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崩壊

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 隼人は暫く黙ったまま涙を流す様を見つめていた。普段の強面が一瞬思い出せなくなりそうな、崩れ落ちてしまいそうな顔をしている。
「終わるって、どういうこと?」
 隼人は人差し指でとめどなく溢れる涙に触れた。拭ってくれようとしているのかも知れないが、後から後から涙は流れていくため隼人の指を濡らすだけだった。
 それは自分の気持ちが止められなくなるから――
 しかしそれを告げるのは好きと告げるのと同じことだ。俺はしゃくり上げるだけで何も答えられない。
 そのうちに涙を拭う手が離れていく。
「もういいや。聞きたくない」
 寂しそうな声で呟くと、隼人は俺の顔の横に座って顎を掴み、自分の方へと向かせた。そうして唇に男性器の先を押し付ける。
「マジでもういいや、なんでもいい。萎えたから舐めろよ」
 こんな状態でできるわけないと顔を見上げれば、舌打ちをされ首の根っこを掴まれた。眉を顰めた顔は悲しそうにも怒っているようにも見える。
 しかし顔を逸らそうとしても逃がしてはくれないその手の力は強く、首の骨が折られるんじゃないかと思うほどだ。きっと怒りに震えているのだろう。
「舐めろっつってんだろ。ぶん殴られたいの?」
「む、ぅぅ……!」
 上唇と下唇を男性器の先で擦られ、特有の臭いが鼻をつく。ああ、昔から好きなあの臭いだ。頭が麻痺してしまう臭い……
 俺が鼻をヒクとさせたのを気付かれ、鼻の先にも性器を擦られた。そうしているうちにそこはまた硬さを取り戻していき、先走りを流して俺の鼻をぬらぬらと濡らし汚しながらさらに鼻腔をくすぐってくる。
 あ、あ、だめだ。口が開いてしまう。
「あ……あぁ……」
 だらしのない声を出しながら唇を開き、舌を伸ばした。
 舐めたい、舐めたくて口に入れて欲しくて仕方ない。
「エッロ……つーか、スケベな顔。好きじゃなくても舐めたいんだ」
「や……ちがう」
「どうしたいの? 言えよ」
「あ、いえな……」
「お前なんにも言えねぇの?」
 上唇に触れてきたのですぐ舌を伸ばしたが、また鼻の先に戻っていく。
 あぁ舐めたい、舐めたい……
 臭いを嗅ぐのに必死で、舌を出して口を開けたままハァーハァーと犬のような荒い呼吸を繰り返す。外聞など気にしていられぬほど久しぶりに嗅いだこの臭いは強烈な刺激を脳に与えてくる。
 何も触られていないのに感じているような状態であったが、隼人はなかなか銜えさせてくれず、興奮状態の俺の性器に手を伸ばした。先ほどイキそうなところでお預けをくらい、ガチガチに張り詰めていたそこは突然強く握られ上下に扱かれたことに耐えきれなかった。二度、三度、四度……たったそれだけの刺激に我慢ができない。
「あ、あ、やめ、あ、あ、あっ」
 隼人の臭いを嗅ぎながら腰がビクンビクンと震え、精液が弾け飛ぶ。
「ああああっ!!」
 ぴゅるっと勢いよく出たその液体は自分の首元まで届いた。頭がチカチカするのを感じながらビクビク背中を震わせる。
 しかしそれでもなお隼人はゆるい扱きを止めてくれない。腰が浮いたり引けたりして格好悪くへこへこと揺れてしまう。
「やぁ……きもちひぃぃ……」
 口を開けたままの変な発音で思わず漏れた声……いつもなら恥ずかしくて聞いていられないが、自分の声ではないみたいで興奮をさらに掻き立てる。
「だめ、だ、しごいちゃぁっ……ううぅ……っ」
「あれ、またなんかぴゅって出た?」
「ない、いってないぃ」
「じゃあもっと扱かないと」
「ああああぁぁ! やだ、やめああっ、あああっ」
 下の方からぐぢゅぐぢゅぐぢゅぐぢゅと聞こえてくる。精液と我慢汁でベトベトになっているのに激しく扱きあげられれば当然だ。
 腰が強張り震える。また、また出ちゃう……イッてしまう。
「ちんこの臭い嗅ぎながらイクとかマジで淫乱だな」
「やだっ、ああっあああっ、イクの、やだっ」
「嫌じゃないだろ? イッていいよ」
 意地悪な低い声にいきなり優しさが見え隠れし、空いていた手で俺の髪を撫でた。優しい手の動きと一緒にふわっと身体が浮いていく様な感覚を感じ、再び果ててしまった。
「はやと、あっ、はやと、はやとっ、あ、あああっ」
 敏感になった身体は精液が尿道を擦りあげながら排出されていく感覚までしっかり味わい、もう何が何だかわからないほどの衝撃だった。
「あ、あ……出てる、出てるぅ……」
 あまりの感覚に一度は止まっていた涙がまた流れる。
「あぁ……こんな、こんな……ううう……やだぁ……」
「どうしたんだよ。気持ち良すぎて混乱してんの?」
「あぁ…………あぁ……」
「そんな顔して……もうなんもしてねぇよ?」
 そうなのだ。もう何もされていないというのに、身体がいつまでも熱くとけていた。部屋も何もよく見えずわからない中、笑う隼人の顔だけが見える。
「で、これどうしたい?」
 飛び出していた舌先にぴとっと一瞬滑らかな鈴口が触れる。こちらの理性を壊すには十分な焦らしだった。
「舐めたいっ……くちに、いれたい……」
「玲児は本当にちんこ好きだな」
「はやとの、すき……あ、ほしいぃ」
「泣くなよ、可愛いな」
 焦らされすぎてだだっ子のようになってしまう。隼人は優しく頭や頬を撫でてくれた。
「俺のことも好きって言ってくれよ……」
「む……? すき……」
「え?」
「すきだ……」
 理性も飛んでいたし、何も考えていなかった。思った言葉がただ口から出ていく。
 隼人はそれを聞いて目を細めて歯を食いしばっていた。苦しそうだった。
 隼人が悲しそうなのは嫌だった。
「はやと……」
 呼びかけて、もう一度好きと声に出そうと口を開けたら、隼人は俺の前髪を掴んで開いた口に男性器を捩じ込んだ。はじめから喉奥までつかれ、むせそうになるのを必死でこらえる。
 苦しいのに、嬉しかった。
 隼人が口いっぱいに入ってる。
 隼人の顔を見たくて目を開くと、目が合った。その見下した瞳は冷たくて、こちらが萎縮すると前から首に手をかけられた。喉仏に指が食いこむ。
「玲児……お前ほんっと可愛すぎて殺してやりてぇ」
「むぐっ……」
 喉を突きながら、浅く首が締められる。苦しくて喉の奥が締まる……そうなると喉の奥から上顎の粘膜を擦りあげられるのが気持ち良かった。
 隼人の性器はたくさん舐めたがいつも一方的で自分の好きなようにやっていた。舐めるのが好きでたくさん吸い付いていたが、こんな風に喉の奥を突かれるのは初めてだ。だからそれがこんなに気持ちがいいだなんて知らなかった。
 腕を拘束されて身動きもできず、首に手をかけられて、好き勝手に口を……いや喉を使われ。
 隼人は俺に“自分の物になれ”と言うが、こんなのまるきり隼人のものじゃないか。何度も往復してくる性器が苦しいのに、苦しいほど隼人のものになったような気がして満たされていく。
 隼人のものになれないのに、俺は隼人のものだ。
 息ができない。
 むせ返るような臭い。
 本当にどうにかなってしまう。
「玲児、玲児……」
 隼人は名前を呼びながら遠慮なく腰を振っていた。奥に入る時に首を絞められ、抜かれる時に解放される。
 支配されているような感覚にこのまま殺されてしまったら気持ちいいかも、などと馬鹿なことを考えていたら隼人は腰を引いて口から性器を抜いた。
 やだ、だめだ。
 足りなくて舌を懸命に伸ばす。しかしそうせずとも舌に男性器を乗せてもらえた。嬉しくてすぐに尿道口あたりをぺろぺろと舐める。
「はぁ……そうそう、今度は舌使え」
 首にかけられていた手は離れ、前髪をかきあげながら額に触れた。
 乱暴にされて優しくされて、この繰り返しが癖になってくる。
 鈴口に舌を密着させ、ぐるりと何周もする。時折先をちゅ、と吸って、くびれている部分を舌先でつついて。拘束されているために頭が自由に動かせないのがもどかしい。もっと根元まで舐めたいのに。
「玲児……可愛いな。そんな一生懸命舐めて。おいしそうにするよな」
「んむ……おいひぃ……」
「可愛いの見てるとイライラする」
 グッとまた舌を滑り喉奥まで性器が押し込められ、首をきつく絞められた。
「和人さんにもそんな風にしてたかもしんねぇの? 俺のこと好きでもないのにそんななるんだろ? 絶対に嫌だ。絶対、絶対に……」
 絞める力が強くて何度もえずくが解放はされず、胸がどんどん苦しくなって、目の前がチカチカして、足をバタつかせるがだんだん手足も痺れてきて……だめだ、意識が遠のいていく。
 口の端から唾液が流れる。酸素が足りなくて何もかもが遠くに感じる感覚は思ったよりも気分がよかった。
 本当に自分はこのまま殺されてしまうのだろうか。隼人にされるのなら、それもいいかもしれない。隼人とは上手くいかなくて苦しいばかりなのだからこうやって隼人のものになるのもいいかもしれない。
 隼人は悲しむだろう。少し嫌だけど、そうして俺のことを忘れなければいい。
 しかし、そうはならなかった。
 意識が飛ぶ、と思った瞬間、性器は抜かれて首は開放された。すぐにハァッと大きく息を吸い、突然大量に送られてきた酸素に身体がついていけず何度も咳き込んだ。
 隼人がそんな姿を見てどんな顔をしてたかなんてわからない。ただ彼は拘束していたベルトを外して涙目で荒い呼吸をする俺を抱きしめた。
 腕は自由になっても抱き返す力が残っていない。久々に視界に入った手首はベルトの跡ができていて、痺れていた。
「玲児、逃げる?」
 問われて首を横に振った。
「玲児、好きだよ。好きなんだよ」
 跡の残る手首の、脈が打つ場所を口付けされ、そのまま彼の手によってベットに両手を縫われた。
 ふわりと唇が重ねられたと思ったら、その唇は身体の至る所を熱くした。耳、首筋、鎖骨、肩、胸、肋骨……だんだんと下りていくながら、手は尻の後ろに回された。指を這わされたそこはもうすっかり乾いてしまっている。
 隼人に両足を開かれて全てが光の下にさらけ出されてしまうが、もう抵抗する力など少しも残っていなかった。されるがままに足を開くだけだ。
「ここに何度も入ってたんだな」
「あっ……」
 穴の表面を舐められ、一度だけ舐められたことがあるとはいえ久しぶりすぎるその感覚に背がぶるりと震えた。
「舐められると、もっとして欲しくなるって言ってたよな」
「はぁ……あ……あ……」
「なぁ、これだけで無理矢理入れたらやっぱり痛いかな」
 少し唾液を絡ませた程度の穴に男性器が宛てがわれた。ちゅぷ、ちゅぷ、と尻の穴と尿道口が何度も口付ける。もどかしいが、まだ中は固く入るわけがない。
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