愛情をひとかけら、幸せな姫の物語

玉響なつめ

文字の大きさ
12 / 21

11

しおりを挟む
「……というわけで、明日から人が来る。俺も、シアと共に彼らを迎えるよう言われているから、明日の出仕は遅めでいいとらしい」

「さようでしたか。王太子殿下のお心遣いには、感謝ですね」

「今はまだ忙しいが、いずれは挨拶に来ると言っていた」

「まあ! 本来でしたらわたくしの方から出向かねばなりませんのに……」

「いや。新婚夫婦ということでクレオンも、色々と気に掛けてくれているんだと思う」

 あれから心の中にちくりと刺さったまま抜けないトゲのことをぼんやりと考えていると、ゼノン様が帰ってこられてわたくしはほっといたしました。

 家族に疎まれていたかもしれない、その事実を理解し始めてわたくしは今、混乱しているのです。
 エヴリンがあれこれと他愛ない話をしてくれたおかげで、大分気が紛れていましたが……どうしても、エヴリンが帰った後に独りでいると考えてしまって、どうにもならなかったのです。

 ゼノン様は、わたくしを『慈愛の人』と思い、受け入れてくださっておりますが、インフォルトニ王国でもそう・・であったなら、それを踏まえて家族に『厄災の娘』と呼ばれ遠ざけられていたわたくしは、本当は……違う存在なのかもしれません。

 確かめようもありませんが、もし本当にわたくしの存在が『厄災』であるならば、この優しい方にご迷惑をかけるなんてことは、したくないと思いました。

「シア」

「はい」

 ごく自然に、唇を重ねるようになったわたくしたちは、世間からみてきちんと夫婦に見えているでしょうか。
 ゼノン様がわけてくださるこの熱は、とても優しくて、凍えるわたくしを救ってくださる温もりです。

「……少し、話をしてもいいだろうか」

「はい、勿論です。わたくしは、あなたの妻ですもの」

 妻だから、ここにいられる。
 妻だから、ゼノン様のお傍にいられる。

 ああ、わたくしは、寂しかったのだ。
 この場所にずっといたい、けれど家族に疎まれたわたくしを知られて、ゼノン様は、どう思われるのか。

 それが怖い。
 いつかは手を離される、その覚悟をしていたはずなのに。

「お前が傷つくかもと思い、聞けなかったんだが」

「……はい、なんでしょうか」

 何を尋ねられるのでしょう。
 わたくしの、この、『厄災の娘』についてでしょうか。

 心臓がバクバクする中、ゼノン様はわたくしを抱きしめたまま、躊躇いがちに口を開きました。

「シアは、今回、俺たちの結婚のきっかけになった戦争について、どれだけ知っている?」

「……戦争について、ですか?」

 問われてわたくしは驚きました。
 けれど、その眼差しに何か深い意味があるように思えて、わたくしはゼノン様を真っ直ぐに見返して答えました。

「申し訳ございません。わたくしは、何も存じ上げません」

「そうか」

「戦争が起きたと聞いたのは、塔の中でした。城内が物々しい空気に満ちたかと思うと、陛下が塔にお越しになり、わたくしのせいだと仰いました」

「……シアの、せい?」

 ゼノン様は困惑しておられるようでした。
 どうしてそんな表情をなさるのかわたくしにはさっぱりわかりませんでしたが、わたくしは言葉を続けました。

「その後、わたくしは塔の中にずっとおりました。日々、城内が騒がしかったことは知っておりますが、誰もわたくしのところには来ませんでした。ある日、敗戦した故に、わたくしをディーヴァス王国に差し出すと告げられ、ゼノン様と出会いました」

「そう、だったのか……。では、知ってほしい」

 ゼノン様はわたくしの話を聞き終えて、何か思い詰めた表情をしながらも、わたくしを支えるようにして話をしてくださいました。

「今回の戦争は、シアのせいなんかじゃない。お前の姉、第一王女のアリョーナが、『戦争がしてみたい』と言い出したことが原因だ」

 何を言われたのか、わたくしには一瞬、わかりませんでした。

 けれど、ゼノン様のお言葉は確かにわたくしの耳に届いていて、それを頭で理解できたとき、わたくしは言葉を失ったのでした。

「……え?」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。

処理中です...