愛情をひとかけら、幸せな姫の物語

玉響なつめ

文字の大きさ
8 / 21

※■7

しおりを挟む
「ゼノン様」

 俺の妻。
 俺だけを愛してくれる、無垢なる女性ひと

 慈愛の人という呼び名そのままに、ヒトゴロシで地位を得た俺を甘やかに抱きしめてくれるそんなアナスタシアが、妻として……俺に抱かれてもいいと、言ってくれている。

 それを喜ばない男が、いるだろうか?

 俺は彼女に告げたように、女を抱いた経験なんてない。
 恐れられることがわかっていて抱こうという気にはなれなかったからだ。
 世の中には、怯える女を抱いて屈服させるのが趣味だというヤツもいるが、俺はそうじゃない。

 愛し、愛されて、触れあいたい。
 誰にも恐れられず、ただ、求められたい。

「シア……」

 彼女は知識があると言っていた。
 だが、この行為自体をどう思っているのだろう。

 嫌悪感は、その目にないことくらいわかっている。
 それでも俺は恐ろしい。――そして、嬉しい。

「シア」

「ん……」

 口づけを、落とす。
 柔らかいそこに、触れるだけ。シアは、このキスが好きだ。

 だけど、もう少しだけ。

「んん!?」

 深めた口づけに、舌を潜らせる。
 俺の舌に驚いた様子のシアだったが、それでも暴れる様子はない。
 ただ、戸惑っている様子で、俺の舌を噛まないように必死な姿が余計に俺のオスを刺激した。

(だがだめだ、まだ、だめだ……)

 柔らかい舌に欲望が首をもたげる。
 素直に抱きたいと思う。アナスタシアなら、俺を拒まないで受け入れてくれると思う。

 俺のこの気持ちも、彼女の気持ちも、決して世の中で言うところの愛なんてもんじゃないことは百も承知だ。
 それでも、大事にしたい。

 このまま勢いで抱いてしまえば、それは彼女を傷つけるだけだ。
 女の体は、たくさん触れて潤して、気持ちいいことをしていると知らなければ傷つくだけだと同僚が言っていた。

 俺みたいながさつな男が触れるんだ、より一層彼女を大事に大事に、触れていかなけりゃならない。

「んん……ぜの、ん、さまぁ……」

 柔らかい舌を絡めて、吐息ごと吸い尽くしてやりたい。
 息も絶え絶えに、目を潤ませて俺を見上げるアナスタシアを、欲望のままに抱き潰したい。

 女を知らなくても、どうすればいいのかなんて体が知っている。

(だめだだめだだめだ)

 そんなことをしたら、怖がらせる。
 絶対に、アナスタシアだけは傷つけない。

 俺の妻だ。
 俺を愛してくれる人だ。

「シア……服を、脱がす」

「は、はい……」

「……今日はまだ、全部はしない。俺とお前では体格差もあるし、慣らさないと女の体には負担が大きいと聞いている」

「だ、大丈夫です! わたくし、耐えてみせます!!」

「俺が嫌なんだ」

 はだけさせた先に見える肌は、白い。
 ドレスの上からでもアナスタシアが細身であることは知っていたが、それでも脱がせてみれば女らしい凹凸があり思わず俺は喉を鳴らしてしまった。

 ああ、こんながっついている様子を少しでも気づかれたら怖がらせちまう。

 俺のせいでこの家には侍女がいない。
 だから彼女はコルセットを締めたりなんかしてないから、こうして脱がせやすくはあるが……本来は王女だったんだ、身の回りの世話をする人間がいて当然だ。

(人を、雇うか?)

 指先で確かめるように、胸の膨らみをなぞる。
 くすぐったいのか身じろぎするアナスタシアの首元を俺は舐めた。

 しっとりと吸い付く肌も、人に触れられることを知らない無垢な瞳も、全部俺のものだと思うと優越感がある。
 少し強めに吸い付くだけで跡が残るもんだから、楽しくて何度も吸い付いた。

 次第に触れられる感覚になれてきたのか、小さく漏れ聞こえるアナスタシアの声に艶が混じっていることに気がついて俺は胸の膨らみに手を伸ばす。

「ん、あっ……!」

「声を殺すな。誰も聞いちゃいない」

「ゼ、ゼノン様がおられるではありませんか!」

 当然だ、俺は聞きたいんだからそれでいい。
 胸の膨らみを乱暴にならない程度に揉めば、初めての感覚に困惑したアナスタシアの視線とかちあった。

「痛くないか」

「……い、痛くないです」

 はぁっと熱い息を吐き出す彼女に、俺は下半身が酷く重たくなるのを感じたのだった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。

処理中です...