小鬼は優しいママが欲しい

siyami kazuha

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盛夏の頃

線香花火

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「夏休みどうする?」

 昼休み中、幼馴染みの一人、菩薩の末裔に聞かれて、俺は気の抜けた言葉を返す。危うく、箸で取り上げたミニトマトを落とすところであった。
 毎年、長い休みに入ると、この幼馴染みと、もう一人の幼馴染みでお祖父さんが住職をしている寺の孫と一緒に、なにかしらして過ごしている。
 芸能の仕事を始める前は、映画を観に行ったり寺の孫の家や菩薩の末裔の家に集まって、日がな一日ゲームをしたり漫画を読んで過ごしたりとだらだらやっていた。花火大会がある日は三人で観に行き、花火よりも屋台を楽しみ、町内会のお祭りにはお囃子側で参加したりもする。
 俺はパパの家に引っ越したり、仕事が入ったりしてお囃子の練習には行けていないが、二人は行っているようだ。

「お仕事、どういう入り方するかわからないしなあ……」

「売れっ子は大変だね」と、菩薩の末裔が愉しげに笑う。

「売れっ子と呼ばれるほどではない気もするけど」

「そうかあ? ちょいちょい見るようになったけどなあ」

 今まで黙っていた寺の孫が口を挟む。

「この間はロケ行ってたんだっけか? お昼の番組のローカル鉄道のやつ」

 学校がある日のロケだったので、よく覚えていると二人は言う。
 放送はこれからだが、二人にはざっくりとした予定を伝えているのだ。もちろん話せる範囲内でだが。俺よりも予定を覚えている気がする。

「でも、一瞬で終わっちゃいそうだけどな。俺へのオファーブーム」

 芸能界は新しい物と数字が取れる者が好きだ。数字が取れなくて、古い奴になったら、一気に見捨てられる。まるで、一花しか咲かせられない花火みたいだ。

「どうせ散り行く花火なら、人の心に残る花火がいいよね」

 菩薩の末裔が、俺の心を読んだかのように口を開く。
 ぱちぱちと瞬きをしてる間に、寺の孫がスマートフォンの画面を見せた。映っていたのは、祖父が子供会用で買ってきたという大量の線香花火である。

「とりあえず、花火でもするか?」
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