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彼女の片想い******
絶対、ムリ。5
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坂本くんに断りのメッセージを入れようと思ったけれど、兄が明日の朝延期を伝えると言っていたので、日曜日に連絡することに決めた。
なんだか眠たくて、眠たくて、目覚めては水分を取り、また眠った。朝、目が覚めたのは10時過ぎていて、思考は定まらない。坂本くんの夢ばかりを見た気がするけど、思い出すことはできなかった。
家を建て替えたし、2階から1階に移ったので、自分の部屋という感覚は薄かったけれど……目がさめるたびに整えられた新しいおしぼりと、お水。綾香さんの気遣いに感謝して、安心して眠ることができた。
眠っている間に、メッセージを受信していて、慌てて確認する。いくつかのダイレクトメールと、友人からの誘いと、やっぱり坂本くんからのメッセージだった。
『熱が出たと聞きました。大丈夫?今、そばに居られないのが残念です』
坂本くんは、相変わらず思わせぶりだ。メッセージは更に続いている。
『近いうちにご自宅へ伺います。断られ続けたお部屋より、実家に先に伺うことになるとは思ってなかったけど。お兄さんと約束したから、反故になんてならないからね』
……先手を打たれた。文面から、坂本くんの表情が浮かぶ。これは、絶対に譲らない感じ。迷って、動かない頭を総動員して返事を作成した。
『両親がちょっと誤解をしているようだし、私は大丈夫だし。落ち着いたら、また連絡するので、自宅訪問はいかがなものでしょう?』
精一杯の抵抗は、驚きの速さの返信で一蹴された。
『美夜ちゃんの実家のお部屋も楽しみです。実家はきったなくないと思うし、安心だね』
おかしい。綾香さんも、お兄ちゃんも、両親も、甘やかしてくれるのに、坂本くんはさっさと調子を取り戻して意地悪を繰り出す。
ムッとして画面を見つめていると、続いてメッセージが届いた。
『本当は、美夜ちゃんに会いたいだけです。会って、様子を見て、安心して、直接次の約束をさせてください』
……ずるい。坂本くんもまた、何もわかってない。
そんなこと言われて、嬉しくないはずない。断れるはずがない。にじむ涙に、また目が腫れちゃうなんて、どこか冷静に思う。
こんなに私の心をいいように揺さぶって、バチが当たればいいのに。
そのバチによって、りこちゃんに振られちゃえばいいのに。
そんな風に願う私は、きっと世界で一番愚かしい。こんなに狭い心だから、りこちゃんに敵わないのかもしれない。
『恋人のフリを、しなくちゃいけないの、嫌でしょう?』
そのメッセージは、送る勇気がなくて……結局、丸め込まれる結果に終わった。
熱は割りとすぐに下がったけれど、火曜日まで講義を休んだ。今まで休むことはなかったから、少しくらい余裕がある。
坂本くんは、火曜日の午後に家に尋ねてくれることになった。近いので、駅まで迎えに行くと行ったけれど、事前に教えていた道順は迷いようがなくて、病み上がりに無理しないように言い含められてしまった。
わからなくなったら連絡をしてもらうように約束したけれど、着信もメッセージの受信もなくて。インターフォンが鳴って、坂本くんがうちの玄関にいるなんていう、不思議すぎる状況が目の前に広がった。
母が対応に出て、後ろからあの日以来の坂本くんを盗み見る。たった数日前のことだったのに、随分久し振りに会った気がする。
鼓動は身体中に響き渡り、胸のあたりは私の体じゃないような、別次元のような感覚ですらあった。緊張して、声が張り付いたように出てこない。
だけど。なんてことないように、いつものように。きっと冷静に、ソツなく挨拶するんだろうなと想像していた坂本くんが、見てわかるくらい緊張して頭を下げる様子を見て、びっくりした。
坂本くんって、緊張するんだ?初めての人の前に出ても、平気で物怖じせずに話しているのに。
そういえば、兄の前でも恐縮していたなと思い出す。
坂本くんのことを考えるのに忙しくて、事件のことが思ったよりも尾を引いてない自分の図太さに呆れた。
坂本くんが、うちのリビングにいる。びっくり。
坂本くんが、お母さんと話してる。びっくり。
坂本くんが、坂本くんが。忙しく観察していたら、疲れちゃって。兄と父が帰るまで時間があるしと、私の部屋で休むことになった。
私と坂本くんが付き合ってると思っているから、二人で話せるようにと、母たちが気を利かせてくれたのもあると思う。
こうして、実家の自室に坂本くんがいるという、もっと不思議な光景は出来上がった。
なんだか眠たくて、眠たくて、目覚めては水分を取り、また眠った。朝、目が覚めたのは10時過ぎていて、思考は定まらない。坂本くんの夢ばかりを見た気がするけど、思い出すことはできなかった。
家を建て替えたし、2階から1階に移ったので、自分の部屋という感覚は薄かったけれど……目がさめるたびに整えられた新しいおしぼりと、お水。綾香さんの気遣いに感謝して、安心して眠ることができた。
眠っている間に、メッセージを受信していて、慌てて確認する。いくつかのダイレクトメールと、友人からの誘いと、やっぱり坂本くんからのメッセージだった。
『熱が出たと聞きました。大丈夫?今、そばに居られないのが残念です』
坂本くんは、相変わらず思わせぶりだ。メッセージは更に続いている。
『近いうちにご自宅へ伺います。断られ続けたお部屋より、実家に先に伺うことになるとは思ってなかったけど。お兄さんと約束したから、反故になんてならないからね』
……先手を打たれた。文面から、坂本くんの表情が浮かぶ。これは、絶対に譲らない感じ。迷って、動かない頭を総動員して返事を作成した。
『両親がちょっと誤解をしているようだし、私は大丈夫だし。落ち着いたら、また連絡するので、自宅訪問はいかがなものでしょう?』
精一杯の抵抗は、驚きの速さの返信で一蹴された。
『美夜ちゃんの実家のお部屋も楽しみです。実家はきったなくないと思うし、安心だね』
おかしい。綾香さんも、お兄ちゃんも、両親も、甘やかしてくれるのに、坂本くんはさっさと調子を取り戻して意地悪を繰り出す。
ムッとして画面を見つめていると、続いてメッセージが届いた。
『本当は、美夜ちゃんに会いたいだけです。会って、様子を見て、安心して、直接次の約束をさせてください』
……ずるい。坂本くんもまた、何もわかってない。
そんなこと言われて、嬉しくないはずない。断れるはずがない。にじむ涙に、また目が腫れちゃうなんて、どこか冷静に思う。
こんなに私の心をいいように揺さぶって、バチが当たればいいのに。
そのバチによって、りこちゃんに振られちゃえばいいのに。
そんな風に願う私は、きっと世界で一番愚かしい。こんなに狭い心だから、りこちゃんに敵わないのかもしれない。
『恋人のフリを、しなくちゃいけないの、嫌でしょう?』
そのメッセージは、送る勇気がなくて……結局、丸め込まれる結果に終わった。
熱は割りとすぐに下がったけれど、火曜日まで講義を休んだ。今まで休むことはなかったから、少しくらい余裕がある。
坂本くんは、火曜日の午後に家に尋ねてくれることになった。近いので、駅まで迎えに行くと行ったけれど、事前に教えていた道順は迷いようがなくて、病み上がりに無理しないように言い含められてしまった。
わからなくなったら連絡をしてもらうように約束したけれど、着信もメッセージの受信もなくて。インターフォンが鳴って、坂本くんがうちの玄関にいるなんていう、不思議すぎる状況が目の前に広がった。
母が対応に出て、後ろからあの日以来の坂本くんを盗み見る。たった数日前のことだったのに、随分久し振りに会った気がする。
鼓動は身体中に響き渡り、胸のあたりは私の体じゃないような、別次元のような感覚ですらあった。緊張して、声が張り付いたように出てこない。
だけど。なんてことないように、いつものように。きっと冷静に、ソツなく挨拶するんだろうなと想像していた坂本くんが、見てわかるくらい緊張して頭を下げる様子を見て、びっくりした。
坂本くんって、緊張するんだ?初めての人の前に出ても、平気で物怖じせずに話しているのに。
そういえば、兄の前でも恐縮していたなと思い出す。
坂本くんのことを考えるのに忙しくて、事件のことが思ったよりも尾を引いてない自分の図太さに呆れた。
坂本くんが、うちのリビングにいる。びっくり。
坂本くんが、お母さんと話してる。びっくり。
坂本くんが、坂本くんが。忙しく観察していたら、疲れちゃって。兄と父が帰るまで時間があるしと、私の部屋で休むことになった。
私と坂本くんが付き合ってると思っているから、二人で話せるようにと、母たちが気を利かせてくれたのもあると思う。
こうして、実家の自室に坂本くんがいるという、もっと不思議な光景は出来上がった。
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