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第五章 フィアンセ交代?!
ダナ様の完璧な人生
しおりを挟む「ダ、ダナさん……?」
「あたしは完璧主義者なの。あたしの人生に汚点はあってはならないの。いくら優しくて家柄も良いとしても、ブサイクな男の妻なんて最悪でしょ? 我慢できないわ。あたしはあたしのパーフェクトな未来の為にオリヴァーお兄様と結婚しなくちゃならないの、絶対に。そうじゃなきゃ、この年まで待った甲斐がないじゃない。絶対に完璧な人生にしなくっちゃ」
ダナは紫煙を吐き出す。吸い慣れていて、とても公爵令嬢には見えない。
(嘘でしょう、今までの子供っぽい姿は演技だったの? これが本当のダナさんなの?)
シャーロットは信じられない思いだった。
「な、何を言っているの……? ダナさんの完璧な人生と、私とオリヴァー様の結婚がどう関係あるの……?」
「まだ分かんない? 頭悪いなぁ。あー、馬鹿と話しているとバカが移る。シャーロットちゃんまじグズじゃん」
「ダ、ダナさ……」
「あんたが邪魔なんだよ。あたしの完璧な人生のためにあたしの目の前から消えろよ。フィアンセ交代しろ」
ダナが言った。血潮のように赤い瞳が苛立ちに燃えている。
「……っ!」
彼女は恐怖に顔を引き攣らせた。
ダナは〈完璧な人生〉という自分勝手な考えのために、シャーロットとオリヴァーの婚約を引き裂こうとしているのだ。そして自分が後釜に座る気でいる。
(この人、怖いわ。自身の幸福のためには手段を選ばない……)
「ま、あたしが裏から手を回してあんたをこの街から消してもいいけど、そういうことしたら後味が悪いじゃん。変に逆恨みされても困るしさぁ。だからここは穏便に行きたい訳よ。婚約を辞退して欲しいの」
「じ……辞退……?」
「そう。自分から離れて欲しいの。そうすれば、お兄様が貴女を追いかけていったりしないでしょう? ほら、よく絵物語であるじゃん。好きな男に振られるために悪女を演じるっていう奴。ああいうのかったるいから、さくっと婚約を辞退して田舎に帰ってくれないかなあ? 理由は何でも良いよ。『他に好きな男が出来た』とかさ」
(嫌よっ……!)
シャーロットは思った。
「そんなことは出来ないわっ……! だって私はオリヴァー様が初恋の人なのだもの……。あの方以外なんて……」
勇気を振り絞ってシャーロットはようやく言い返した。ダナの理不尽な言い分に飲み込まれそうである。
「あたしだってお兄様以外あり得ないよ。ダナ様の完璧な人生にぴったりの男は他にいないもん」
「でも、私はオリヴァー様を心から愛していて……!」
「あーはいはい、そういうのいいから。純愛ごっこは絵物語の中だけにして~。めんどい。結婚はビジネスだよ、特に貴族同士は。メリットがある方を選ぶ。常識でしょ?」
「そんな……愛の無い結婚なんて……」
シャーロットの蒼い瞳にじわっと涙が浮かぶ。
(酷いわ……。オリヴァー様のことを心から想っている訳ではないのね。ダナさんが欲しいのは、オリヴァー様の妻という地位や肩書きだけなのだわ)
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