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10.僕は大好きな旦那様に愛されたい
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僕は大好きな人と結婚した。
でも僕の旦那様であるアルフレド様は、他に好きな人がいた。
僕はそれを知ってて結婚したんだ。
僕はズルい人間だ。
だから、僕はアルフレド様に愛されなくても仕方ない。
◇
アルフレドは、受けの姉が好きだった。
でも、姉はこの国の第二王子と結婚した。
アルフレドは第二王子の護衛騎士だ。
受けは、姉の結婚前はよく第二王子とのデートに連れて行ってもらっていた。
受けももちろん、まだ結婚する前だ。
王子が連れておいでと言って誘ってくれたからだ。
でも、受けは二人のお邪魔虫だ。
だから、いつも二人のデートについていくとすぐに護衛騎士のアルフレドによって受けは二人から離されて、アルフレドと一緒に過ごしていた。
受けがお邪魔虫なのを分かっていてもついて行ったのは、アルフレドと一緒に過ごせるから。
たとえ、姉と受けが王子と話すのを鋭い目で見つめていたとしても、アルフレドと一緒にいられることが幸せだったから。
アルフレドは、受けさえいなければ王子のそばについて、姉と過ごすことができたはずだ。
それなのに、受けがいるせいで姉と離れなければならない。
だから、いつも受けを2人から引き離すときは、鋭く受けを睨み、受けの腕をつかんで二人から引き離すのだろう。
受けは、いつも二人から離れる時には悲しい気持ちで二人を見つめた。
なぜなら、姉と王子は相思相愛の二人で、仲睦まじかったから。
受けもアルフレドとそうなりたかった。
そんな受けの様子を見て、アルフレドは益々表情を険しくする。
「諦めろ。どんなに思っても姉のように君は愛されない」
アルフレドからは刺々しく声をかけられた。
受けの気持ちをアルフレドは気付いていたのだ。
それに受けは悲しくなり、涙を流す。
「わかっています。これは僕の片思いで決して叶わないことは。けれど、思い続けることだけは許してください」
受けが俯きながらそう言うと、アルフレドは受けの両肩をきつく握る。
「そんなにも諦められないのか。君の思いは叶わないのだ。早く君を好きな人を好きになるが良い」
受けは、完全に振られてしまったのだ。
それなのに、受けはアルフレドと結婚することになってしまった。
王子と姉が結婚する時に、同時に受けとアルフレドが結婚することを王子から命ぜられたからだ。
姉の盛大な結婚式の後、密やかに結婚式を行うことになった。
姉は自身も忙しいのにも関わらず受けの結婚式に駆けつけてくれた。
控室で受けは姉と二人で話をする。
姉は、暗い顔をする受けを見て心配していた。
受けは、ひたすら大丈夫と繰り返した。
だが、一言だけ、姉に呟く。
「僕は姉さまになりたかった。そうすれば姉さまのように僕も愛されたのに。この結婚は、僕が断らなければならなかったのに、どうしてもあの方の傍にいたくて断れなかった。だって、姉さまが結婚してしまったらもう姉さまについて行ってあの方に会うこともできなくなるのだから」
姉は何かを伝えようと受けの肩に手を乗せるのと同時に、アルフレドが部屋に入ってくる。
アルフレドは怖い顔をしたまま、受けを教会へと連れ出した。
そのまま受けとアルフレドは婚姻し、初夜を迎えた。
やっと二人きりとなったが、二人の間には沈黙が流れた。
その沈黙に耐えられなかったのか、アルフレドが口を開く。
「どんな経緯であろうと、俺たちは夫夫となったのだ。たとえ互いの気持ちが通わなくとも、俺は離婚には応じないからな。やっと手に入れた繋がりだ。受けも諦めろ」
受けは、その言葉にショックを受ける。
アルフレドは決して受けを好きになどならないのだ。
ただ姉との繋がりのためだけに受けと結婚したと宣言されてしまった。
受けは、肩を震わせる。
「旦那様は、僕の気持ちを知っていて、そう仰るのですか?旦那様はひどい」
受けのその言葉にアルフレドはため息をつく。
「そうだ。俺はひどい奴だ。憎んでも構わない。それでも俺と婚姻関係を結び続けるのであればそれで良い」
そう言いながら、アルフレドは受けにキスをしてきた。
「なぜ?私達は仮初の夫夫なのでしょう?こんなひどい事をなぜなさるのですか?気持ちの伴わないキスなど、僕は望んでいません」
受けの拒絶に、アルフレドは顔をしかめる。
「白い結婚は、どちらかの意思で離縁が可能だ。俺はそれを避けたい。諦めろ。夫夫になることを了承したのなら、受けの気持ちなど関係ない。あきらめて私に抱かれるのだな」
アルフレドのあまりにもひどい台詞に受けは涙が止まらない。
それでも、触れてくる指先はどこまでも優しく、アルフレドを嫌いになることもできなかった。
それからの結婚生活は思ったよりも穏やかでアルフレドの家族や周囲の人間からも大切にされた。
アルフレドも、姉夫婦の話題を出さない限りはいつも優しかった。
だが、姉夫婦の話を受けがすると、険しい顔で受けを責め立てた。
「俺の前でその話題をするんじゃない。まだ諦められないのか。俺とは離縁は不可能だぞ」
と言う。
受けは、決してそんなつもりで話を出したのではない。
いつか姉夫婦のように思いを通わせた夫夫になりたいだけだ。
だが、姉を好きなアルフレドからすると、二人の話題は耐えられないのだろう。
その度に、受けの胸は苦しくなった。
ある日、王子が刺客に狙われたとの話が屋敷に舞い込んできた。
護衛騎士であるアルフレドは大丈夫だったのだろうか。
受けは、居ても立ってもいられなくなり、王城へと向かった。
王子は無事であったそうだが、護衛騎士であったアルフレドは深手を負ったらしい。
慌てて、アルフレドのところへと向かう。
そこには、アルフレドと王子が二人いた。
王子は無傷であり、アルフレドはベッドにいて、包帯を右肩を中心に巻きつけてはいたものの、顔色は悪くなかった。
そんなアルフレドの様子を見て、受けはホッとしてその場に崩れ落ちた。
「良かった。あなたがいなくなったら、僕は生きていけないのです。こんなに辛い思いをしてでもあなたのそばにいることを決めたのですから」
それを聞いた王子は、受けの肩を叩いて、アルフレドとよく話をするようにと言って去っていった。
アルフレドと二人きりになる受け。
思わずアルフレドへの思いを叫んでしまい、恥ずかしかった。
アルフレドは、しばらく考え込んでいて、何も語ろうとしない。
アルフレドは、姉が好きなのにこんな受けの思いなど迷惑なのだろう。
「王子が刺客に狙われた時、一瞬動きが遅れてしまった」
突然、話し出すアルフレド。受けは、何を言い出すのかと戸惑った。
「王子さえいなければ、俺のものになってくれるのではないかと頭をよぎったのだ。そんな事を思う俺は、騎士失格であるし、お前の夫としても失格だ。すまない。俺の我儘でお前を縛り付けてしまった。俺はもうお前を解放するよ。好きに生きろ。俺は、騎士を辞めて、田舎の領地で静かに暮らすから」
とうとう受けはアルフレドに見捨てられた。
あんなに拒絶されても、アルフレドを思い続ける受けなど、とても受け入れられなかったのだろう。
受けは、泣きながら頷いた。
最後になるならばとアルフレドに今までの思いをきちんと話してからあきらめようと思い、アルフレドに向かって話し出す。
「アルフレド様、今までありがとうございました。
僕は、アルフレド様に出会ってから一目惚れをしてしまい、いつも姉にくっついて貴方に会いに行ってしまいました。おかげでアルフレド様が好きな姉さまとの時間を奪ってしまってごめんなさい。僕がお邪魔虫なのは分かっていたけれど、どうしてもアルフレド様に会いたかった。
アルフレド様が僕と結婚してくれたのは、姉さまに少しでも近くにいたかったからですよね。それなのに、まるで僕は貴方に好きになってもらえているような勘違いを何度もしてしまって、やっぱりアルフレド様を諦められなかった。
僕は、アルフレド様との結婚生活をすることができて幸せでした。アルフレド様が、僕を好きでなかったことは今でも胸が引き裂かれそうなほど辛いけれども、それでも、やっぱり貴方と夫夫になれたことは後悔したくない。
姉さまとは夫婦になれないかもしれないけれども、僕と夫夫でなくても姉さまとは時々お話できるように姉さまには頼んでみます。だから、僕とは別れても大丈夫ですから。
いままで、それが言えなくてごめんなさい」
受けの話に、アルフレドが固まっていた。
これで偽りの夫夫を続けずに済むことを喜んでいるのだろうか。
アルフレドの暗い顔が少しずつ明るくなっていくのが見える。
受けは、そんな表情を見ていたくなくて、そのまま部屋から出ていこうとした。
だが、アルフレドに腕をつかまれ、それは叶わなかった。
「受けは、王子が好きなのではなかったのか?いつも、王子と離れる時にはつらそうな顔をしていたし、結婚式の時には姉になりたいと言っていたではないか?」
まさかのアルフレドの言葉に驚く受け。
慌てて首を横に振る。
「僕は、初めて姉さまについて行って貴方にお会いした時から惹かれていました。そして、会う度に貴方に惹かれてしまいました。貴方が姉さまを好きなのを知っていながら報われない恋をしていたのです」
「では何故、いつも切ない顔で王子を見ていたのだ!」
「それは、姉さまたちが仲睦まじく二人の愛が重なっていたから。僕もそんなふうに貴方と恋がしたかったから」
受けの言葉を聞き、アルフレドは受けを強く抱きしめる。
「私達は何て遠回りをしてしまったんだ。私こそ君をずっと好きだった。だからこそ君と婚姻を続ける為なら君の心が手に入らなくても良いと考えていたんだ」
抱きしめた手を緩めたアルフレドは、受けの顔を見つめてさらに言い募る。
「なあ、俺は君とやり直したい。このまま夫夫としてこれからも過ごしたいんだ。俺は受けが好きなんだ」
アルフレドの言葉に受けは、涙を流しながら頷く。
そして初めて想いが重なった二人は、唇をそっと重ねたのだった。
完
でも僕の旦那様であるアルフレド様は、他に好きな人がいた。
僕はそれを知ってて結婚したんだ。
僕はズルい人間だ。
だから、僕はアルフレド様に愛されなくても仕方ない。
◇
アルフレドは、受けの姉が好きだった。
でも、姉はこの国の第二王子と結婚した。
アルフレドは第二王子の護衛騎士だ。
受けは、姉の結婚前はよく第二王子とのデートに連れて行ってもらっていた。
受けももちろん、まだ結婚する前だ。
王子が連れておいでと言って誘ってくれたからだ。
でも、受けは二人のお邪魔虫だ。
だから、いつも二人のデートについていくとすぐに護衛騎士のアルフレドによって受けは二人から離されて、アルフレドと一緒に過ごしていた。
受けがお邪魔虫なのを分かっていてもついて行ったのは、アルフレドと一緒に過ごせるから。
たとえ、姉と受けが王子と話すのを鋭い目で見つめていたとしても、アルフレドと一緒にいられることが幸せだったから。
アルフレドは、受けさえいなければ王子のそばについて、姉と過ごすことができたはずだ。
それなのに、受けがいるせいで姉と離れなければならない。
だから、いつも受けを2人から引き離すときは、鋭く受けを睨み、受けの腕をつかんで二人から引き離すのだろう。
受けは、いつも二人から離れる時には悲しい気持ちで二人を見つめた。
なぜなら、姉と王子は相思相愛の二人で、仲睦まじかったから。
受けもアルフレドとそうなりたかった。
そんな受けの様子を見て、アルフレドは益々表情を険しくする。
「諦めろ。どんなに思っても姉のように君は愛されない」
アルフレドからは刺々しく声をかけられた。
受けの気持ちをアルフレドは気付いていたのだ。
それに受けは悲しくなり、涙を流す。
「わかっています。これは僕の片思いで決して叶わないことは。けれど、思い続けることだけは許してください」
受けが俯きながらそう言うと、アルフレドは受けの両肩をきつく握る。
「そんなにも諦められないのか。君の思いは叶わないのだ。早く君を好きな人を好きになるが良い」
受けは、完全に振られてしまったのだ。
それなのに、受けはアルフレドと結婚することになってしまった。
王子と姉が結婚する時に、同時に受けとアルフレドが結婚することを王子から命ぜられたからだ。
姉の盛大な結婚式の後、密やかに結婚式を行うことになった。
姉は自身も忙しいのにも関わらず受けの結婚式に駆けつけてくれた。
控室で受けは姉と二人で話をする。
姉は、暗い顔をする受けを見て心配していた。
受けは、ひたすら大丈夫と繰り返した。
だが、一言だけ、姉に呟く。
「僕は姉さまになりたかった。そうすれば姉さまのように僕も愛されたのに。この結婚は、僕が断らなければならなかったのに、どうしてもあの方の傍にいたくて断れなかった。だって、姉さまが結婚してしまったらもう姉さまについて行ってあの方に会うこともできなくなるのだから」
姉は何かを伝えようと受けの肩に手を乗せるのと同時に、アルフレドが部屋に入ってくる。
アルフレドは怖い顔をしたまま、受けを教会へと連れ出した。
そのまま受けとアルフレドは婚姻し、初夜を迎えた。
やっと二人きりとなったが、二人の間には沈黙が流れた。
その沈黙に耐えられなかったのか、アルフレドが口を開く。
「どんな経緯であろうと、俺たちは夫夫となったのだ。たとえ互いの気持ちが通わなくとも、俺は離婚には応じないからな。やっと手に入れた繋がりだ。受けも諦めろ」
受けは、その言葉にショックを受ける。
アルフレドは決して受けを好きになどならないのだ。
ただ姉との繋がりのためだけに受けと結婚したと宣言されてしまった。
受けは、肩を震わせる。
「旦那様は、僕の気持ちを知っていて、そう仰るのですか?旦那様はひどい」
受けのその言葉にアルフレドはため息をつく。
「そうだ。俺はひどい奴だ。憎んでも構わない。それでも俺と婚姻関係を結び続けるのであればそれで良い」
そう言いながら、アルフレドは受けにキスをしてきた。
「なぜ?私達は仮初の夫夫なのでしょう?こんなひどい事をなぜなさるのですか?気持ちの伴わないキスなど、僕は望んでいません」
受けの拒絶に、アルフレドは顔をしかめる。
「白い結婚は、どちらかの意思で離縁が可能だ。俺はそれを避けたい。諦めろ。夫夫になることを了承したのなら、受けの気持ちなど関係ない。あきらめて私に抱かれるのだな」
アルフレドのあまりにもひどい台詞に受けは涙が止まらない。
それでも、触れてくる指先はどこまでも優しく、アルフレドを嫌いになることもできなかった。
それからの結婚生活は思ったよりも穏やかでアルフレドの家族や周囲の人間からも大切にされた。
アルフレドも、姉夫婦の話題を出さない限りはいつも優しかった。
だが、姉夫婦の話を受けがすると、険しい顔で受けを責め立てた。
「俺の前でその話題をするんじゃない。まだ諦められないのか。俺とは離縁は不可能だぞ」
と言う。
受けは、決してそんなつもりで話を出したのではない。
いつか姉夫婦のように思いを通わせた夫夫になりたいだけだ。
だが、姉を好きなアルフレドからすると、二人の話題は耐えられないのだろう。
その度に、受けの胸は苦しくなった。
ある日、王子が刺客に狙われたとの話が屋敷に舞い込んできた。
護衛騎士であるアルフレドは大丈夫だったのだろうか。
受けは、居ても立ってもいられなくなり、王城へと向かった。
王子は無事であったそうだが、護衛騎士であったアルフレドは深手を負ったらしい。
慌てて、アルフレドのところへと向かう。
そこには、アルフレドと王子が二人いた。
王子は無傷であり、アルフレドはベッドにいて、包帯を右肩を中心に巻きつけてはいたものの、顔色は悪くなかった。
そんなアルフレドの様子を見て、受けはホッとしてその場に崩れ落ちた。
「良かった。あなたがいなくなったら、僕は生きていけないのです。こんなに辛い思いをしてでもあなたのそばにいることを決めたのですから」
それを聞いた王子は、受けの肩を叩いて、アルフレドとよく話をするようにと言って去っていった。
アルフレドと二人きりになる受け。
思わずアルフレドへの思いを叫んでしまい、恥ずかしかった。
アルフレドは、しばらく考え込んでいて、何も語ろうとしない。
アルフレドは、姉が好きなのにこんな受けの思いなど迷惑なのだろう。
「王子が刺客に狙われた時、一瞬動きが遅れてしまった」
突然、話し出すアルフレド。受けは、何を言い出すのかと戸惑った。
「王子さえいなければ、俺のものになってくれるのではないかと頭をよぎったのだ。そんな事を思う俺は、騎士失格であるし、お前の夫としても失格だ。すまない。俺の我儘でお前を縛り付けてしまった。俺はもうお前を解放するよ。好きに生きろ。俺は、騎士を辞めて、田舎の領地で静かに暮らすから」
とうとう受けはアルフレドに見捨てられた。
あんなに拒絶されても、アルフレドを思い続ける受けなど、とても受け入れられなかったのだろう。
受けは、泣きながら頷いた。
最後になるならばとアルフレドに今までの思いをきちんと話してからあきらめようと思い、アルフレドに向かって話し出す。
「アルフレド様、今までありがとうございました。
僕は、アルフレド様に出会ってから一目惚れをしてしまい、いつも姉にくっついて貴方に会いに行ってしまいました。おかげでアルフレド様が好きな姉さまとの時間を奪ってしまってごめんなさい。僕がお邪魔虫なのは分かっていたけれど、どうしてもアルフレド様に会いたかった。
アルフレド様が僕と結婚してくれたのは、姉さまに少しでも近くにいたかったからですよね。それなのに、まるで僕は貴方に好きになってもらえているような勘違いを何度もしてしまって、やっぱりアルフレド様を諦められなかった。
僕は、アルフレド様との結婚生活をすることができて幸せでした。アルフレド様が、僕を好きでなかったことは今でも胸が引き裂かれそうなほど辛いけれども、それでも、やっぱり貴方と夫夫になれたことは後悔したくない。
姉さまとは夫婦になれないかもしれないけれども、僕と夫夫でなくても姉さまとは時々お話できるように姉さまには頼んでみます。だから、僕とは別れても大丈夫ですから。
いままで、それが言えなくてごめんなさい」
受けの話に、アルフレドが固まっていた。
これで偽りの夫夫を続けずに済むことを喜んでいるのだろうか。
アルフレドの暗い顔が少しずつ明るくなっていくのが見える。
受けは、そんな表情を見ていたくなくて、そのまま部屋から出ていこうとした。
だが、アルフレドに腕をつかまれ、それは叶わなかった。
「受けは、王子が好きなのではなかったのか?いつも、王子と離れる時にはつらそうな顔をしていたし、結婚式の時には姉になりたいと言っていたではないか?」
まさかのアルフレドの言葉に驚く受け。
慌てて首を横に振る。
「僕は、初めて姉さまについて行って貴方にお会いした時から惹かれていました。そして、会う度に貴方に惹かれてしまいました。貴方が姉さまを好きなのを知っていながら報われない恋をしていたのです」
「では何故、いつも切ない顔で王子を見ていたのだ!」
「それは、姉さまたちが仲睦まじく二人の愛が重なっていたから。僕もそんなふうに貴方と恋がしたかったから」
受けの言葉を聞き、アルフレドは受けを強く抱きしめる。
「私達は何て遠回りをしてしまったんだ。私こそ君をずっと好きだった。だからこそ君と婚姻を続ける為なら君の心が手に入らなくても良いと考えていたんだ」
抱きしめた手を緩めたアルフレドは、受けの顔を見つめてさらに言い募る。
「なあ、俺は君とやり直したい。このまま夫夫としてこれからも過ごしたいんだ。俺は受けが好きなんだ」
アルフレドの言葉に受けは、涙を流しながら頷く。
そして初めて想いが重なった二人は、唇をそっと重ねたのだった。
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