111 / 113
彼女の想い
絶対……いや。3
しおりを挟む
外を並んで歩いた事があまりなかったから、知らなかった。
ちゃんと歩調を合わせてくれる優しさとか。時折顔を覗き込んで様子を見てくれる気遣いとか。並んで見上げる角度の顔とか、時折触れるアウターの感触とか、外で聞く喧騒と一緒に届く声。
どれも、泣いちゃいそうなくらい嬉しい。
小波のように、彼の言葉が傷を埋めて、慈しむように心を満たしていく。私を通して他の人を想っているんだと、目を逸らしていたその視線は、どこまでも甘く私だけを包んでいた。
見つめて、触れて、囁いて。その全ては私に向けられていたもので。今まで見ないように、聞かないように、侵入を許さない様にしていたのが、すごくもったいなく感じる。
惜しみなく注がれる優しさに、私自身が甘えていいなんて。ダメな人間になって、1人で立てなくなりそう。そう思うと、まだ少しの自制心は残しておきたくて。
なのに。坂本くんってば。
「早く美夜ちゃんが、僕なしじゃ生きれない様にならないかな」
そんな目論見を平気で漏らすから……頑張らなくちゃ。うん。
「本当に、泊まって行かないの?部屋ならあるのよ?」
お母さんが坂本くんを引き止めてくれるけど、彼は穏やかな笑顔で固辞した。
「お気遣いありがとうございます。でも、友人の家に泊めてもらう手筈が整ってるので……」
五十嵐くんのお家に泊めてもらうらしい。今日は、りこちゃんがお泊まりしないらしくて、了承の連絡がすぐきていた。
坂本くんの部屋までは、終電の時間が間に合わなくて、戻れない。それくらい、長居してしまった。
1人で帰れるって言ったけど、もちろん許してくれなくて。
これから、いくらでもお互いの誤解を解く時間があるって思おうとしても、怖くて先延ばしにできなかった私のせい。
「僕だって、少しでも早く答え合わせしたかったんだよ」
そう言って、私の心を軽くしてくれた。
坂本くんのお部屋の最寄駅。上機嫌で私の手を握っていた彼が、コンビニでピンクの歯ブラシを購入した。
『夢じゃないか、僕だって不安になるから』と。そう言って、私がお守りを握りしめてるのを見て、坂本くんがちょっとだけ意地悪な顔をして笑った。
「僕はこれを見て、夢じゃなかったって思うよ」
マグカップに次いで、坂本くんのお部屋に居座る、私の存在。つい、図々しくなってしまう。
「スキンケア用品は……いつも使ってるのを、今度、持って行ってもいい?」
そう言ってみた。『泊まってもいい?』って遠回しに言ってしまった自分のあざとさが恥ずかしい。
でも、言った途端に人が見ているのも構わずぎゅうぎゅうに抱きしめられて。もっと、もっと恥ずかしい目にあった。
坂本くんがとる、全ての仕草や行動が。
私の自尊心を、優しく修復していく。
知らなかった。こんなにも、自分が傷ついて、苛まれて、すり減っていたってこと。それでも、会えることの方が嬉しくて、気付いていなかった。
好きな人に応えてもらえることが、こんなにも、嬉しくて、幸せで、贅沢な事だって…知ってしまったから。
もう、戻れる気がしない。
やっぱり、私は、坂本くんと一緒にいると、世界一愚かな女の子に成り下がる。
だけど。坂本くんの甘い視線を受け止めて、味わって。幸せで。嬉しくて。
前と違って……愚かな自分が、全然嫌じゃなかった。
これから始まる、新しい関係。
どうしよう。私、きっと毎日平静ではいられない。
これ以上の『好き』が溢れることに、自分でもびっくりして。繋いだ手にちょっと力を込めるたびに、お返しに強く握り返される。
どうしよう。……好き。
ちゃんと歩調を合わせてくれる優しさとか。時折顔を覗き込んで様子を見てくれる気遣いとか。並んで見上げる角度の顔とか、時折触れるアウターの感触とか、外で聞く喧騒と一緒に届く声。
どれも、泣いちゃいそうなくらい嬉しい。
小波のように、彼の言葉が傷を埋めて、慈しむように心を満たしていく。私を通して他の人を想っているんだと、目を逸らしていたその視線は、どこまでも甘く私だけを包んでいた。
見つめて、触れて、囁いて。その全ては私に向けられていたもので。今まで見ないように、聞かないように、侵入を許さない様にしていたのが、すごくもったいなく感じる。
惜しみなく注がれる優しさに、私自身が甘えていいなんて。ダメな人間になって、1人で立てなくなりそう。そう思うと、まだ少しの自制心は残しておきたくて。
なのに。坂本くんってば。
「早く美夜ちゃんが、僕なしじゃ生きれない様にならないかな」
そんな目論見を平気で漏らすから……頑張らなくちゃ。うん。
「本当に、泊まって行かないの?部屋ならあるのよ?」
お母さんが坂本くんを引き止めてくれるけど、彼は穏やかな笑顔で固辞した。
「お気遣いありがとうございます。でも、友人の家に泊めてもらう手筈が整ってるので……」
五十嵐くんのお家に泊めてもらうらしい。今日は、りこちゃんがお泊まりしないらしくて、了承の連絡がすぐきていた。
坂本くんの部屋までは、終電の時間が間に合わなくて、戻れない。それくらい、長居してしまった。
1人で帰れるって言ったけど、もちろん許してくれなくて。
これから、いくらでもお互いの誤解を解く時間があるって思おうとしても、怖くて先延ばしにできなかった私のせい。
「僕だって、少しでも早く答え合わせしたかったんだよ」
そう言って、私の心を軽くしてくれた。
坂本くんのお部屋の最寄駅。上機嫌で私の手を握っていた彼が、コンビニでピンクの歯ブラシを購入した。
『夢じゃないか、僕だって不安になるから』と。そう言って、私がお守りを握りしめてるのを見て、坂本くんがちょっとだけ意地悪な顔をして笑った。
「僕はこれを見て、夢じゃなかったって思うよ」
マグカップに次いで、坂本くんのお部屋に居座る、私の存在。つい、図々しくなってしまう。
「スキンケア用品は……いつも使ってるのを、今度、持って行ってもいい?」
そう言ってみた。『泊まってもいい?』って遠回しに言ってしまった自分のあざとさが恥ずかしい。
でも、言った途端に人が見ているのも構わずぎゅうぎゅうに抱きしめられて。もっと、もっと恥ずかしい目にあった。
坂本くんがとる、全ての仕草や行動が。
私の自尊心を、優しく修復していく。
知らなかった。こんなにも、自分が傷ついて、苛まれて、すり減っていたってこと。それでも、会えることの方が嬉しくて、気付いていなかった。
好きな人に応えてもらえることが、こんなにも、嬉しくて、幸せで、贅沢な事だって…知ってしまったから。
もう、戻れる気がしない。
やっぱり、私は、坂本くんと一緒にいると、世界一愚かな女の子に成り下がる。
だけど。坂本くんの甘い視線を受け止めて、味わって。幸せで。嬉しくて。
前と違って……愚かな自分が、全然嫌じゃなかった。
これから始まる、新しい関係。
どうしよう。私、きっと毎日平静ではいられない。
これ以上の『好き』が溢れることに、自分でもびっくりして。繋いだ手にちょっと力を込めるたびに、お返しに強く握り返される。
どうしよう。……好き。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる