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とんでもない効果がついていました

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ゲームの中で、ヴィルヘルミナは魔獣の子を意図せず魔法で癒したことがある。
どうやらミナは、それと同じようにビーズアクセサリーのパワーストーンにも知らず知らずに魔法をかけてしまっていたようだった。

――――魔力を持つ石は、魔石と呼ばれる。
元来はとても貴重な石で、鉱山の奥深くから稀に採掘されることがある程度。産出量はとても少なく、当然目の玉の飛び出るような高価な石だ。
普通の宝石でも価値があるのに、それが魔石となれば数十倍の値段がつくと言われている。
人工的に作り出すことも可能なのだが、それができるのは熟練した魔法使いの中でも専門に研究した者のみだった。



――――そう、そのはずだったのだが。

(……確かに、作る時パワーストーンの効果がありますようにと、願った覚えはあるんやけど)

まさかそれだけで、石を魔石にできるとは思ってもみなかった。


(ヴィルヘルミナってば、才能あり過ぎや)


ミナは頭を抱える。
しかも、噂の理由はそれだけではなかった。


「あと、特に出来のいいアクセサリーに妖精が宿っているのがわかったそうだよ」


もはや笑うしかないのだろう。
苦笑交じりの父の言葉に、ミナはポカンとしてしまう。


「……妖精が?」


「ああ。論より証拠。見てごらん」

そう言うとミナの父は、自分が娘からもらった腕輪のビーズアクセサリーを外し、左の手のひらに乗せた。
その上から右手をかぶせ包み込むように覆い隠す。

その状態で部屋の明かりを落とせば、父の手がぼんやりと光りはじめた。
強弱をつけて明滅する光は、中に何かがいることを明確に示している。


「ビーズアクセサリーが暗闇でも光ることがあると噂になっていてね。調べたらこの通りだ。光の妖精が宿っていることは、間違いないだろう」


目の前の光は、反論のしようのない事実だ。

質の良い魔石の一部に妖精が宿ることがあるとはいう事実は確認されているが、意識して宿らせることのできる人間がいるなんて聞いたこともない。




(あちゃぁ~)

ミナは、思わず天を仰いだ。
部屋に明かりが戻ると同時に、困ったミナは兄のアウレリウスに視線ですがる。



(これって、あれやないんか? ――――能力チートすぎて人物認定。監禁監視コース――――とかいう、あかんやつやろ?)



思わず涙目になれば、妹が大好きな兄は優しくミナの頭を撫でてくれた。

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。――――ビーズアクセサリーに使った石が特別な魔石だったと、世間には説明すればいい。幸いうちの領地には、魔石の鉱山もあるし。……そうですよね、父上」

同意を求められた伯爵も大きく頷いた。

「もちろんだ。私の可愛いミナを、世間の好奇の目にさらすわけにはいかないからな。ミナが使った宝石にうっかり魔石が混ざってしまったことにすればいいだろう。質の良い魔石に妖精が宿っていることも、ごく稀にだが確認されている。――――ただ、そういうことにすると、今後はこれまで通りビーズアクセサリー作りを許可するわけにはいかなくなるけれどね」

とんでもなく高価な魔石を混ぜてしまう事もあり得ぬことだが、こんなうっかりミスが発覚した後も起こるなんてことは、もっとあり得ぬことだ。
せっかく楽しんでいたビーズアクセサリー作りも、どうやらここまでのようである。



(あ~あ。せやけど、しゃあないもんなぁ)

ミナは、がっくりと肩を落とす。
しかし「あ!」と声を上げた。


「お父さま、お兄さま! あと一つ。今作りかけのビーズアクセサリーだけは仕上げてもいいですか!」


最近作りはじめたビーズアクセサリーを思い出したミナは、そう叫ぶ。

「でも、ミナ――――」

難しい表情で首を横に振ろうとした父を、必死で止めた。


「仕上げても、誰にもあげたりしません! あれは、私のためのネックレスなんです!」


誕生日に父から貰った大きなダイヤモンドトップのついたネックレス。
それだけでも十分素晴らしいネックレスだったが、硬質な輝きを放つダイヤモンドは、美しすぎて孤高に見える。
寂しそうだと思ったミナは、チェーンをトパーズのディジーチェーンにしようとしていた。

多様な色彩を持つトパーズには、自分に必要なものや探し物を引き寄せてくれる力があると言われている。散りばめた小花のようなディジーチェーンは、ダイヤモンドを優しく彩ってくれるはず。

作成途中のこのネックレスだけは、どうしても仕上げたいと思った。


「魔法も意識して使わないようにします。もちろん召喚魔法も使いません! だからお願いします!」


頭を下げるミナに、父と兄は困ったように顔を見合わせる。





「……誰かに渡すのではないのなら、いいのではないですか?」

「フム。そうだな。何より私の贈ったネックレスだし」

元々ミナに甘い兄と父。
ミナの心からのお願いを彼らが無下にできるわけもない。

「ミナには敵わないな」

「決して外には出さないようにね」

「ありがとうございます! お父さま、お兄さま!」

喜び抱きつくミナに、二人はデレデレと表情を緩める。




こうしてミナは、自分用のビーズアクセサリー作りの許可をもらえたのだった。
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