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輝蓮(二)
しおりを挟む「汚らわ……、しい」
震えた朱唇からついて出たのは、下々をさげすむ時と同じ辛辣な言葉だった。蓮珠が教わった男女の交わりというのは、それぞれの体の違いや機能についてよりも作法を重んじた内容である。もちろんそれは後宮で皇帝の閨にはべるための作法で、皇帝がひざまずいて女性の足を愛でるなんて出てこなかったし、足にくちづけるなんてとんでもない話だ。
蓮珠、と濤允の唇が足の肌を上へ滑る。足首をちゅっと吸いながら、濤允が裙の裾をめくり上げた。頭頂で丸められた濤允の黒髪と、それを留めている黄色がかった象牙のかんざしにふわりと裙の裾がかぶさる。濤允はそのまま裙の中にもぐって、蓮珠の柔らかな脹脛にくちづけ、その肌をぺろりと舐めた。
「い、嫌……っ!」
生温くて湿ったものが肌を這う感触に、蓮珠の目から涙がほろほろと落ちる。拒むように足を閉じようとすると、脹脛を甘噛みされて右足の内腿を手でなでられた。
「……ひっ」
恐怖の悲鳴が蓮珠の口からもれる。もぞもぞと裙がうごめいて、濤允の吐息が左足のひざをかすめた。裙の中が異様に暑い。ちゅ、ちゅと肌を吸われる音が響いて、おぞましさに耳をふさぎたくなる。しかし、寝台についた両手を離してしまうと、そのまま上体が仰向けに倒れそうになるからそれはできない。
蓮珠のそんな困惑を愉しむかのように、濤允が赤い裙の中で蓮珠の脹脛や太腿を手と口で堪能する。まるで、生きながら食われる獲物のような気分だった。
裙のふくらみが、体の中心に向けて移動していく。下穿きの脇を舐められて、蓮珠はたまらず体をびくんと震わせた。すると、左右の太腿の裏を持ち上げられて、蓮珠の上体はいとも簡単に寝具の上に倒れてしまった。
寝所は、煌々とろうろくの明かりに照らされている。涙でうるむ目に飛び込んできたのは、寝台の天井に施された見事な組細工だった。浄土を舞う迦陵頻伽という首から下が鳥の姿をした美しい天女と、池に浮かぶ無数の蓮が、細い木の桟を組み込んで描かれている。
蓮珠が初めて楊濤允と顔を合わせたのは、数年前。皇宮で催された、太皇太后の古希を祝う宴の場だった。陛下は、金を刷いた荘厳な衣装をまとって太皇太后と上座に並んでおられた。そして、楊濤允は、対照的な地味な色合いの深衣と着丈の長い表着に身を包んで、ならず者にお似合いの末席に慎ましく座っていた。
「……あっ」
自分でも驚くほど素っ頓狂な声が出てしまった。下穿きの上から、秘苑を舐められたのだ。大きく開いた脚の間で、濤允が裙を揺らしながら執拗にそこをぴちゃぴちゃとねぶる。絹の薄布は、あっという間に濤允の唾液に濡れて蓮珠の女陰に張りついた。
時折湿った息をかけながら、割れ目から少し飛び出た粒を尖った舌先でつついて、ちろちろと舌を動かしながら濤允がそれを器用に口に含む。そうされる度に腹の奥が疼いて、蓮珠は逆手で寝具にしがみつきながら背中をしならせた。
「い、や……、ああっ!」
今度は、下穿きをずらして直に秘帯をまさぐられる。舌の先が花弁を割って、口が汁をすするような音を立てながら秘処を吸い、さらには後孔まで舐め回された。
「……よして、おねが、い」
息の上がった蓮珠の声に抵抗の効力はなく、裙にひそむ魔の欲情をあおる一方だ。濤允は、下穿きの紐をといて剥ぐように取り払うと、蓮珠の股間に顔をうずめてそこに食らいついた。ささやかな陰毛が隠すその場所は、温かくとてもよい香りがする。
まだ固い洞をほぐすように舌先を挿れて、親指の腹で陰核を押し潰すように優しくこね回す。そこからじわりと湧いてしたたる汁は、喉の渇きをうるおす水蜜桃のように甘い。
「んっ、んっ……」
蓮珠は、右手の甲で自分の口をふさぐ。精一杯声を押し殺すが、我慢ができない。嫌でたまらないのに、神経が快楽を拾ってくる。裙の中で、あの人がどのような顔をして蛮行に及んでいるのか。考えるとぞっとし、同時に、あられもない所を見られている羞恥に身悶えてしまう。
敏感になった尖りに濤允が吸いつく。そして、舌とは違うものが体の中に侵入してきた。
「は……っ、あ……、んんっ」
こりこりといきり勃った突起を舌先でつつかれ、強く吸われてゆるく噛まれる。そうしながら、指と思しきものが膣壁を擦って孔を押し広げた。初めての感覚が一気に押し寄せて、蓮珠の体を支配する。体が熱い。触られているところから、体の隅々におかしな血が巡っていく。中をかき混ぜられて、ぐちゅぐちゅといやらしい水音がした。体が、びくんと大きく震える。
「あっ、あっ……、ああ――っ!」
突然、視界がはじけて頭の中が真っ白になった。はぁはぁはぁ。遠くから聞こえてくるのは、自分の呼吸だろうか。体に力が入らない。蓮珠がうつろな目を上に向けると、そこには濤允の顔があった。
「本当は、根気強く待とうと思っていました。しかし、月を眺めるあなたが、あまりにも美しいので我慢ならなかった。お許しを、蓮珠」
秀麗な顔に穏やかな笑みを浮かべて、濤允が蓮珠の頬をなでる。見る限り、彼の深衣の衿はきれいに閉じていて乱れている様子はない。自分の衣だって、上半身にゆるみはない。しかし、裙の裾はへそが見えるほどまくり上げられて、散々いじくられたところには熱くて硬いものがあてがわれている。これから濤允がなにをするのか、未経験の蓮珠にも理解できた。
――なにを許せというの? わたくしはここから逃げ出すこともできないのに。
頬から、濤允の手が離れる。蓮珠が黒瑪瑙のような目を見開くと、濤允の舌と手でしとどにふやけた秘裂に熱塊が突き立てられた。
「ああっ!」
鮮烈な痛みに、意識を覆っていたもやが一気に晴れる。隘路を無理やり広げ、えぐるように貫かれて、蓮珠は白い喉をのけ反らせた。両の手に、濤允の手が重なって指が絡む。蓮珠が無意識にその手を握ると、濤允が体重をかけて挿入を深くした。痛みを逃そうと、蓮珠が息を詰める。
「ふ……、っ」
「蓮珠、息を止めないで」
耳の近くで、切なげな男の声と歩揺の金属音がする。ああ、この世の終わり。そのような言葉が、なんとなく蓮珠の頭に浮かんだ。
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