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5.言えない言葉(双子の弟 碧依編)
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夏木碧依には双子の兄の翼がいる。
同じ顔をしている筈の二人だったが、受ける印象は全く違うものだった。翼は、明るく社交的で、物怖じしない性格だった。一方、碧依は引っ込み思案で自分の意見をはっきりと言うことができず、兄の翼のおまけのような扱いをされる事が多かった。
それでも兄の翼からは優しくて思慮深いだけだから、もっと自信を持ってと言われたし、親からも碧依は落ち着いていて良い子ねと言ってもらえていた。
中学までは同じ学校で比較されることの多い碧依だったが、兄の翼から高校は別にしようと言われて別の高校に進学した。
翼と離れて過ごす事が初めての碧依は、始めの頃は心許なくオドオドする事もあったが、心優しい友人に囲まれた穏やかな学生生活を送ることができていた。
碧依は2年になって、如月大和と同じクラスになる。
大和は、兄のように社交的で明るく、分け隔てなく誰とでも平等に接してくれていた。
始めは兄の翼と似た大和に親近感を勝手に抱いていた碧依だが、徐々にそれだけではない感情を抱くようになってきていた。
ある日、兄の翼のバイト先である本屋に遊びに行くと、そこには大和がいた。
大和は今日がバイト初日のようであった。
兄の翼と挨拶をしている姿を見て、そっと見つからないように碧依は店を出た。
思わぬ出会いに胸は高鳴る。もしかしたら、これはチャンスかもしれない。
碧依は、バイトから帰ってきた兄の翼に相談をした。
翼は、人と関わることに臆病な碧依に好きな人がいる事にとても喜んだ。碧依が翼の代わりにバイトに行きたいという提案に快く了承した。
店長にはしばらく翼が休むので、代わりに弟の碧依が行くことを伝えて了承もしてもらった。人手不足の時に何度か翼のバイト先で働いたことがある碧依は、問題なく働ける。
あとは、大和に碧依ではなく兄の翼として出会って仲良くなれるよう碧依が頑張るだけだ。碧依として会うのでは、いつもの引っ込み思案の性格が出てしまう。
碧依は、碧依と認識されなくとも、大和と仲良く話してみたかった。どうせ叶わぬ恋なのだ。兄の翼ように振る舞い、翼として仲良くなれれば充分だった。
翼には反対されることが分かっていたので、翼になりすますことは内緒にして好きな人に少しでも振り向いてもらいたいから翼のようなファッションや髪のセットのアドバイスを受けた。
元々顔立ちはそっくりの双子だ。振る舞いやファッションを意識することで、あまり関わりのない人ならば確実に騙せるだろうと思えるくらいにはそっくりになれた。
学校では今までの通り過ごす。バイトに行く前に着替えて兄の翼になりすまし、翼として過ごすことにした。
翼になりすましたバイトの初日、大和とシフトが同じになり、翼のふりをして挨拶をした。少し違和感があったのか、大和は驚いた顔をしていた。
「夏木?何だか雰囲気がいつもと違うんだな」
と言われてしまう。
「そ、そうかな?気の所為だと思うよ。とりあえず店長に品出しの仕方を教えてあげてって言われてたから説明するね」
碧依は慌てて誤魔化し、話を逸らす。大和は首を傾げながらも、静かに碧依の話を聞いていた。
「夏木は説明が分かりやすいな。これからも分からないことがあったら夏木に聞いても良いか?」
思わぬ大和のうれしい言葉に碧依はこくこくと頷く。大和は言葉通りに、事あるごとに碧依に話しかけてくれた。
始めは意識して兄の翼に似せた態度をとるようにしていたが、段々と自然に話ができるようになってきていた。バイト帰りに一緒に駅まで帰ることも度々あった。
だが、学校では今まで通りだった。大和は分け隔てなく挨拶をしてくれるので、碧依に対しても挨拶はしてくれる。それに対して碧依はオドオドと挨拶を返してそそくさと大和から離れているし、長めの前髪を下ろしているので、同じ夏木でも同一人物とは思っていないだろう。相変わらず、バイト先だけでの関係だった。
ある日、店長に話しかけられる。実は、店長と兄の翼は付き合っている。
それは社員や古参のバイトも公認の仲だった。家にも時々翼をデートの迎えに行っていた。今日も翼とご飯を食べに行く約束をしていた店長は、ついでにバイト帰りの碧依を家まで送っていくと言ってくれた。碧依は笑顔で店長にお礼を言い、控室から出ていこうと扉を開けると、大和とぶつかってしまった。
碧依は慌てて謝る。だが大和は、碧依を睨みつけてちらりと中の店長を見た。そのまま碧依の腕を掴んで大和の方へ引き寄せ、店長に向かって話しかける。
「すみません。夏木は俺と帰る約束をしてますんで。店長は気にせず帰ってください」
大和の言葉に、碧依は驚いた。今日は約束などしていないし、今の状況はまるで大和に抱き締められているようだ。大和から若葉のような爽やかな香りがしてドキドキした。
恋人である翼から碧依の好きな人を聞いていた店長は、嬉しそうにニヤニヤと2人を見る。
「分かったよ。俺は大丈夫だから夏木は如月くんと帰りなさい」
そして、部屋から出ていく際に碧依にだけ聞こえるように「頑張れ」と囁いた。その言葉に碧依は顔を赤くする。大和はそれを見て何が気に食わなかったのか、腕に力を入れて不機嫌な様子をあらわにした。
自然と大和に強く抱きしめられることになった碧依は、もう耐えられないと手を突っ張って大和から離れた。
「じ、じゃあ、また後でな!品出ししてくる!」
大和を置いて、走って店に戻るが、なかなか赤くなった顔が戻らない碧依だった。
仕事が終わり碧依が店の外に出ると、先に店から出ていた大和が立っていた。笑顔で大和に駆け寄ろうとしたが、大和が険しい顔をしながら足元を見つめているのを見て、声をかけることも躊躇する。碧依が声を掛ける前に、大和が碧依に気付いて、硬い表情のまま「行こう」と促した。
いつもなら大和が豊富な話題で碧依を楽しませてくれていたが、今は一言も口を利かない。
沈黙が耐えられなくなった碧依は、大和に一生懸命話しかけた。
「今日はお客さん多かったね。如月くんがいっぱい本の場所とか聞かれてたけど、その度に自分の仕事中断させられてたから大変だっただろ?そういう時は店長に言って少し他の社員さんに仕事振り分けてもらっても大丈夫だから」
「店長」
大和が突然口を開いたと思ったら、立ち止まって碧依の方をじっと見つめてきた。
「え?」
碧依は意味が分からず戸惑う。
「夏木はさ、店長と付き合ってんの?」
「ちっ違うよ!僕は店長と付き合ってなんかいないよ!」
碧依は慌てて否定する。
「嘘だ!店の人が言ってたぞ。夏木と店長は店公認だって。それに、今日も店長の車で送ってってもらおうとしてたじゃないか」
「それはっ………っ僕は店長の用事のついでなだけで。本当に付き合ってないよ」
「ーーー本当に?」
大和は真偽を確かめるように碧依の顔を覗き込む。
「違うよ。店長は僕じゃない人と付き合ってるから」
翼のふりをしているなら碧依が否定するのはよくないことかもしれない。でも、店長と付き合ってると思われてそのまま話せなくなることが嫌だった碧依は、咄嗟に否定してしまった。
それを聞いて大和は表情を緩めた。
「じゃあさ、俺と付き合ってよ。夏木の事、初めて会ったときからずっと気になってたんだ」
「初めて…?」
「夏木はさ、初めて会ったときに笑いかけてくれたろ?俺、今から思うとその時に夏木のこと好きになったんだ。それなのに、2回目からはよそよそしくなっただろ?俺って嫌われてるのかなとか思っていたんだけど、せっかく同じ職場になれたんだしと思って頑張って話しかけたんだ。そしたら少しずつ初めて見せてくれた笑顔になってくれたから俺嬉しくて。
俺、これからも夏木の笑顔が見たいんだ。だから俺と付き合ってくれる?」
大和は少し肩を挙げて両手をぎゅっと握りしめたまま緊張した面持ちで一気にまくし立ててきた。
(違うよ。大和の好きな人は僕じゃないよ。翼の方だ。
だって初めてバイトに大和が来た日に働いていたのは翼だ。2回目に違和感を感じたのは僕が翼になりすましたから。少しずつ翼に似せた表情ができるようになったから、大和は僕を好きだと言っているんだ。
伝えなきゃ。僕は兄の翼じゃないって。クラスメイトの碧依の方で、翼のふりをしていただけなんだって。)
しかし、実際に碧依の口から出た言葉は全く違うものだった。
「僕も、大和くんのことが好きだよ。ずっと好きだったんだ」
――どうしよう。嘘を言ってしまった。
罪悪感で胸が痛む。それでも碧依は、真実の言葉をどうしても言えなかった。
大和は碧依の言葉を聞いてぱっと顔を綻ばせた。大和は、碧依をぎゅうぎゅうと抱きしめながらはしゃぐ。
「やった!ありがとうな!じゃあさ、夏木のこと名前で呼んでもいいか?」
名前で呼ぶということは、兄の翼の名前で呼ばれるということ。そんな事になったら、毎回大和が好きなのは翼であるという現実を突きつけられるということだ。だから、碧依は慌てて首を横に振った。
「僕っ自分の名前好きじゃないんだ。だから今まで通り名字で呼んでほしい」
それに対して残念そうにした大和だったが、「夏木がそう言うなら仕方ないよな」と言ってすぐに引き下がってくれた。それから、家まで送っていくと言う大和に大丈夫と断って駅で別れた。
翌日の朝、いつもよりはしゃいだ大和に挨拶をされる。碧依はいつも通り「おはよう」と応えたあとそそくさと大和から離れた。
それに対してまだ何か言いたそうな顔をしていた大和であったが、他の友人たちに取り囲まれてすぐに碧依から視線を外していた。
その日の放課後、バイト先で碧依は大和に話しかけられる。
「なあ、夏木。俺お前と付き合ってること皆に話しちゃだめなのか?何だか夏木は隠しておきたそうにしてるよな。今だって何だかぎこちないし。俺達付き合ってるんだろ?」
少し目を伏せてしょんぼりしている大和に碧依は慌てる。それでも、翼になりすましている身としては、どこでボロが出るかわからない。だから大和と付き合っていることは誰にも内緒にしておきたかった。
「僕たち、男同士だし、やっぱり他の人には知られたくないな。職場の人は理解があるけど、店長と付き合ってるって噂になってるんだろ?それなのに如月くんと付き合ってるなんて、乗り換えたみたいだし。駄目かな?」
大和は、ムッとした顔をしたまま返事をしない。焦った碧依はつい自分がしたいと思っていたことを口に出してしまう。
「じゃあさ、デートしようよ!少し遠出してさ。電車に乗って海!海行こう?今の季節は泳げはしないけど、散歩したりするだけで楽しいから」
それを聞いた大和は、途端に笑顔になった。
「やった。じゃあ今度の日曜日、どうだ?」
碧依は大きく頷いた。笑顔で喜ぶ大和だったが少し真面目な顔をして碧依の手を取る。
「みんなの前では今まで通りにするからさ。その代わりこれからもデート付き合ってよ。ホントは皆に自慢したいの我慢してるんだから」
そう言って大和は碧依の手を取り、指先にキスをしてきた。顔を真っ赤にした碧依は、どうして良いか分からずにそのまま走って逃げて、倉庫の中で蹲った。それからの二人は、バイト帰りに少しだけ寄り道をしたり電話をしたりした。
約束したデートも楽しかった。海に行ってイカ焼きを食べたり、海のそばの水族館に行ったりした。
浜辺を歩いている時、ふと碧依はここで犬を拾った事を思い出した。小学六年の話だ。犬と一緒に少年がいて、一緒に遊んだ。少年の飼い犬ではなく捨て犬だったらしく、少年が飼ってやりたいのに飼えないんだと悔しそうに言っていた。それを聞いた碧依は、一緒に来ていた両親にお願いをして連れ帰ったのだ。
そんな話を大和にすると、その頃から夏木は優しいよなと言って唇にキスをしてきた。碧依は突然のことに固まる。それに対して、可愛いと言って更にキスを重ねてきた。
もう、これで充分かもしれない。碧依は、ふと帰りの電車でそう思う。これ以上大和を騙してはいけない。
でも、どうしても自分から別れようとは言えなかった。日に日に罪悪感は募る。大和はあれから何度かデートに誘ってきたが、碧依は理由をつけて全て断っていた。
そうして一ヶ月が経ち、ある日の月曜日。大和はずっと不機嫌だった。学校では挨拶もなく、バイト先でも話しかけてこない。そういえば前日から携帯に連絡もなかった。もしかしたら、碧依が兄の翼のふりをしていたことに気づいたのかもしれない。不安になりながらバイトを終えると、大和が待っていた。
そのまま無言で近くの公園へ連れて行かれる。沈黙が続いていたが、大和がため息をつきながら話し出した。
「お前、俺に嘘ついていたんだな」
その言葉に碧依は、ハッとして大和の顔を見る。
「ごめんなさい」
それを聞いた大和は頭を抱え、やっぱりと呟く。
「おかしいと思ったんだよ。俺と付き合ってるのに全然態度が変わらないし、デートに誘ってもちっとものってきてくれないから。
俺、店長とデートしてるお前見つけたよ。俺の告白、受け入れてくれたのは何だったんだ?俺の事弄んで楽しかったか?お前の本当の気持ちはどこにあるんだ?お前、会う場所によって雰囲気が何だか違うし。
お前の本当の姿ってどれなんだ?俺、お前の何を信じれば良いんだよ!」
碧依は、大和の言葉を聞いて驚く。店長とデートしていたのは兄の翼だ。でも、翼のふりをして騙していたのは確かだった。これで別れることになったとしてもきちんと説明をしようと碧依が口を開く。
「ち、違」
「何が違うんだよ!……もう良い。何聞いても俺はお前の事信じらんねえ。別れよ。いや、そもそも付き合ってたかも怪しかったよな。
碧依、ずっとこの名前が呼びたかった。もうさよならだ」
確かに、大和は碧依と自分の名前を呼んでくれていた。つまり、最初から翼ではなくて碧依だと分かってくれていたのか。
(ずっと僕のことを好きだった?)
そんな事、今更知ってももう遅かった。碧依はずっと大和に不誠実な事をしてきたのだ。
始めから、いやせめて告白の時に真実を話しておけば良かったんだと今更な事を思ってしまった。
全て自業自得なのだ。碧依は説明しなくてはと思うが、何も言葉にならなかった。そして、そのまま大和は碧依を置いて帰っていった。
学校でもバイト先でも、気まずいまま二人は話をすることもなく過ぎていった。別れを言われた月の末に、大和はバイトを辞めた。
僕も、もう翼に代わってバイトをする必要が無くなった。バイトの交換はおしまいだと聞いた翼は、碧依から事情を聞き出す。元気のない弟を心配していた翼は、本当にこれで良いのか?と何度も聞いてきたが、碧依は僕が悪いからと言って話を無理やり終わりにしたのだった。
それから数日後、大和が学校で話しかけてきた。放課後話がしたいと言う。碧依は戸惑いながらも頷いた。放課後、別れることになったあの公園に再び訪れていた。
「昨日、お前の兄貴が俺のところに来たよ。店長と付き合ってるのは兄貴の方だって。詳しいことは直接本人から聞けって言われた」
翼がそこまでしてくれていたのか。今度は碧依が勇気を出す番だ。
ずっと大和が好きだったこと。大和が翼のバイト先に来たのを見て、翼としてでも良いから仲良くなりたいと思って翼のふりをしていたこと。店長にも協力をしてもらっていたこと。でも、騙してまで付き合うつもりはなかったこと。大和に告白された時、自分ではなくて翼に一目ぼれしたと言われて本当のことが言えなくなってしまったこと。全て話した。
大和は、複雑な顔をする。
「おれ、兄貴になんて一目惚れしてないぜ。」
「うん、今は分かってる。学校で僕と既に出会ってたもん。でも、あの時は翼だと思われてると思ってたから、バイトの時が初対面だと思ってたんだ」
「いいや、そこでもないぜ。この間の海で、犬拾った話しただろ?あの時の少年が俺だよ。あの時の夏木、すげぇ可愛くてさ。今思うと一目惚れしたんだよ。
高校で同じクラスになったときは嬉しくてさ。早速話しかけたら、夏木目も合わせずにすぐいなくなっちまうから。俺の事、覚えてないんだなって思った。それから事あるごとに話しかけても全然仲良くなれなくて。
そしたら、夏木がバイト先にいてさ。始めは学校の時とも海で出会ったときとも違う奴みたいだったから、戸惑ったんだよ。でも、話ししているうちに一目惚れした時の笑顔が見れて、また俺夏木の事好きになった。
夏木、不器用だけど一生懸命だし、いつでも人に優しいし。そんなところ見せられたらますます好きになったんだ。
でも、夏木は店長と付き合ってて俺の事は遊びだったのかなって思ったら、何が本当のお前か分からなくなってた。だからさ。もう一回、やり直させてよ。俺は、本当のお前と付き合いたいんだ。
碧依、好きです。付き合ってください」
大和は嘘をついた碧依を許してくれている。その上でまた、碧依と付き合いたいと思ってくれているんだと思うと、碧依の胸はじんわりと暖かくなる。
「僕も好きだよ。ずっと好きだった」
やっと言えた本当に心からの言葉。その後、碧依は大和に抱きついたのだった。
おしまい
ちなみに、店長と翼がデートしているのを見たのは遠目から一瞬だったので、大和は勘違いしました。
顔は似てるとは思っているけど、碧依と翼は全然違う(碧依のほうが可愛い)と思っている大和です。
同じ顔をしている筈の二人だったが、受ける印象は全く違うものだった。翼は、明るく社交的で、物怖じしない性格だった。一方、碧依は引っ込み思案で自分の意見をはっきりと言うことができず、兄の翼のおまけのような扱いをされる事が多かった。
それでも兄の翼からは優しくて思慮深いだけだから、もっと自信を持ってと言われたし、親からも碧依は落ち着いていて良い子ねと言ってもらえていた。
中学までは同じ学校で比較されることの多い碧依だったが、兄の翼から高校は別にしようと言われて別の高校に進学した。
翼と離れて過ごす事が初めての碧依は、始めの頃は心許なくオドオドする事もあったが、心優しい友人に囲まれた穏やかな学生生活を送ることができていた。
碧依は2年になって、如月大和と同じクラスになる。
大和は、兄のように社交的で明るく、分け隔てなく誰とでも平等に接してくれていた。
始めは兄の翼と似た大和に親近感を勝手に抱いていた碧依だが、徐々にそれだけではない感情を抱くようになってきていた。
ある日、兄の翼のバイト先である本屋に遊びに行くと、そこには大和がいた。
大和は今日がバイト初日のようであった。
兄の翼と挨拶をしている姿を見て、そっと見つからないように碧依は店を出た。
思わぬ出会いに胸は高鳴る。もしかしたら、これはチャンスかもしれない。
碧依は、バイトから帰ってきた兄の翼に相談をした。
翼は、人と関わることに臆病な碧依に好きな人がいる事にとても喜んだ。碧依が翼の代わりにバイトに行きたいという提案に快く了承した。
店長にはしばらく翼が休むので、代わりに弟の碧依が行くことを伝えて了承もしてもらった。人手不足の時に何度か翼のバイト先で働いたことがある碧依は、問題なく働ける。
あとは、大和に碧依ではなく兄の翼として出会って仲良くなれるよう碧依が頑張るだけだ。碧依として会うのでは、いつもの引っ込み思案の性格が出てしまう。
碧依は、碧依と認識されなくとも、大和と仲良く話してみたかった。どうせ叶わぬ恋なのだ。兄の翼ように振る舞い、翼として仲良くなれれば充分だった。
翼には反対されることが分かっていたので、翼になりすますことは内緒にして好きな人に少しでも振り向いてもらいたいから翼のようなファッションや髪のセットのアドバイスを受けた。
元々顔立ちはそっくりの双子だ。振る舞いやファッションを意識することで、あまり関わりのない人ならば確実に騙せるだろうと思えるくらいにはそっくりになれた。
学校では今までの通り過ごす。バイトに行く前に着替えて兄の翼になりすまし、翼として過ごすことにした。
翼になりすましたバイトの初日、大和とシフトが同じになり、翼のふりをして挨拶をした。少し違和感があったのか、大和は驚いた顔をしていた。
「夏木?何だか雰囲気がいつもと違うんだな」
と言われてしまう。
「そ、そうかな?気の所為だと思うよ。とりあえず店長に品出しの仕方を教えてあげてって言われてたから説明するね」
碧依は慌てて誤魔化し、話を逸らす。大和は首を傾げながらも、静かに碧依の話を聞いていた。
「夏木は説明が分かりやすいな。これからも分からないことがあったら夏木に聞いても良いか?」
思わぬ大和のうれしい言葉に碧依はこくこくと頷く。大和は言葉通りに、事あるごとに碧依に話しかけてくれた。
始めは意識して兄の翼に似せた態度をとるようにしていたが、段々と自然に話ができるようになってきていた。バイト帰りに一緒に駅まで帰ることも度々あった。
だが、学校では今まで通りだった。大和は分け隔てなく挨拶をしてくれるので、碧依に対しても挨拶はしてくれる。それに対して碧依はオドオドと挨拶を返してそそくさと大和から離れているし、長めの前髪を下ろしているので、同じ夏木でも同一人物とは思っていないだろう。相変わらず、バイト先だけでの関係だった。
ある日、店長に話しかけられる。実は、店長と兄の翼は付き合っている。
それは社員や古参のバイトも公認の仲だった。家にも時々翼をデートの迎えに行っていた。今日も翼とご飯を食べに行く約束をしていた店長は、ついでにバイト帰りの碧依を家まで送っていくと言ってくれた。碧依は笑顔で店長にお礼を言い、控室から出ていこうと扉を開けると、大和とぶつかってしまった。
碧依は慌てて謝る。だが大和は、碧依を睨みつけてちらりと中の店長を見た。そのまま碧依の腕を掴んで大和の方へ引き寄せ、店長に向かって話しかける。
「すみません。夏木は俺と帰る約束をしてますんで。店長は気にせず帰ってください」
大和の言葉に、碧依は驚いた。今日は約束などしていないし、今の状況はまるで大和に抱き締められているようだ。大和から若葉のような爽やかな香りがしてドキドキした。
恋人である翼から碧依の好きな人を聞いていた店長は、嬉しそうにニヤニヤと2人を見る。
「分かったよ。俺は大丈夫だから夏木は如月くんと帰りなさい」
そして、部屋から出ていく際に碧依にだけ聞こえるように「頑張れ」と囁いた。その言葉に碧依は顔を赤くする。大和はそれを見て何が気に食わなかったのか、腕に力を入れて不機嫌な様子をあらわにした。
自然と大和に強く抱きしめられることになった碧依は、もう耐えられないと手を突っ張って大和から離れた。
「じ、じゃあ、また後でな!品出ししてくる!」
大和を置いて、走って店に戻るが、なかなか赤くなった顔が戻らない碧依だった。
仕事が終わり碧依が店の外に出ると、先に店から出ていた大和が立っていた。笑顔で大和に駆け寄ろうとしたが、大和が険しい顔をしながら足元を見つめているのを見て、声をかけることも躊躇する。碧依が声を掛ける前に、大和が碧依に気付いて、硬い表情のまま「行こう」と促した。
いつもなら大和が豊富な話題で碧依を楽しませてくれていたが、今は一言も口を利かない。
沈黙が耐えられなくなった碧依は、大和に一生懸命話しかけた。
「今日はお客さん多かったね。如月くんがいっぱい本の場所とか聞かれてたけど、その度に自分の仕事中断させられてたから大変だっただろ?そういう時は店長に言って少し他の社員さんに仕事振り分けてもらっても大丈夫だから」
「店長」
大和が突然口を開いたと思ったら、立ち止まって碧依の方をじっと見つめてきた。
「え?」
碧依は意味が分からず戸惑う。
「夏木はさ、店長と付き合ってんの?」
「ちっ違うよ!僕は店長と付き合ってなんかいないよ!」
碧依は慌てて否定する。
「嘘だ!店の人が言ってたぞ。夏木と店長は店公認だって。それに、今日も店長の車で送ってってもらおうとしてたじゃないか」
「それはっ………っ僕は店長の用事のついでなだけで。本当に付き合ってないよ」
「ーーー本当に?」
大和は真偽を確かめるように碧依の顔を覗き込む。
「違うよ。店長は僕じゃない人と付き合ってるから」
翼のふりをしているなら碧依が否定するのはよくないことかもしれない。でも、店長と付き合ってると思われてそのまま話せなくなることが嫌だった碧依は、咄嗟に否定してしまった。
それを聞いて大和は表情を緩めた。
「じゃあさ、俺と付き合ってよ。夏木の事、初めて会ったときからずっと気になってたんだ」
「初めて…?」
「夏木はさ、初めて会ったときに笑いかけてくれたろ?俺、今から思うとその時に夏木のこと好きになったんだ。それなのに、2回目からはよそよそしくなっただろ?俺って嫌われてるのかなとか思っていたんだけど、せっかく同じ職場になれたんだしと思って頑張って話しかけたんだ。そしたら少しずつ初めて見せてくれた笑顔になってくれたから俺嬉しくて。
俺、これからも夏木の笑顔が見たいんだ。だから俺と付き合ってくれる?」
大和は少し肩を挙げて両手をぎゅっと握りしめたまま緊張した面持ちで一気にまくし立ててきた。
(違うよ。大和の好きな人は僕じゃないよ。翼の方だ。
だって初めてバイトに大和が来た日に働いていたのは翼だ。2回目に違和感を感じたのは僕が翼になりすましたから。少しずつ翼に似せた表情ができるようになったから、大和は僕を好きだと言っているんだ。
伝えなきゃ。僕は兄の翼じゃないって。クラスメイトの碧依の方で、翼のふりをしていただけなんだって。)
しかし、実際に碧依の口から出た言葉は全く違うものだった。
「僕も、大和くんのことが好きだよ。ずっと好きだったんだ」
――どうしよう。嘘を言ってしまった。
罪悪感で胸が痛む。それでも碧依は、真実の言葉をどうしても言えなかった。
大和は碧依の言葉を聞いてぱっと顔を綻ばせた。大和は、碧依をぎゅうぎゅうと抱きしめながらはしゃぐ。
「やった!ありがとうな!じゃあさ、夏木のこと名前で呼んでもいいか?」
名前で呼ぶということは、兄の翼の名前で呼ばれるということ。そんな事になったら、毎回大和が好きなのは翼であるという現実を突きつけられるということだ。だから、碧依は慌てて首を横に振った。
「僕っ自分の名前好きじゃないんだ。だから今まで通り名字で呼んでほしい」
それに対して残念そうにした大和だったが、「夏木がそう言うなら仕方ないよな」と言ってすぐに引き下がってくれた。それから、家まで送っていくと言う大和に大丈夫と断って駅で別れた。
翌日の朝、いつもよりはしゃいだ大和に挨拶をされる。碧依はいつも通り「おはよう」と応えたあとそそくさと大和から離れた。
それに対してまだ何か言いたそうな顔をしていた大和であったが、他の友人たちに取り囲まれてすぐに碧依から視線を外していた。
その日の放課後、バイト先で碧依は大和に話しかけられる。
「なあ、夏木。俺お前と付き合ってること皆に話しちゃだめなのか?何だか夏木は隠しておきたそうにしてるよな。今だって何だかぎこちないし。俺達付き合ってるんだろ?」
少し目を伏せてしょんぼりしている大和に碧依は慌てる。それでも、翼になりすましている身としては、どこでボロが出るかわからない。だから大和と付き合っていることは誰にも内緒にしておきたかった。
「僕たち、男同士だし、やっぱり他の人には知られたくないな。職場の人は理解があるけど、店長と付き合ってるって噂になってるんだろ?それなのに如月くんと付き合ってるなんて、乗り換えたみたいだし。駄目かな?」
大和は、ムッとした顔をしたまま返事をしない。焦った碧依はつい自分がしたいと思っていたことを口に出してしまう。
「じゃあさ、デートしようよ!少し遠出してさ。電車に乗って海!海行こう?今の季節は泳げはしないけど、散歩したりするだけで楽しいから」
それを聞いた大和は、途端に笑顔になった。
「やった。じゃあ今度の日曜日、どうだ?」
碧依は大きく頷いた。笑顔で喜ぶ大和だったが少し真面目な顔をして碧依の手を取る。
「みんなの前では今まで通りにするからさ。その代わりこれからもデート付き合ってよ。ホントは皆に自慢したいの我慢してるんだから」
そう言って大和は碧依の手を取り、指先にキスをしてきた。顔を真っ赤にした碧依は、どうして良いか分からずにそのまま走って逃げて、倉庫の中で蹲った。それからの二人は、バイト帰りに少しだけ寄り道をしたり電話をしたりした。
約束したデートも楽しかった。海に行ってイカ焼きを食べたり、海のそばの水族館に行ったりした。
浜辺を歩いている時、ふと碧依はここで犬を拾った事を思い出した。小学六年の話だ。犬と一緒に少年がいて、一緒に遊んだ。少年の飼い犬ではなく捨て犬だったらしく、少年が飼ってやりたいのに飼えないんだと悔しそうに言っていた。それを聞いた碧依は、一緒に来ていた両親にお願いをして連れ帰ったのだ。
そんな話を大和にすると、その頃から夏木は優しいよなと言って唇にキスをしてきた。碧依は突然のことに固まる。それに対して、可愛いと言って更にキスを重ねてきた。
もう、これで充分かもしれない。碧依は、ふと帰りの電車でそう思う。これ以上大和を騙してはいけない。
でも、どうしても自分から別れようとは言えなかった。日に日に罪悪感は募る。大和はあれから何度かデートに誘ってきたが、碧依は理由をつけて全て断っていた。
そうして一ヶ月が経ち、ある日の月曜日。大和はずっと不機嫌だった。学校では挨拶もなく、バイト先でも話しかけてこない。そういえば前日から携帯に連絡もなかった。もしかしたら、碧依が兄の翼のふりをしていたことに気づいたのかもしれない。不安になりながらバイトを終えると、大和が待っていた。
そのまま無言で近くの公園へ連れて行かれる。沈黙が続いていたが、大和がため息をつきながら話し出した。
「お前、俺に嘘ついていたんだな」
その言葉に碧依は、ハッとして大和の顔を見る。
「ごめんなさい」
それを聞いた大和は頭を抱え、やっぱりと呟く。
「おかしいと思ったんだよ。俺と付き合ってるのに全然態度が変わらないし、デートに誘ってもちっとものってきてくれないから。
俺、店長とデートしてるお前見つけたよ。俺の告白、受け入れてくれたのは何だったんだ?俺の事弄んで楽しかったか?お前の本当の気持ちはどこにあるんだ?お前、会う場所によって雰囲気が何だか違うし。
お前の本当の姿ってどれなんだ?俺、お前の何を信じれば良いんだよ!」
碧依は、大和の言葉を聞いて驚く。店長とデートしていたのは兄の翼だ。でも、翼のふりをして騙していたのは確かだった。これで別れることになったとしてもきちんと説明をしようと碧依が口を開く。
「ち、違」
「何が違うんだよ!……もう良い。何聞いても俺はお前の事信じらんねえ。別れよ。いや、そもそも付き合ってたかも怪しかったよな。
碧依、ずっとこの名前が呼びたかった。もうさよならだ」
確かに、大和は碧依と自分の名前を呼んでくれていた。つまり、最初から翼ではなくて碧依だと分かってくれていたのか。
(ずっと僕のことを好きだった?)
そんな事、今更知ってももう遅かった。碧依はずっと大和に不誠実な事をしてきたのだ。
始めから、いやせめて告白の時に真実を話しておけば良かったんだと今更な事を思ってしまった。
全て自業自得なのだ。碧依は説明しなくてはと思うが、何も言葉にならなかった。そして、そのまま大和は碧依を置いて帰っていった。
学校でもバイト先でも、気まずいまま二人は話をすることもなく過ぎていった。別れを言われた月の末に、大和はバイトを辞めた。
僕も、もう翼に代わってバイトをする必要が無くなった。バイトの交換はおしまいだと聞いた翼は、碧依から事情を聞き出す。元気のない弟を心配していた翼は、本当にこれで良いのか?と何度も聞いてきたが、碧依は僕が悪いからと言って話を無理やり終わりにしたのだった。
それから数日後、大和が学校で話しかけてきた。放課後話がしたいと言う。碧依は戸惑いながらも頷いた。放課後、別れることになったあの公園に再び訪れていた。
「昨日、お前の兄貴が俺のところに来たよ。店長と付き合ってるのは兄貴の方だって。詳しいことは直接本人から聞けって言われた」
翼がそこまでしてくれていたのか。今度は碧依が勇気を出す番だ。
ずっと大和が好きだったこと。大和が翼のバイト先に来たのを見て、翼としてでも良いから仲良くなりたいと思って翼のふりをしていたこと。店長にも協力をしてもらっていたこと。でも、騙してまで付き合うつもりはなかったこと。大和に告白された時、自分ではなくて翼に一目ぼれしたと言われて本当のことが言えなくなってしまったこと。全て話した。
大和は、複雑な顔をする。
「おれ、兄貴になんて一目惚れしてないぜ。」
「うん、今は分かってる。学校で僕と既に出会ってたもん。でも、あの時は翼だと思われてると思ってたから、バイトの時が初対面だと思ってたんだ」
「いいや、そこでもないぜ。この間の海で、犬拾った話しただろ?あの時の少年が俺だよ。あの時の夏木、すげぇ可愛くてさ。今思うと一目惚れしたんだよ。
高校で同じクラスになったときは嬉しくてさ。早速話しかけたら、夏木目も合わせずにすぐいなくなっちまうから。俺の事、覚えてないんだなって思った。それから事あるごとに話しかけても全然仲良くなれなくて。
そしたら、夏木がバイト先にいてさ。始めは学校の時とも海で出会ったときとも違う奴みたいだったから、戸惑ったんだよ。でも、話ししているうちに一目惚れした時の笑顔が見れて、また俺夏木の事好きになった。
夏木、不器用だけど一生懸命だし、いつでも人に優しいし。そんなところ見せられたらますます好きになったんだ。
でも、夏木は店長と付き合ってて俺の事は遊びだったのかなって思ったら、何が本当のお前か分からなくなってた。だからさ。もう一回、やり直させてよ。俺は、本当のお前と付き合いたいんだ。
碧依、好きです。付き合ってください」
大和は嘘をついた碧依を許してくれている。その上でまた、碧依と付き合いたいと思ってくれているんだと思うと、碧依の胸はじんわりと暖かくなる。
「僕も好きだよ。ずっと好きだった」
やっと言えた本当に心からの言葉。その後、碧依は大和に抱きついたのだった。
おしまい
ちなみに、店長と翼がデートしているのを見たのは遠目から一瞬だったので、大和は勘違いしました。
顔は似てるとは思っているけど、碧依と翼は全然違う(碧依のほうが可愛い)と思っている大和です。
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