったが、そう言えば最初に俺を勇者召喚に巻き込んだ迷惑爺さんじゃないか。

「失礼する」

「え?」

 俺に近づいてきた白髪の爺さんはいきなり手をかざして青白い光を出した。

 鑑定の光? ってそれはまずいぞ。

 今すぐに爺さんをぶっ飛ばして鑑定を中断させたかったが、周りにこれだけ人がいる状況でそんなことは出来ない。

「……お主、少し話せんか?」

 爺さんの鑑定が終わると、笑みを浮かべて俺を見る。

「構いませんよ。リンネさん達はここで待っててくれますか」

「その必要はない。防音結界。認識結界」

 爺さんは俺と爺さんだけを指定した二つの結界をすぐに発動させた。

「これでお主とワシの声は誰にも聞こえんし、唇の動きを読まれることもない」

「それで、私と話したいこととは何でしょうか?」

「最初に謝っておこう。召喚に巻き込んでしまって申し訳なかった」

「いえ、それはもう済んだことですから」

「そうか」

「はい、それで本題はなんですか?」

「ふむ、お主、勇者のパーティーに加わって魔王退治に協力してくれんかの?」
 
 そうきたか。

 さっき鑑定をしたと言うことは、俺が賢者であることや不老不死であること、魅了を持っていることは知っているはずだが。

「牢獄に入らないかの間違いじゃないんですか?」

「ははは、お主、面白いのう。勇者よりも世界を確実に救えそうな逸材を見つけたのじゃ、牢屋に入れるなんて惜しいことをするはずがなかろうて」

「魔王を倒すついでに俺が世界を支配するとか考えないんですか?」

「支配したければすればよいのではないか? どんな世界を作るのかは知らんが魔王が世界を支配してしまうよりは遙かにましじゃろう。魔王が世界を支配すれば、人間は家畜同然の扱いとなる。お主は人間を家畜以下で扱いたいのかの?」

 世界を支配したらか。

 俺がもし世界を支配するとすれば、一生セックスとゲームをしながら遊んで暮らせる世界を目指すだろう。

「いや、そんなつもりはないですね」

「そうじゃろ? 精々お主がやるのは美女を侍らせて楽しむくらいじゃろうて」

 爺さんはリンネさん達に目をやって笑っている。

「貴方は美女を侍らせようと思ったことはないんですか?」

「ははは、それはワシには出来んのじゃよ。こいつのせいでな」

 爺さんは自分の首についている首輪を指さして話を続ける。

「賢者として育てられたものは悪さが出来んようにこの首輪をつけられる。特定の魔法を発動しようとすると発動を妨害した上で激痛が走る優れ物じゃよ。オマケに取ろうとしたら爆発して頭毎吹っ飛ぶぞい」

 げっ、そんな物があるのか。

「なるほど、その首輪を私に付ければ悪さは出来ないということですね」

「いや、ワシはお主に首輪をつけるつもりはないぞ。それにつけても無駄じゃろ」

 ……確かに無理矢理取ってしまえばいいだけだからな。

 俺が言葉に詰まっていると、爺さんは笑った。

「ははは、不思議かの? 簡単に言えば、ワシは賢者になんぞなりたくなかった。それだけじゃよ」

「……それで、いいんですか?」

「うむ、勇者のパーティーに入って魔王を退治してくれれば、ワシから言うことは何もない。後は女を侍らせるなり、世界を支配するなり、好きにすればよい」

「光刃の姫を頂いてもいいですか?」

「好きにすればよい。むしろ、いけ好かない王族の女共を抱いてから旅立って欲しいくらいじゃな」

「ご希望とあれば抱いてから行きましょう」

「ふむ、魅了は記憶が残るから難しいが、睡眠なら問題ないか」

 この爺さん、王家にはかなり恨みがあるみたいだな。

「それで、勇者のパーティーには加わってくれるのかの?」

「いくつか気になる点があるんですが聞いてもいいですか?」

「ワシに答えられることならな」

「この先鑑定などで私のステータスが確認されることがあると思うのですが、魅了持ちだと不味くないですか?」

「お主が賢者になった時点でお主のステータスを鑑定出来るのは同じ賢者だけじゃ。それか、とても貴重な魔道具が必要になる。同様に真・魅了などの状態異常、真・の名のつく状態異常は賢者の使う鑑定でしか判別できん。よって、気をつける必要があるのは賢者のみじゃ」

 なるほど、だからリンネさんが状態異常回復薬を飲んでも魅了が解除されなかったのか。

 それなら、エロイン達にも魅了を使ってもよかったかな。

「賢者は何人もいるんですか?」

「世界で知られているのはワシを含めて七人だけじゃな」

 世界で七人なら少ないのだろうけど、勇者のパーティーに着いていったら確実に会いそうだな。

「邪魔なら殺してしまえばよい」

 爺さんが物騒なことを言い出した。

「いや、さすがにそれは」

「賢者になった者にまともな奴などおらんし、国家の犬じゃ。殺される前に殺した方がいいと思うがの」

 それはアンタのことも言ってるのか?

「……勇者のパーティーに入るのを断ったら?」

「別になにもないぞ。しばらく楽しく生きるがよかろう。ただ、勇者が魔王討伐に失敗すれば、お主が動かざるおえなくなると思うがの」

「勇者が魔王を討伐できる確率は?」

「半分くらいかの。お主が参加すればほぼ確実じゃな」

「……わかった。返事は今すぐにしなくてもいいか?」

「問題ないぞ。ただ、勇者達は二週間後には旅立つがの。……そろそろ時間じゃな」

 爺さんは結界を解いた。

「それではまたな」

 爺さんはユイ達の所へ戻って行った。
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