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涙のわけ
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さまざま旅をする手続きをシフォンに頼んで、僕も旅路に出る準備を進めていた。
コンコンと部屋の扉からノックの音がする。メイドが何か荷物を持ってきてくれたのだろう。
「はい、どうぞ!」
僕は扉を見ずに返事をした。扉が開くと、大好きな声が聞こえてきた。
「アルちゃん……」
「姉様、どうしたんですか?」
顔色が悪い姉様に、荷造りをしていた手を止めて近付いた。
「アルちゃん、今回の旅はやめてほしいの」
「どうしたんですか?」
「夢を見たの」
「夢ですか?」
「うん、アルちゃんが古いお城で男が叫びながらアルちゃんを殺そうとしてくるの」
姉様は夢師だ。未来の事を、夢を通じてミエルのだ。見た夢は確実に当たる。
その夢で僕はどうやら命を狙われるらしい。
「何か原因とか分かりますか? 僕がそのような事態に陥るのは」
「女の子と一緒に隠れていたわ。服が上物だから、貴族か誰かだと思うの」
「そうですか……」
うーん、後でシフォンにも情報聞いて、古城とか調べて貰おう。その古城と女の子が生きるための鍵になりそうだ。
夢はただ、みれるだけではない。人生の分岐点の所をみせてくれるらしい。
ちなみに、兄様は人の過去を見る事ができる。
あぁ、僕の姉様も兄様も最高な魔法使いです!
「ねぁ、アルちゃん」
「なんですか?」
姉様に椅子を引いて座らせてメイドが淹れた紅茶をテーブルの上にのせた。
「今回の旅はなしに出来ないかな?」
「え?」
「駄目かな? アルちゃんが危ないのに送り出すだけなんて、私、私、変になりそうで」
そう言って、姉様は泣きだした。目からぽろぽろと涙が静かに落ちていく。
なんと美しい光景だろうか。泣いていても絵になる。いやいや、僕は慰めるために、後ろから姉様を抱きしめた。
「アルちゃん?」
これが、僕でない男がしていたら僕と兄様からの死刑宣告させて頂きます!
「どうしても、行きたいんだ。姉様! お願い、危ないけど行くのを許してほしい」
「私たちの事なら気にしなくてもいいのよ。これもこの家この国の貴族に産まれた運命なのよ。だからアルちゃんまで泣かないでよ、私また涙が溢れてくるわ」
「姉様、ごめんなさい。ごめんなさい」
「あぁ、やっぱり言っちゃうんだね」
「姉様?」
「アルちゃんは私達を好きすぎるから、謝ってでも行くと予想していたの。けど、言われると、きついな」
姉様の肩から腕を回して抱き着いていると、その僕の手をそっと触ってくれた。
「アルちゃん、何か危なかったら【水】に注意して」
「水? どうして?」
「夢をみていて言われたの、【水】が逃げるヒントになるって」
「そっか、ありがとう。流石、姉様!」
手を握り返すと、小さな頃と違う大きな手があった。
あぁ、男の子なんだなと思った。
守ってあげないといけない、小さな子とは違うのだと。
反対に私たちが守られる立場になってしまった。
どうか、この子の旅に幸がありますように。
コンコンと部屋の扉からノックの音がする。メイドが何か荷物を持ってきてくれたのだろう。
「はい、どうぞ!」
僕は扉を見ずに返事をした。扉が開くと、大好きな声が聞こえてきた。
「アルちゃん……」
「姉様、どうしたんですか?」
顔色が悪い姉様に、荷造りをしていた手を止めて近付いた。
「アルちゃん、今回の旅はやめてほしいの」
「どうしたんですか?」
「夢を見たの」
「夢ですか?」
「うん、アルちゃんが古いお城で男が叫びながらアルちゃんを殺そうとしてくるの」
姉様は夢師だ。未来の事を、夢を通じてミエルのだ。見た夢は確実に当たる。
その夢で僕はどうやら命を狙われるらしい。
「何か原因とか分かりますか? 僕がそのような事態に陥るのは」
「女の子と一緒に隠れていたわ。服が上物だから、貴族か誰かだと思うの」
「そうですか……」
うーん、後でシフォンにも情報聞いて、古城とか調べて貰おう。その古城と女の子が生きるための鍵になりそうだ。
夢はただ、みれるだけではない。人生の分岐点の所をみせてくれるらしい。
ちなみに、兄様は人の過去を見る事ができる。
あぁ、僕の姉様も兄様も最高な魔法使いです!
「ねぁ、アルちゃん」
「なんですか?」
姉様に椅子を引いて座らせてメイドが淹れた紅茶をテーブルの上にのせた。
「今回の旅はなしに出来ないかな?」
「え?」
「駄目かな? アルちゃんが危ないのに送り出すだけなんて、私、私、変になりそうで」
そう言って、姉様は泣きだした。目からぽろぽろと涙が静かに落ちていく。
なんと美しい光景だろうか。泣いていても絵になる。いやいや、僕は慰めるために、後ろから姉様を抱きしめた。
「アルちゃん?」
これが、僕でない男がしていたら僕と兄様からの死刑宣告させて頂きます!
「どうしても、行きたいんだ。姉様! お願い、危ないけど行くのを許してほしい」
「私たちの事なら気にしなくてもいいのよ。これもこの家この国の貴族に産まれた運命なのよ。だからアルちゃんまで泣かないでよ、私また涙が溢れてくるわ」
「姉様、ごめんなさい。ごめんなさい」
「あぁ、やっぱり言っちゃうんだね」
「姉様?」
「アルちゃんは私達を好きすぎるから、謝ってでも行くと予想していたの。けど、言われると、きついな」
姉様の肩から腕を回して抱き着いていると、その僕の手をそっと触ってくれた。
「アルちゃん、何か危なかったら【水】に注意して」
「水? どうして?」
「夢をみていて言われたの、【水】が逃げるヒントになるって」
「そっか、ありがとう。流石、姉様!」
手を握り返すと、小さな頃と違う大きな手があった。
あぁ、男の子なんだなと思った。
守ってあげないといけない、小さな子とは違うのだと。
反対に私たちが守られる立場になってしまった。
どうか、この子の旅に幸がありますように。
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