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第一章 出逢いと再会
第一章 幼き出逢い
しおりを挟む――悪い予感が当たってしまったわ……。
十歳の伯爵令嬢、シャーロット・エリザベス・ウォーレンは泣きそうになりながら芝生の上に四つん這いになっていた。
木にとまったカラスが不吉な声でカアカアと鳴いている。
今日は兄であるジョージ・パット・ウォーレンの結婚式である。十二歳上の兄は、今花嫁と共に教会の控え室で礼装に着替えている。
他の家族もぞくぞくと集まってきた客の接待で大忙しだ。まだ子供のシャーロットに構う者は誰もいない。
(どうしよう。早く見つけないと……!)
とますます焦ってしまう。
シャーロットはまるで天使のような少女だった。華奢な身体に、細い手脚。波打つ金の河に似たバターブロンドの長い髪。その天辺にピンクの大きなリボンをつけている。
小さな顔に、血の気のよい頬や、すっとした鼻や、桜色の唇がバランス良く配置されている。サファイアのように深く蒼{あお}い瞳は、黄金色の長い睫毛に縁取られていた。
今日、彼女は人形のように豪華な服を着ていた。フリルとリボンがたくさんついた、桃色のドレスである。シルクの生地にはピンクダイアモンドがあちこちに縫い付けられ、キラキラと光る。更に全体に薔薇の刺繍も施されていた。ボリュームのあるスカート部分は何段にもなったフリルで装飾され、華やかである。広がったレースの袖口は、動く度にゆらゆらと揺れて、溜息をつく程優雅だ。
彼女の小さな耳たぶには、ブルーダイアモンドのイヤリングが輝き、胸元にもスクエア型にカットされた同じ宝石がぶら下がっている。蒼はシャーロットの瞳の色だった。彼女の誕生日に両親から贈られたものである。
しかし、そんな着飾った愛らしい少女の表情は歪んでいた。
(どうしよう、どうしよう……!)
セットした黄金色の髪は乱れ、蒼い瞳にじんわりと涙がにじむ。
(結婚指輪を無くしてしまったなんて知られたら、大変なんてものじゃないわ)
シャーロットはリングガール――結婚指輪を運ぶ役目を任されていた。大好きな兄夫婦のために、当日まで一生懸命練習をしたのだ。
それなのに今朝、その指輪をなくしてしまった。
(お兄様から預かって、中身を確認した時にはあったのよ。で、その後ちょうどお母様が部屋にやってきたから、テーブルに置いたの。それで、ちょっと話をして戻ったら、もう無かった)
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