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「……というわけで、明日から人が来る。俺も、シアと共に彼らを迎えるよう言われているから、明日の出仕は遅めでいいとらしい」
「さようでしたか。王太子殿下のお心遣いには、感謝ですね」
「今はまだ忙しいが、いずれは挨拶に来ると言っていた」
「まあ! 本来でしたらわたくしの方から出向かねばなりませんのに……」
「いや。新婚夫婦ということでクレオンも、色々と気に掛けてくれているんだと思う」
あれから心の中にちくりと刺さったまま抜けないトゲのことをぼんやりと考えていると、ゼノン様が帰ってこられてわたくしはほっといたしました。
家族に疎まれていたかもしれない、その事実を理解し始めてわたくしは今、混乱しているのです。
エヴリンがあれこれと他愛ない話をしてくれたおかげで、大分気が紛れていましたが……どうしても、エヴリンが帰った後に独りでいると考えてしまって、どうにもならなかったのです。
ゼノン様は、わたくしを『慈愛の人』と思い、受け入れてくださっておりますが、インフォルトニ王国でもそうであったなら、それを踏まえて家族に『厄災の娘』と呼ばれ遠ざけられていたわたくしは、本当は……違う存在なのかもしれません。
確かめようもありませんが、もし本当にわたくしの存在が『厄災』であるならば、この優しい方にご迷惑をかけるなんてことは、したくないと思いました。
「シア」
「はい」
ごく自然に、唇を重ねるようになったわたくしたちは、世間からみてきちんと夫婦に見えているでしょうか。
ゼノン様がわけてくださるこの熱は、とても優しくて、凍えるわたくしを救ってくださる温もりです。
「……少し、話をしてもいいだろうか」
「はい、勿論です。わたくしは、あなたの妻ですもの」
妻だから、ここにいられる。
妻だから、ゼノン様のお傍にいられる。
ああ、わたくしは、寂しかったのだ。
この場所にずっといたい、けれど家族に疎まれたわたくしを知られて、ゼノン様は、どう思われるのか。
それが怖い。
いつかは手を離される、その覚悟をしていたはずなのに。
「お前が傷つくかもと思い、聞けなかったんだが」
「……はい、なんでしょうか」
何を尋ねられるのでしょう。
わたくしの、この、『厄災の娘』についてでしょうか。
心臓がバクバクする中、ゼノン様はわたくしを抱きしめたまま、躊躇いがちに口を開きました。
「シアは、今回、俺たちの結婚のきっかけになった戦争について、どれだけ知っている?」
「……戦争について、ですか?」
問われてわたくしは驚きました。
けれど、その眼差しに何か深い意味があるように思えて、わたくしはゼノン様を真っ直ぐに見返して答えました。
「申し訳ございません。わたくしは、何も存じ上げません」
「そうか」
「戦争が起きたと聞いたのは、塔の中でした。城内が物々しい空気に満ちたかと思うと、陛下が塔にお越しになり、わたくしのせいだと仰いました」
「……シアの、せい?」
ゼノン様は困惑しておられるようでした。
どうしてそんな表情をなさるのかわたくしにはさっぱりわかりませんでしたが、わたくしは言葉を続けました。
「その後、わたくしは塔の中にずっとおりました。日々、城内が騒がしかったことは知っておりますが、誰もわたくしのところには来ませんでした。ある日、敗戦した故に、わたくしをディーヴァス王国に差し出すと告げられ、ゼノン様と出会いました」
「そう、だったのか……。では、知ってほしい」
ゼノン様はわたくしの話を聞き終えて、何か思い詰めた表情をしながらも、わたくしを支えるようにして話をしてくださいました。
「今回の戦争は、シアのせいなんかじゃない。お前の姉、第一王女のアリョーナが、『戦争がしてみたい』と言い出したことが原因だ」
何を言われたのか、わたくしには一瞬、わかりませんでした。
けれど、ゼノン様のお言葉は確かにわたくしの耳に届いていて、それを頭で理解できたとき、わたくしは言葉を失ったのでした。
「……え?」
「さようでしたか。王太子殿下のお心遣いには、感謝ですね」
「今はまだ忙しいが、いずれは挨拶に来ると言っていた」
「まあ! 本来でしたらわたくしの方から出向かねばなりませんのに……」
「いや。新婚夫婦ということでクレオンも、色々と気に掛けてくれているんだと思う」
あれから心の中にちくりと刺さったまま抜けないトゲのことをぼんやりと考えていると、ゼノン様が帰ってこられてわたくしはほっといたしました。
家族に疎まれていたかもしれない、その事実を理解し始めてわたくしは今、混乱しているのです。
エヴリンがあれこれと他愛ない話をしてくれたおかげで、大分気が紛れていましたが……どうしても、エヴリンが帰った後に独りでいると考えてしまって、どうにもならなかったのです。
ゼノン様は、わたくしを『慈愛の人』と思い、受け入れてくださっておりますが、インフォルトニ王国でもそうであったなら、それを踏まえて家族に『厄災の娘』と呼ばれ遠ざけられていたわたくしは、本当は……違う存在なのかもしれません。
確かめようもありませんが、もし本当にわたくしの存在が『厄災』であるならば、この優しい方にご迷惑をかけるなんてことは、したくないと思いました。
「シア」
「はい」
ごく自然に、唇を重ねるようになったわたくしたちは、世間からみてきちんと夫婦に見えているでしょうか。
ゼノン様がわけてくださるこの熱は、とても優しくて、凍えるわたくしを救ってくださる温もりです。
「……少し、話をしてもいいだろうか」
「はい、勿論です。わたくしは、あなたの妻ですもの」
妻だから、ここにいられる。
妻だから、ゼノン様のお傍にいられる。
ああ、わたくしは、寂しかったのだ。
この場所にずっといたい、けれど家族に疎まれたわたくしを知られて、ゼノン様は、どう思われるのか。
それが怖い。
いつかは手を離される、その覚悟をしていたはずなのに。
「お前が傷つくかもと思い、聞けなかったんだが」
「……はい、なんでしょうか」
何を尋ねられるのでしょう。
わたくしの、この、『厄災の娘』についてでしょうか。
心臓がバクバクする中、ゼノン様はわたくしを抱きしめたまま、躊躇いがちに口を開きました。
「シアは、今回、俺たちの結婚のきっかけになった戦争について、どれだけ知っている?」
「……戦争について、ですか?」
問われてわたくしは驚きました。
けれど、その眼差しに何か深い意味があるように思えて、わたくしはゼノン様を真っ直ぐに見返して答えました。
「申し訳ございません。わたくしは、何も存じ上げません」
「そうか」
「戦争が起きたと聞いたのは、塔の中でした。城内が物々しい空気に満ちたかと思うと、陛下が塔にお越しになり、わたくしのせいだと仰いました」
「……シアの、せい?」
ゼノン様は困惑しておられるようでした。
どうしてそんな表情をなさるのかわたくしにはさっぱりわかりませんでしたが、わたくしは言葉を続けました。
「その後、わたくしは塔の中にずっとおりました。日々、城内が騒がしかったことは知っておりますが、誰もわたくしのところには来ませんでした。ある日、敗戦した故に、わたくしをディーヴァス王国に差し出すと告げられ、ゼノン様と出会いました」
「そう、だったのか……。では、知ってほしい」
ゼノン様はわたくしの話を聞き終えて、何か思い詰めた表情をしながらも、わたくしを支えるようにして話をしてくださいました。
「今回の戦争は、シアのせいなんかじゃない。お前の姉、第一王女のアリョーナが、『戦争がしてみたい』と言い出したことが原因だ」
何を言われたのか、わたくしには一瞬、わかりませんでした。
けれど、ゼノン様のお言葉は確かにわたくしの耳に届いていて、それを頭で理解できたとき、わたくしは言葉を失ったのでした。
「……え?」
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