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4.嘘ついてる事は分かってる
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明かりを付けたい男と真っ暗にしたい私。
些細な主張のぶつかり合いを折れたのは「金を要求するならそれくらいは折れろ」という一言のせいだった。
「別に貰うもんもらったからって、特別なサービスなんてしないから」
「そんな事は最初から期待していない。俺はお前の身体をちゃんと見たいだけだ」
「……あっそ。ならいいけどね」
ランプに火を灯した男がベッドに近寄ってくる。
外套を脱いだ下にはやっぱり騎士の象徴である剣が下げられていて、けれど躊躇いもなくそれも外してしまった。
「アリーサ」
「あ、待って。そう言えば名前すら聞いてない」
大きな手に肩を掴まれて、そのままベッドに押し倒される。
整った顔が近付いてきてキスをされる直前、男の名前すら聞いてなかった事を思い出した。
一晩だけの相手だから知らなくてもいいんだけど、一方的に知られてるだけっていうのもなんだか面白くない。
大したことをたずねたつもりもないのに、けれど男が私を見つめてくる。なんだか居心地が悪くなるくらいに、じっと。
「……なに? 自由騎士は名乗っちゃいけない決まりでもあるの?」
「そんな事はないが……」
言いよどむ理由が分からない。
あ、でも自由騎士で魔法も使えるなんて嘘ついてるから言いにくいのかも。別に名前くらいで何かがあるわけでもないし、嘘ついてる事はもう分かってるんだけど。
「まぁ言いたくないんならいいけど」
こっちが引くと、男が頷く。
まぁ一晩だけの関係だからね。お金はもらってるし、少しくらいは目をつむろう。
男の襟元を掴んで引き寄せる。ほんの少しの抵抗があったけれどすぐに顔は近づけられて唇が触れ合った。
一瞬で離れて、そして目を開けると視線が絡む。
こいつ目を閉じなかったな。まぁいいけど。至近距離でも顔が良いから許す。
じっと見られてるけど無視して、私はまた自分だけ目を閉じてキスをした。
触れ合うだけのキスを繰り返す。
唇の柔らかさを堪能していると、ちろりと舐められた。いいよ、という返事の代わりに薄く開くと隙間からにゅるりと侵入される。
ちろちろと伺うように舌を舐められる。
うん、いいな。
この男とのセックスは期待が出来そう。
ベッドに入るなりいきなり胸をわし掴んだり、あまつさえいきなり突っ込もうとしてくるようなのもいたし。
一回だけでもどうせするからにはこういう触れ合いだって楽しみたい。
舌での探り合いをして、そうしてやっと絡み合う。
「……んんっ!」
お互いの唾液の音が聞こえてくるくらいに激しくなるのはすぐだった。あっという間に翻弄される。
口内のどこもかしこもまさぐられるみたいに舐められる。
呼吸すら飲まれるかと思うくらいに。
気持ち良さと苦しさに頭がくらくらする。
「あ……、はぁ」
男の舌がやっと出ていってくれて、大きく息を吸った。
口の端から溢れた唾液を男の指にぬぐわれる。指先が固いから、騎士だっていうのは本当かもしれない。
「脱がせるぞ」
「ん」
些細な主張のぶつかり合いを折れたのは「金を要求するならそれくらいは折れろ」という一言のせいだった。
「別に貰うもんもらったからって、特別なサービスなんてしないから」
「そんな事は最初から期待していない。俺はお前の身体をちゃんと見たいだけだ」
「……あっそ。ならいいけどね」
ランプに火を灯した男がベッドに近寄ってくる。
外套を脱いだ下にはやっぱり騎士の象徴である剣が下げられていて、けれど躊躇いもなくそれも外してしまった。
「アリーサ」
「あ、待って。そう言えば名前すら聞いてない」
大きな手に肩を掴まれて、そのままベッドに押し倒される。
整った顔が近付いてきてキスをされる直前、男の名前すら聞いてなかった事を思い出した。
一晩だけの相手だから知らなくてもいいんだけど、一方的に知られてるだけっていうのもなんだか面白くない。
大したことをたずねたつもりもないのに、けれど男が私を見つめてくる。なんだか居心地が悪くなるくらいに、じっと。
「……なに? 自由騎士は名乗っちゃいけない決まりでもあるの?」
「そんな事はないが……」
言いよどむ理由が分からない。
あ、でも自由騎士で魔法も使えるなんて嘘ついてるから言いにくいのかも。別に名前くらいで何かがあるわけでもないし、嘘ついてる事はもう分かってるんだけど。
「まぁ言いたくないんならいいけど」
こっちが引くと、男が頷く。
まぁ一晩だけの関係だからね。お金はもらってるし、少しくらいは目をつむろう。
男の襟元を掴んで引き寄せる。ほんの少しの抵抗があったけれどすぐに顔は近づけられて唇が触れ合った。
一瞬で離れて、そして目を開けると視線が絡む。
こいつ目を閉じなかったな。まぁいいけど。至近距離でも顔が良いから許す。
じっと見られてるけど無視して、私はまた自分だけ目を閉じてキスをした。
触れ合うだけのキスを繰り返す。
唇の柔らかさを堪能していると、ちろりと舐められた。いいよ、という返事の代わりに薄く開くと隙間からにゅるりと侵入される。
ちろちろと伺うように舌を舐められる。
うん、いいな。
この男とのセックスは期待が出来そう。
ベッドに入るなりいきなり胸をわし掴んだり、あまつさえいきなり突っ込もうとしてくるようなのもいたし。
一回だけでもどうせするからにはこういう触れ合いだって楽しみたい。
舌での探り合いをして、そうしてやっと絡み合う。
「……んんっ!」
お互いの唾液の音が聞こえてくるくらいに激しくなるのはすぐだった。あっという間に翻弄される。
口内のどこもかしこもまさぐられるみたいに舐められる。
呼吸すら飲まれるかと思うくらいに。
気持ち良さと苦しさに頭がくらくらする。
「あ……、はぁ」
男の舌がやっと出ていってくれて、大きく息を吸った。
口の端から溢れた唾液を男の指にぬぐわれる。指先が固いから、騎士だっていうのは本当かもしれない。
「脱がせるぞ」
「ん」
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