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レヴェント編

75.振りも自虐もよくない

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 「魔界と人間界、その双方は深い闇の森ディープフォレストと呼ばれる森で隔たれている」
 「深い闇の森ディープフォレスト? 初めて聞くな」
 「だろうな。まだ授業では取り扱っていない以上、わからないのも当然だ。深い闇の森ディープフォレストは方向感覚が狂わされる大森林、調査兵数十人が同時に迷子になるほどのものだ。そんなこともあり別名で“迷いの森”なんて呼ばれている」
 迷いの森ねぇ~……行きたくないな。絶対。
 何だか振りな気もしなくないその言葉。怖かったので口にはしないでおいた。 
 「……つまり、他に深い闇の森ディープフォレストを通ることはほぼ不可能ってことか。じゃあ、他の道があるのか?」
 「ああ。経路は大まかに三つ」
 指を三本立ててそう言った。
 「一つ目は聖霊山を通るだ」
 「聖霊山?」
 首を傾げてそう呟く。
 「聖霊山は私達、エルフの里がある山だ。基本的にはエルフが統括しているため、エルフの長から許可を得なければ、通ることは許されないがな」
 「なるほど……興味本意だが、お前が言ったら通してくれたりする? まあ、行きたくはないけど」
 「そうだな。私もエルフ族の中ではそれなりの地位を持っている、言えば通してはくれるんじゃないか? 一様、エルフの長は私の弟の友人だしな」
 「うん。びっくり情報が紛れてんな」
 「?」
 しれっと重要そうな情報を口にするレナに、半ば呆れたような表情を向けた。
 「まあいい。二つ目は深い闇の森ディープフォレストの“側”を通ることだ」
 「側? は? 深い闇の森ディープフォレストは人間界と魔界を隔ててるんじゃないのか? 側があるなら隔ててるとは言えない気もするが」
 「確かにそうだが、広大な大地を二分割しているという意味では間違いでもないだろう。まあ、流石に大地を完全に二分割する森が生まれることはない」
 「それもそうか……となると、過去の魔王軍は側から現れたのか?」
 ふと思い至った回答を述べると、彼女は難しい表情をして答えた。
 「半分正解で半分不正解だ。確かに魔王軍の大半は“側”を通っていた。しかし、幹部級あるいは四凶、魔王自身は人間界に向ってきたと聞いた」
 「は? 深い闇の森ディープフォレストを突っ切ってきたってことか?」
 「流石にそれはない。いや、魔王や四凶ならば可能かもしれないが、あの森は戦力でどうこうなる問題でもない」
 「じゃあ、か?」
 そういうと彼女は頷いた。
 「最後三つ目。この大陸の中心に位地する複数の国、環境が入り混じったと評される地」
 彼女から発せられる重い空気に息を呑む。

 「廃棄場ディスポーザル――あるいは、壊乱郷かいらんきょうと呼ばれる場所だ」

 廃棄場ディスポーザル、壊乱郷。
 まったく嫌な名前だ……。
 名を聞いただけで嫌な予感を感じる。その名を付けたものは酷く悪趣味だ、センスがない。
 なぜだろう。胸が酷く痛むような気がする……いや、きっと気のせいだろう。
 不思議な胸の痛みを感じつつ、不吉な名を持つ地に思考を回した。
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