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第七章 見知らぬ美青年(麗夜side)

39.俺は蒼を本気で愛しているんだ

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 確かにそうだ。蒼にお金を渡す代わりに製品テスターの仕事を持ちかけたという点ではちはるのしていることと大差ないかもしれない。
 重いと思われるのが怖くて俺は蒼にこの気持ちを打ち明けていないから、蒼からすれば身を売っているのと何も変わらないだろう。でも蒼のしていることはただの枕営業じゃない……。

「一緒にしないでくれ、……俺は蒼を本気で愛しているんだ」

 ちはるは目を見開いた。
「はあ? 遊び人で手が早いって有名なあんたが、どうしてあのぬぼっとした野々原を本気で好きだなんて言うんだよっ……」
「俺はもう遊び人じゃないんだ。どうしてなんて言葉じゃ説明できないが、俺はどうしようもないくらい蒼に惹かれてしまっているだ」
 自分でもびっくりだ。派手好きで遊び好きだった俺が、たった一人の人間にここまで執着してしまっていることに。

 ちはるは俺の発言を聞いて面白くなさそうにムッと口をへの字にしていたが、しばらくしてニヤニヤと笑いだした。
「……何がおかしい?」
「あーあ、かわいそう。いやね、今頃、野々原はどうなっちゃったかなって思って……」
「どうなったって……。お前、蒼に何かしたのかっ!?」

 俺はちはるの肩を掴んで問いただした。
「ムカつくから始末したくってね、でも僕は自分の手は汚したくないタイプだから。闇バイトを雇って野々原を襲わせてもいずれ僕が疑われるかもしれない。だから慎重に、探偵を雇って色々調べさせたんだ。そしたらあいつの住んでるボロアパートの隣人の李っていう男は違法就労者な上に、色々やらかして追われている身みたいだから、そいつを探している奴らに居場所を教えてやったんだ。相手は手段を選ばないような裏社会の人間だから、隣に住んでる野々原も巻き込まれてひどい目に遭ってるんじゃないんじゃないかな?」
「なんだとっ……」

 ちはるは楽しそうに言った。
「あの廃墟みたいなアパートごと、ドカーンと爆破されている頃かもね」

 俺はいてもたっていられなくなり、荷物を持ってホテルを出た。通りへ出て辺りを見回すとそこは俺の見慣れた景色だった。
 ホテルには意識がない状態で連れてこられていたのでどこかと思っていたが、ヤナイという男と飲んでいたバーのそばだった。ここなら割と自宅も近い。

 閑散とした真夜中の道を走っているうちに睡眠薬か何かを飲まされてボーっとしていた頭はすっきりと覚めた。駅前の道でタクシーを呼び止めて自宅へ帰った。元々酒は飲んでいなかったから、自宅マンションの駐車場から車を出して乗り込んだ。
 無事を願いながら蒼のアパートへ車を走らせた。
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