小鬼は優しいママが欲しい

siyami kazuha

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会う予定を入れてなかった日

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 実家から大量に送られて来たのは、冷凍された鯖フィレであった。一枚ずつ身が入った真空パックの数は、黙視だけでも二十はある。俺も子どもも鯖は好きだが、この量は想定外だ。
 母の実家、つまり俺の祖母の家は銚子で農家をしている。そのせいか、年に何度かは野菜が送りつけられるが、魚を送ってきたのは数年振りだ。送ってきたことがないわけではないが、冷凍庫が鯖で埋め尽くされるこの量は初めてだった。しかも、鯖ばかり。
 俺は、料理は出来るが、レパートリーが多いというわけではない。
 どうやって食おうかと色々考えるが、これを消費するには最低でも一月はかかるだろう。毎日出すと、子どもも飽きてしまう。
 白米を白米のまま食えないというだけで、日々の献立に苦労してるのだ。これ以上、嫌いなものを増やしてなるものか。

「今日は塩焼きでいいか?」

 保冷バッグに鯖を詰め直していた子どもに問う。
 詰めている鯖は、俺の彼女とその家族にお裾分けする物だ。向こうに行くついでだからと、子供は祖父が住職をしているという友達の分も用意している。
 分けた結果、この家で消費する分は減ったが、それでも冷凍庫には鯖が大量に鎮座している。冷凍食品を買いに行く前に届いて良かった。買った後だったら入りきらないところだった。

「パパー、早く行こうよー」

「連絡取れたのか?」

「どっちも家に居るって」

 出掛けるのが楽しみなのか、それとも彼女の顔を見るのが楽しみなのか、子どもが出掛ける仕度を急かす。
 あいつの顔を見るのは俺も好きだから、子どもの気持ちがわからなくもない。
「落ち着きなさい」と窘めてから、通勤鞄に入れたままの財布を取りに行った。
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