絶対、イヤ。絶対、ダメ。

高宮碧稀

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彼の片想い*******

寝ても醒めても。3

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淫らな水音が。美夜ちゃんの吐息や漏れた嬌声が。耳を犯して僕を狂わせている気すらする。
一番近い位置で視線が合うのが嬉しかった。
もったいなくて。目なんか閉じれない。
美夜ちゃんの瞳に映る自分が、冷静さを欠いた表情だって気づいたけど、取り繕うことすら叶わなかった。
怯えさせたくないけど、逃したくない。
左手を美夜ちゃんの後頭部に添えたけど、彼女が身じろぎするたびに力がこもって警告を鳴らす。
あんな事件があったから、怖がらせちゃいけない。
でも、この機会を見送るには、焦って、飢えて、焦がれすぎて。
夢中になって彼女の唇を貪った。
少しだけ満足した頃、息苦しさに涙目になった美夜ちゃんに気がついた。
そういえば、美夜ちゃんは口付けには慣れていない。
2度目の、それ。そうだ。やっぱり、この唇の感触を知っていた。
重ねて気づいた。最初に体を繋げたあの日、やっぱり、美夜ちゃんとキスもした。夢なんかじゃなかった。

『キスは、好きな人としたいから』

そう繰り返し拒否されたけど。構うものか。
確信が『カチリ』と音を立てたように、完璧な形で僕の脳裏に固定して居座った。
その『好きな人』は、僕に違いない。
一度唇を離したら、いやらしく、名残惜しく、銀糸が二人を繋ぐ。
それをぼんやり見つめる美夜ちゃんの目尻に口付けた。
「……なん、で?さ、かもとく……」
『なんで』なんて愚問を口にする彼女の唇を、また封じた。
「……んっ……や、め……あ、ふぅ……」
『やめて』なんてお願い、聞けるはずがない。

だって。
僕は美夜ちゃんが好きで、美夜ちゃんも僕を好きなのに。

甘い彼女の唾液を、こぼのすらもったいなかった。
唇から伝ったそれを、あごを追って舌で舐めとる。
やっと解放されて、何かを言おうとしたのか、息を多めに吸おうとしたのか。
美夜ちゃんが喘ぎながら声を漏らした。
「たく、ま……くん」
呂律も怪しく、途切れ途切れに紡がれた名前に、たまらずまたキスをした。
かわいい。愛しい。
そんな想いが抑えきれず、放してあげられない。
美夜ちゃんが、信じてくれなくても、言わずにはいられなかった。

「みや、ちゃん……好きだよ」

どうか、今度は信じて欲しい。
そう願ったけれど、美夜ちゃんの瞳に張った涙の膜と、不審そうに顰められた眉間に、告白が不発に終わったことを知る。
「……泣かないで」
口付けを一度諦めて、逃げられないように捉えるのに忙しかった左手で彼女の頬を包んだ。
「大丈夫だよ……だって。僕を、好きでしょう?」
願望がかなり占めたその問いは、だけど、ちゃんと確信だって孕んでいた。
全てにおいて、きちんとしている美夜ちゃんが、好きでもない男と体の関係を持つなんてありえない。
答えは簡単だ。美夜ちゃんは、僕が好きなんだ。
「だって。昔の……高校生の僕を、知ってるって事でしょ?」
美夜ちゃんの体が不自然に震えて、真実を隠しきれないでいた。
僕が、間違えてりこちゃんに告白したことを知っていた。
高校生の僕を、知っていたんだ。
じゃあ、答えは簡単だ。美夜ちゃんは、僕が好きなんだ。
「美夜ちゃんは……高校生の時から、好きな人が、いるんでしょ?」
僕が美夜ちゃんと接触を持って恋に落ちたのだってその頃だ。
逆も、ありえない話じゃない。
そうだ。願望でも、夢でもない。

「それって、僕。でしょ?」

見開いた瞳から、とうとう涙が頬を伝った。
その白く柔らかな涙の通り道を、食べてしまいたいくらい愛しい気持ちが込み上げた。
たとえ美夜ちゃんが、見え見えの嘘で『違う』と否定したって。

「そういうことに、してしまおう」

気にせずまた唇を奪った。
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