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5.今となってはどうでもいい

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 こくりと頷いて、私も男の服を脱がせようとした。
 けれどその手を取られる。

「俺はいい」
「なんでよ? そういう趣味? 私は素肌同士で触れ合うのが好きなんだけど」
「……あまりキレイじゃないからな。引くなよ?」
「何それ」

 まるで初めての女の子みたいだ。
 笑いそうになりながら、でも気にしないで脱がせた。
 別に肌のキレイさなんて求めてないと、そう思ったんだけど。

「これ、どうしたの?」

 筋肉質な身体の、肩の皮膚が大きく引き攣れてる。
 気にしてるみたいだったからもしかして言わない方がいいかなってちらっと掠めたけど、見えてるものを敢えて見ない振りするのも不自然だろう。
 生々しさはないから最近どうにかなったものじゃないみたいだけれど、それでも痛々しい。

「ドラゴンの吐く炎にやられた」
「……え? それって普通丸焦げにならない?」
「魔法障壁を張れるからそこらのヤツら程には問題にはならない。ただ流石にドラゴンを一人でってのは無傷ではいかなかったってだけだ」

 嘘のくせに設定が凝ってるなぁ。
 そう思いながら脇腹にある大きな傷跡を指さす。

「こっちは?」
「小さい頃に訓練でやられた」
「訓練で!?」

 いや普通にすごい深そうで死んでもおかしくなさそうだよ!?

「『故郷に帰りたいなら強くなれ』って、容赦無かったからな。実際に何度も死にかけてる」

 男が脇腹を撫でながら、でも何でもないことのように言った。
 見ればその二箇所に限らずあちこちが傷だらけだ。服を脱ぐのに躊躇ったのも納得できる。

「痛くないの?」
「そりゃそん時はのたうち回ったしそのまま死にたくなったことも片手じゃ数え切れない。だがな」

 男がどうしてか話しながら私を見て、ドキッとした。
 そんなのは初めてで理由はよく分からない。以前に関係を持った男の誰にもときめいたことなんてなかったのに。

「今となっては全てどうでもいい事だ」
「ひゃっ」

 男の大きな手に前触れなく服を脱がされる。
 話をすることに意識を取られてたせいで心の準備も出来てなかったのに、ぽいぽいと手際良く下着まで全て剥ぎ取られて。
 私はランプの光に照らされた部屋の中で全裸にされてしまった。
 肩を押されてベッドに沈む。

 上から男がじろじろと遠慮のない視線で私の身体を眺める。
 セックスするのなんて初めてじゃないのに、どうしてだか恥ずかしいような気がした。

「……何?」
「キレイだなと思ってな」
「あ、そう。……んっ」

 胸を持ち上げるように寄せられて、乳首をぴんっと弾かれた。
 それだけで声が漏れたのを笑われる。
 悔しさに睨もうとして、でもその前にまたも乳首を弾かれて身体がぴくんと跳ねる。

 はじかれて、潰されて、摘まれて。
 男の人差し指と親指だけの動きに、自分の息が荒くなっていくのが止められない。
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