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バッカスたちが来てくれて、わたくしたちの生活はかなり豊かになりました。
最初の頃に話した通り、彼らは王太子殿下の配下。
特にバッカスとアンナはわたくしがゼノン様を籠絡しインフォルトニ王国へ帰属させるための駒である可能性も含め監視する気持ちもあったのだと話してくれるようになりました。
ちなみにそれは王太子殿下のお言葉ではなく、自分たちが勝手な判断で注視していただけだという謝罪と、弁明つきで。
ゼノン様は眉間に皺を寄せておられましたが、わたくしとしてはごくごく普通のことだと思いました。
むしろきちんと話してくれたので。
(……おそらく、わたくしが取るに足らない小娘であるとこの数日でわかったからでしょうね……)
そう思うと複雑なんですけれど!
実際、わたくしが王族教育を受けていたのは十歳まで。
最高位の女性であった祖母の手ほどきを受けていたので、さほど不格好ではないにしろ妙齢の女性がするような所作ではないことも多々あることでしょう。
知識についても塔の中に残されていた書物のものだから、古いものもあるでしょう。
エヴリンはわたくしのことを頑張り屋の良い子だと褒めてくれますが、わたくしの立場は『良い子』であるだけでは許されないことくらいはわかっているつもりです。
「アンナ、先日お願いした教師の方々はどうなったかしら?」
「はい、王太子殿下にお伝えいたしましたところ近日中には選定が済むとのことです。奥様がこの国のことを学びたいと仰ったこと、大変喜ばしく思うと……」
「そう……ありがとう」
ゼノン様の妻として、ジーノウ家の女主人として、わたくしが学ばなければならないことはたくさんあると思います。
まだ扱いとしては蜜月なので、急ぎ学ぶ必要はないとバッカスたちにも言われていますが……甘やかされてばかりでは溶けてしまいそう!
それに、閨を共にするにも今まではわたくしたちしかいなかったのに人の気配があるというものはかなり気恥ずかしくて……ついつい寄り添って寝るだけに終わってしまうのです。
(……ゼノン様は、わたくしに飽いてしまわないかしら?)
書物には夫から求められたら常に応えられるようにすべしと書いてあったものの、きっとゼノン様はわたくしの体調を慮ってくださっておられると思うのです。
ですが、自分から……というのはわたくしには少々言い出しにくいことでもあって……。
「ね、ねえアンナ……」
「どうかなさいましたか?」
「その、このようなことを相談してはいけないと思うのだけれど」
「はい?」
「……旦那様に閨をねだるのは、やはり……その、はしたないこと、なのかしら」
侍女頭となってくれたアンナは、他に雇い入れたメイドや侍女たちを統括する立場ですが私の傍に常に控えるようにしてくれています。
それはわたくしが不慣れな女主人だからこそなのだけれど……同時に彼女は王太子殿下から、母代わりとして色々と女性のあれこれを手助けする役割も言いつかっているそうなのです。
当初はわたくしが戦を仕掛けた女の妹……ということで厳しい目で見ようと思っていたそうですが、蓋を開けてみると世間知らずの子供だったということで……むしろ守り教え、導かねばと思ったんだとか。
不敬で申し訳ありませんと言われてしまいましたが、わたくしはそれを嫌だとは思いませんでした。
(だってアンナはとても良い人だもの)
彼女の人柄はとても朗らかで情に厚く、エヴリンとも仲良しです。
他の侍女たちを指導する姿は凜としていて、わたくしも尊敬しているのです。
本当に彼女を選び送り出してくださった王太子殿下には頭が上がりません!
母親代わりの女性ということにまでご配慮いただけたのだと思うと、わたくしの実家関係の歪さを知られているということで情けなくもなりましたが……。
いずれの時にかお目にかかれた日には、厚く御礼申し上げねばと思っております。
「いえ、おそらく旦那様はお喜びになると思いますよ」
「そ……そうかしら……」
「さようにございます。なにせ、うちの人に零していたようですし」
「え?」
「人がいるからか、奥様が恥ずかしがっていてなかなか手を出せない。恥ずかしがる姿も可愛いけれどなんて言い出したらわからない。嫌われたくない。だそうですよ?」
「まあ!」
わたくしは思わず目を丸くしてしまいました。
ゼノン様ったら、そんなことを料理長に零していただなんて!!
アンナはにこにこと笑って「今から旦那様のところに行かれては?」なんて言うものだからわたくしの顔も思わず赤くなってしまいました。
でも、ああ、わたくしはなんて幸せなのでしょう。
「……そうね、今ゼノン様はどちらにいらっしゃるのかしら」
最初の頃に話した通り、彼らは王太子殿下の配下。
特にバッカスとアンナはわたくしがゼノン様を籠絡しインフォルトニ王国へ帰属させるための駒である可能性も含め監視する気持ちもあったのだと話してくれるようになりました。
ちなみにそれは王太子殿下のお言葉ではなく、自分たちが勝手な判断で注視していただけだという謝罪と、弁明つきで。
ゼノン様は眉間に皺を寄せておられましたが、わたくしとしてはごくごく普通のことだと思いました。
むしろきちんと話してくれたので。
(……おそらく、わたくしが取るに足らない小娘であるとこの数日でわかったからでしょうね……)
そう思うと複雑なんですけれど!
実際、わたくしが王族教育を受けていたのは十歳まで。
最高位の女性であった祖母の手ほどきを受けていたので、さほど不格好ではないにしろ妙齢の女性がするような所作ではないことも多々あることでしょう。
知識についても塔の中に残されていた書物のものだから、古いものもあるでしょう。
エヴリンはわたくしのことを頑張り屋の良い子だと褒めてくれますが、わたくしの立場は『良い子』であるだけでは許されないことくらいはわかっているつもりです。
「アンナ、先日お願いした教師の方々はどうなったかしら?」
「はい、王太子殿下にお伝えいたしましたところ近日中には選定が済むとのことです。奥様がこの国のことを学びたいと仰ったこと、大変喜ばしく思うと……」
「そう……ありがとう」
ゼノン様の妻として、ジーノウ家の女主人として、わたくしが学ばなければならないことはたくさんあると思います。
まだ扱いとしては蜜月なので、急ぎ学ぶ必要はないとバッカスたちにも言われていますが……甘やかされてばかりでは溶けてしまいそう!
それに、閨を共にするにも今まではわたくしたちしかいなかったのに人の気配があるというものはかなり気恥ずかしくて……ついつい寄り添って寝るだけに終わってしまうのです。
(……ゼノン様は、わたくしに飽いてしまわないかしら?)
書物には夫から求められたら常に応えられるようにすべしと書いてあったものの、きっとゼノン様はわたくしの体調を慮ってくださっておられると思うのです。
ですが、自分から……というのはわたくしには少々言い出しにくいことでもあって……。
「ね、ねえアンナ……」
「どうかなさいましたか?」
「その、このようなことを相談してはいけないと思うのだけれど」
「はい?」
「……旦那様に閨をねだるのは、やはり……その、はしたないこと、なのかしら」
侍女頭となってくれたアンナは、他に雇い入れたメイドや侍女たちを統括する立場ですが私の傍に常に控えるようにしてくれています。
それはわたくしが不慣れな女主人だからこそなのだけれど……同時に彼女は王太子殿下から、母代わりとして色々と女性のあれこれを手助けする役割も言いつかっているそうなのです。
当初はわたくしが戦を仕掛けた女の妹……ということで厳しい目で見ようと思っていたそうですが、蓋を開けてみると世間知らずの子供だったということで……むしろ守り教え、導かねばと思ったんだとか。
不敬で申し訳ありませんと言われてしまいましたが、わたくしはそれを嫌だとは思いませんでした。
(だってアンナはとても良い人だもの)
彼女の人柄はとても朗らかで情に厚く、エヴリンとも仲良しです。
他の侍女たちを指導する姿は凜としていて、わたくしも尊敬しているのです。
本当に彼女を選び送り出してくださった王太子殿下には頭が上がりません!
母親代わりの女性ということにまでご配慮いただけたのだと思うと、わたくしの実家関係の歪さを知られているということで情けなくもなりましたが……。
いずれの時にかお目にかかれた日には、厚く御礼申し上げねばと思っております。
「いえ、おそらく旦那様はお喜びになると思いますよ」
「そ……そうかしら……」
「さようにございます。なにせ、うちの人に零していたようですし」
「え?」
「人がいるからか、奥様が恥ずかしがっていてなかなか手を出せない。恥ずかしがる姿も可愛いけれどなんて言い出したらわからない。嫌われたくない。だそうですよ?」
「まあ!」
わたくしは思わず目を丸くしてしまいました。
ゼノン様ったら、そんなことを料理長に零していただなんて!!
アンナはにこにこと笑って「今から旦那様のところに行かれては?」なんて言うものだからわたくしの顔も思わず赤くなってしまいました。
でも、ああ、わたくしはなんて幸せなのでしょう。
「……そうね、今ゼノン様はどちらにいらっしゃるのかしら」
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