絶対、イヤ。絶対、ダメ。

高宮碧稀

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閑話***

青木くんは砕け散る。1

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交通の便が良く、首を傾げられない程度の知名度で、かといって、名前を出しても恥ずかしい思いもせず、偏差値もそこそこ。
なかなか興味がそそられる学部もあって決めた大学だった。
程よく緩くて、情報源となる先輩を確保でき、それなりに楽しめればといくつか思案して決めたサークルは、女子の質がなかなかに高かった。
ダサすぎず、かといって活発すぎない。
大人しい子がやや多い気がしたが、趣味の話がでたり、打ち解けると、頬を蒸気させて一生懸命話す様子はどの女の子も好感が持てた。

大学進学を機に、遠方へ旅立った彼女と別れたばかりの健康な大学一年生である自分も、あわよくば!あわよくば可愛い恋人でもできないかと期待に胸を膨らませていた一人。
そして、惹かれたのは1つ年上の高園美夜先輩だった。
残念ながら、あまり親しくはなくて、接点もサークルの飲み会くらいだ。個人的な連絡先は交換していない。
話しかければ応えてくれて、美夜先輩が好きな分野は色々教えてもくれる。ただ、俺を特別扱いしての事ではないので、距離は縮まらない。
しかも、とんでもないお邪魔虫が毎回現れるのだ。
美夜先輩と話していると、フラリとやってきて、会話に混ざったり、俺に話しかけてくる『坂本拓眞先輩』
実は同性愛者で、俺を狙ってるんじゃないかと疑ったこともある。
……正直、死んで。

坂本先輩が現れると、気を取られてるうちに美夜先輩は席を離れてしまう。手洗いや、他のグループに混ざるためにそっと席を立つのだ。
1年も繰り返してるうちに、気づいた。坂本先輩がきた時だけ、その確率は高いのではなく『絶対』だ。
細心の注意を払って、美夜先輩は坂本先輩と距離を取る。坂本先輩に近づくことを極力避け、会話も簡単に応えるだけ。
坂本先輩は最初こそ、りこ先輩に懸想してるって話だったらしいけど、俺たちが入会した時には美夜先輩にすごい執着を見せていた。
そして、それを隠そうともしていない。
美夜先輩には、たぶん伝わってないけど。
……ザマミロ。

美夜先輩が素っ気ないせいか、坂本先輩がちょっかいをかけているだけと片付けられて、周りも二人の仲を邪推している様子はない。
美夜先輩がかなり強固なシールドで付け入る隙を見せないせいか、坂本先輩だって本人にだけは控え目だ。
ただ、直接のアピールをあまりしないというだけで、周りへの牽制はエグいけど。
男臭さは感じられず、中性的ですらあるのに、うっすら貼り付けた笑みで『高園さんの横に座らなきゃいけない理由でもあるの?』とか『名前で呼ぶくらい親しいの?羨ましいなー』なんて釘をさす。
……ヤな奴。

その、ヤな奴が今目の前で淡く微笑んでいる。
……正直こえぇ。
「高園さんと、出かける計画を立ててるって本当?困るなぁ」
本人には美夜ちゃん、美夜ちゃんと繰り返すが、周りには絶対に『高園さん』や『高園先輩』と呼ばせる。サークル内で、彼女の下の名前を呼んでいるのは、男では坂本先輩だけだ。地道に阻止しているようだ。
……陰険だな。
「まだ、実行にはうつしてないですが、映画に誘う予定ですけど……『困る』って、坂本先輩は美夜先輩と付き合ってんですか?」
ちょっと怯みはしたが、目の前の男が直接的に言及してきたのは初めてだったので、こちらも迎え撃つ。
「……高園先輩ね?普段から『美夜先輩』って呼んでるの?」
笑みが深まって、目が細くなったのが怖い。
「いえ、本人には高園先輩って……言ってます」
「じゃあ、そのままで」
悔しいけど、有無を言わせない雰囲気がそこにはあって、黙ってしまった。
……ホント消えて欲しい。

「み……高園先輩と、付き合ってはいませんよね?俺が先輩を誘うことを、坂本先輩にとやかく言われたくありません」
「本当にね。その通り。その権利はまだ誰も持ってないんだよ。でも、僕もあがきたいんだ」
美夜先輩に彼氏がいないことは、もちろんリサーチ済みだ。でも、坂本先輩と密かに付き合っているのかもと不安にはなっていた。それが見当違いだと、たった今本人の口から明らかになった。
だけど……情報収集と観察力には少なからずの自信を持っている自分の結論はこうだ。

美夜先輩は坂本先輩を意識している。
……悔しいくらいに。
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