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第八章 彼の気持ち(蒼side)
44.どういうこと!?
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僕は壁に張り出された営業成績のグラフを見た。前四半期のときは僕の名前の上だけ空白だった棒グラフ。
……あれ、また空白? 僕の名前の上だけ?
「な、なんで? どういうことだ……っ?」
悲鳴みたいた声を上げたのは隣にいた津田くんだった。
よく見たら契約件数がゼロなのは僕じゃなくて隣の津田くんだ。
「課長っ! これ、どういうことです!? このグラフ間違っていますけどっ!」
津田くんは鬼塚課長に詰め寄った。
「あ? グラフは間違ってなどいない。お前が今期取った契約は今日までに全てキャンセルされていてお前の契約件数はゼロになっているんだ」
「そ、そんな……」
「お前は何もわかっていないな。裏から手を回して契約を取ったって、結局すぐに解約されるもんなんだ。その場しのぎの手段でごまかせるほど営業の仕事は甘くない。相手との信頼関係がものを言うんだ」
津田くんは悔しそうに床を踏みしめた。
「くそっ……」
「それに引き換え、野々原は今期よく頑張ったな」
鬼塚課長は僕の肩を叩いた。
僕は自分の名前の上に長く伸びた棒グラフを見た。これは全て麗夜さんのおかげで取れた契約だ。
「いえ、僕の頑張りではないんです。実は僕も最初に大口契約してくれた社長からの紹介でその後も契約が取れていただけなんです。……だから実力じゃないですよね」
津田くんが何をしたかは知らないけど、たぶん僕も津田くんと同じだと正直に告白した。
「それだけの顔の広い社長に気に入られたのはお前の人柄や姿勢が評価されたからだ。思うような成果が出せなくてもひたむきに努力していたことがそういう形で実を結んだんだ。自信を持て」
心底悔しそうな津田くんは廊下へ飛び出て行って電話をし始めた。
「どうなってるの、パパっ!?」
興奮のあまり大声になっている津田くんの電話の声は僕たちにしっかりと聞こえた。
「パパ?」
「え、何?」
とオフィス内はざわついた。
「僕に飽きたからパパ活を終わらせるって、そんな一方的なっ! 他にもっといい子ができたって、ちょっと待ってよ!」
パパ活? 津田くんってそんなことしてたの?
「なんだよっ! ふざけやがって、どんな気持ちで僕がお前のようなおっさん相手に枕営業してきたと思ってんだっ! もういいっ!」
枕営業っ……!?
営業成績優秀だった彼は全然契約取れない僕にたびたび説教みたいなアドバイスをしてきていたのに、そんな彼が枕営業で契約を取っていたなんて……。
みんなに丸聞こえだったとも知らずに津田くんは涼しい顔で戻って来た。
……あれ、また空白? 僕の名前の上だけ?
「な、なんで? どういうことだ……っ?」
悲鳴みたいた声を上げたのは隣にいた津田くんだった。
よく見たら契約件数がゼロなのは僕じゃなくて隣の津田くんだ。
「課長っ! これ、どういうことです!? このグラフ間違っていますけどっ!」
津田くんは鬼塚課長に詰め寄った。
「あ? グラフは間違ってなどいない。お前が今期取った契約は今日までに全てキャンセルされていてお前の契約件数はゼロになっているんだ」
「そ、そんな……」
「お前は何もわかっていないな。裏から手を回して契約を取ったって、結局すぐに解約されるもんなんだ。その場しのぎの手段でごまかせるほど営業の仕事は甘くない。相手との信頼関係がものを言うんだ」
津田くんは悔しそうに床を踏みしめた。
「くそっ……」
「それに引き換え、野々原は今期よく頑張ったな」
鬼塚課長は僕の肩を叩いた。
僕は自分の名前の上に長く伸びた棒グラフを見た。これは全て麗夜さんのおかげで取れた契約だ。
「いえ、僕の頑張りではないんです。実は僕も最初に大口契約してくれた社長からの紹介でその後も契約が取れていただけなんです。……だから実力じゃないですよね」
津田くんが何をしたかは知らないけど、たぶん僕も津田くんと同じだと正直に告白した。
「それだけの顔の広い社長に気に入られたのはお前の人柄や姿勢が評価されたからだ。思うような成果が出せなくてもひたむきに努力していたことがそういう形で実を結んだんだ。自信を持て」
心底悔しそうな津田くんは廊下へ飛び出て行って電話をし始めた。
「どうなってるの、パパっ!?」
興奮のあまり大声になっている津田くんの電話の声は僕たちにしっかりと聞こえた。
「パパ?」
「え、何?」
とオフィス内はざわついた。
「僕に飽きたからパパ活を終わらせるって、そんな一方的なっ! 他にもっといい子ができたって、ちょっと待ってよ!」
パパ活? 津田くんってそんなことしてたの?
「なんだよっ! ふざけやがって、どんな気持ちで僕がお前のようなおっさん相手に枕営業してきたと思ってんだっ! もういいっ!」
枕営業っ……!?
営業成績優秀だった彼は全然契約取れない僕にたびたび説教みたいなアドバイスをしてきていたのに、そんな彼が枕営業で契約を取っていたなんて……。
みんなに丸聞こえだったとも知らずに津田くんは涼しい顔で戻って来た。
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