絶対、イヤ。絶対、ダメ。

高宮碧稀

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彼の片想い*******

寝ても醒めても。4

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「……い、や」
拒絶の言葉は、ペロリと下唇を舐めて封じた。
「……だ……めぇ」
制止の言葉は、より一層深い口付けでうやむやにした。
「……や、だぁ」
直接的な拒否は…聞かないふりして唇を貪った。
「……もぉ……む、り」
その言葉は、可愛くて、聞き捨てならなかった。
「……イヤ。ダメ。ヤダ。の次は『ムリ』?」
涙目で。いっぱいいっぱいで。ちっとも怖くないけど、美夜ちゃん的には僕を睨んでるつもりらしい。
おでこをくっつけて、束の間、唇を解放した。
「なん、で……きゅう、に……」
なんて、愚問を投げかけるのすら愛おしい。
ずっと願っていたことを、実行に移しただけ。
嫌われるのが怖くて踏み込めないでいた領域を、暴く勇気を得ただけ。
ただ、それだけ。
美夜ちゃんが困惑した表情で、精一杯の虚勢をはって嫌がるそぶりを見せる。
僕は、もう騙される事も、怯える事もなく美夜ちゃんの柔らかな唇を貪った。

「美夜ちゃんがいつも言うでしょ?『キスは……好きな人としたいから』って。でも、もう、そんなの関係ない」
だってさ。
「その『好きな人』って、僕でしょう?」
美夜ちゃんの体がビクっと震えて、僕の背中を押す。
「違ったと、しても……もう……いいよ」
そうだ。もう、怯えるのはやめた。
だって、さ。
「その分僕が美夜ちゃんを好きだから、もういいでしょ?」
そう言うと、瞳が揺れて。涙が滲んで。
拗ねたような、困ったような顔をする。
ベタベタに甘やかしたいのに、困らせたくて……更に深く長く口付けた。
ただ、口付けたいだけかもしれないけど。

「うそ……つ、き」
息も絶え絶えと言った風情で、美夜ちゃんが絞り出した声は、少し前なら僕をきっちりと傷つけたと思う。
でも、口付けだけでいやらしい嬌声を発して、腰も砕けて動けない美夜ちゃんを見てたら余裕ができた。
当分動けそうもない美夜ちゃんを、ゆっくり尋問できそうだ。
まずは、頑なに僕の言葉を信じない彼女の心を、身体と同じくらい柔らかくしなくちゃ。
「なんで『うそ』って思うの?」
美夜ちゃんが、傷ついたような、困ったような表情をうかべる。キュッとマグカップを握りしめて、言葉を探していたけれど、決心したように僕を見て唇を開いた。
「だって!だって……ずっと、コーヒー出したじゃない!……コーヒー、私飲めないもの!」
彼女に似合わない、悲鳴のような大きな声で。珍しく、ヒステリックな口調で。僕を喜ばせる内容を告げた。

美夜ちゃんは、ブラックコーヒーが飲めない?

やっと、本当に、全てが繋がった。
出し続けたコーヒーが、いつもほとんど手つかずだったこと。
でも、あの時確かに、コーヒーを買おうとしていたと言ったこと。
そんな手助けを、してくれようとした理由。
好きでもない僕に、抱かれ続けても会ってくれる彼女。

美夜ちゃんは、ブラックコーヒーが飲めない。

飲めないのに、わざわざ声をかけて買い取ってくれた。
知らない、なんとも思ってない男子高校生に、そんなこと、優しい美夜ちゃんでもしないと思う。
飲めもしないものならなおさらだ。
美夜ちゃんが、好きでもない男に体を明け渡すなんて、絶対におかしい。
じゃあ、僕を好きなら?
高校生の頃から好きだっていう、その相手が、僕だったら?

「ブラックコーヒー、好きなのは、りこちゃんでしょ?本当は、りこちゃんをこの部屋に呼びたかったんでしょ?本当は、りこちゃんと朝まで居たいんでしょ?」
りこちゃんに間違って告白したところを見られていたなんて。
本当に、一生の不覚だった。
「私は……ただの代わりでしょう?」
好きな子に、こんなことを言わせてしまった。
それなのに、喜びを隠しきれない。
美夜ちゃんが押し殺してきた想いを考えると、痛ましい。だけど……
そこまで僕のことを想ってくれてる。ずっと、僕を好きでいてくれた。
僕が美夜ちゃんを見つけたみたいに、美夜ちゃんも僕をどこかで見てくれていたんだ。
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