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2章 接続独唱
第22音 五里霧中
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【五里霧中】ごりむちゅう
物事の様子や手がかりが掴めず、
方針や見込みが立たずに困る事。
==============
「ノノ様!いってらっしゃいませ!」
と元気よくノノのお見送りをしたルカ。
「おう!」
ノノはそう言って、今日も釣りへ向かうのだった。
ルネアは今日は一緒に行かない。
そう、ルネアには予定があったからだ。
「さあルカくん!早く僕達もりんご狩りに行きましょう!」
ルネアの目は輝いていた。
ルカはルネアを見て笑ってしまう。
「わかったっちょ!」
そう言って、二人はご機嫌でどこかに出かけるのであった。
ラムは外を歩いていると気づく。
(そう言えば先日…アールの首の傷の事聞きゃ良かった…!
いや待て、もしもの為に今シミュレーションしよう。)
ラムは、早速シミュレーションを開始した。
――「最近様子が変だけど何かあったのか?」
ラムがそう聞くと、アールは驚いた顔をしてから観念した。
「…わかっていたか…実は…」――
(いや待て!これじゃ簡単すぎじゃないか?…アールの事だ、もっと巧妙に嘘を…)
――「…特にない。」
アールはそう答えた。
しかしラムはアールの首を指差して言う。
「お前の様子がおかしい事くらい知ってんだ!
お前の首の痕、夜にコソコソ外に出たりな!」
それを聴いたアールは自分の首を確認した。
「痕?…首…?…なんだこれは、いつの間に…」
痕に気づいてアールは戸惑った。ラムは流石にポカンとすると言った。
「え?知らなかったのか?」――
(ちょっと待てぇい!!)
ラムは自分で想像しておきながらもぜぇぜぇと息が切れていた。
(流石アール、天然だな…って!そうじゃない!
流石にあんな大きな痕じゃ気づかない方がおかしいっつーのっ!)
自分で想像したのに、自分でツッコミを入れてしまうラム。
そして自分自身に疲れてくるのであった。
(俺の想像の中のアールは天然なものばかり…
癒しに負けてんだなぁ…)
ラムはトホホとした顔で思っていると、近くの木の前でアールが座って読書しているのを発見。
(グッドタイミング!いや、どこがグッドなんだっ!
まだ心の準備ができてないってのに…っ!待て、ここは落ち着いて考えろ…会話の内容を…!)
ラムはそう思いつつも、ついいつもの癖で言ってしまう。
「よっ、アール。」
(は…呼んじゃったし…)
ラムは呆れを通り越して笑ってしまっていた。
「君…」
アールは言った。
いや、アール似の青年はそう言った。
青年は本を下ろすと更に言う。
「読書のお邪魔、しないでちょうだい?」
ラムは自分の考える反応の斜め上を行き過ぎて驚きが隠せなかった。
(え…アールこんな口調じゃない…雰囲気もなんか違う…!)
すると青年はニヤリと笑った。
ラムは衝撃を受ける。
アールは性格といい普段といい、こんな顔をする訳がないからだ。
「お前誰だよ!アールじゃないな!」
「きゃは~ん!」
青年はニッコリ笑顔でそう言うと、ラムは不気味なのか顔が青くなってくる。
「素直になっちゃえばいいのに~!君のキタナイ所ってそういうところだよ?
僕みたいにぜ~んぶさらけ出しちゃってさ~!僕キタナイ人、嫌いだから。
あ、片割れくんは別だよ?」
ラムは言っている意味も理解できず呆然としていると、青年は続けた。
「彼が欲しいなら「欲しい」って言っちゃえばいいんだ。
それとも何?求められる方がお好きなのかな?」
ラムは怖くなって一歩後退すると、青年は空かさず近づく。
ラムの目を一直線に見つめ、ラムは怖くなって目を逸らしたくなるが逸らせない。
青年の吸い込まれるような瞳を見ると、ラムは動けなくなっていた。
「ねえどうしたい?どうしたいの?教えて教えて!」
ラムは正直、青年が怖かったので何も答えられなかった。
青年はつまらなそうな顔をしてしまうと、すぐにまた微笑む。
「無理?じゃ、僕が手伝ってあげるから…」
青年はニヤリとした表情でラムの肩に手を置く。
青年の手は真っ黒で鱗のある硬いものへと変化していた。
人間の手ではない、ラムはそれを知ると恐怖が頂点までに達した。
「お…俺に構うなよお化けぇえっ!」
ラムは掠れた声を出しながら叫ぶ。
その時、ラムの体から強大な魔法力が流れ出した。
魔法力が青年の手にグッと伝わると、青年は咄嗟に手を離してしまう。
そして距離を置くと、青年は自分の手を見た。
焼けた様に煙を吐いていて、ちょっぴりヒリヒリとする。
「すっごい力…」
青年は微笑んでしまうと、羽を広げて飛び立つ。
「眠りのお姫様大作戦!開始~!」
青年はそう言って森の方へと飛ぶと、ふと気づいた。
そう、自分が落とした本をそのままにしているのだ。
「あ、本…。まいっか!」
ルネアとルカは近くのりんごの木にやってくると、青りんごを採っていた。
ルネアは青りんごを片手に喜びつつ、太陽にかざしてみたりする。
すると、目の前に光り輝く巨大な何かを発見。
それはまるで巨人。
しかも形がラムに似ていた。
それを見たルネアは青りんごを落としてしまい、唖然としてしまう。
「ヤバてぃん!?ラムの化身じゃん!?」
ルカは木の上で青りんごを齧りながらそう言うと、ルネアはルカの方を見た。
「ラムさ、ガキの頃からしょっちゅう驚いては魔法力で作り上げた化身を出すんだ。
大きくなったから少なくなったけど…相当怖い事あったんかなー。」
「へぇ~…」
ルネアはラムの化身を見上げるのだった。
シナとツウは二人で歌の練習をしていると、ラムの化身に気づく。
「また何かあったの!?」
シナは驚くと、ツウは笑顔。
「そうだね、楽しそうで羨ましいよ。」
リートは坂上の木で妄想を楽しんでいると、ラムの化身に気づいた。
「え…」
リートに関しては呆然と驚いていた。
ダニエルも調理室の窓から覗くと呟く。
「やっと落ち着いたと思ったのに~」
テノは腕を回しながらラムの化身を見上げていた。
「いっちょ止めに行くか…」
テノはそう言って歩き出すが、悲しくもテナーに止められる。
そして最後に、ノノは魚を担ぎながらも丘からラムを見ていた。
「またかぁ…」
児童園の森の少し離れた場所にある洞窟の中、そこにレイが入ってきた。
洞窟の大きな岩に寄りかかり、アールは座っている。
洞窟にはペルドもいた。
レイはそのままアールの肩をトントンと叩く。
アールは振り向くと、彼女はアールの耳元で何かを報告した。
アールはそれに反応すると、アールは腕時計を確認。
しかし暗くて見えない。
そこでレイは黙ってライトを出して照らしてあげると、アールは時間を確認し終えて腕を下ろす。
その神妙で黙々とした行動をとる二人を見て、ペルドは気持ちが悪くなる。
「お前ら無言で何やってる!」
するとアールはペルドに頭を下げると言った。
「私はこれで失礼します。」
そう言って走って洞窟を出ると、ペルドは眉を潜める。
「は?」
更にレイも出てくると言った。
「私も行ってくるわ。」
レイが出ていき、二人の姿が消える。
ペルドは二人が一体どうしたのかと、首を傾げてしまうのだった。
ルカは焦って言った。
「ラムが危ないな~い!
ここいらは戦争の影響で魔法禁止で、使用するともれなく処刑されるんだよおっ!」
「そんな!」
とルネアが言うと、ルカは難しい顔をして続ける。
「最近近くで軍基地ができたらしい…。
ラムは小さい頃は魔法を暴走させるヤツだったから、ここらが警戒されてて…。
五分くらいでくるかも…!
ヤバイ!早よアールぅう!!」
ルカは興奮で落ち着きが全くない。
ルネアは冷静にはなれなかったが、気になる事を聞く。
「なぜアールさん?」
「アイツの声だけが唯一ラムを目覚めさせるの!なんでだろうね!」
ルネアはそれに納得してしまう。
(ラムはアールさんの事好きだもんなぁ。)
しかし今はそれどころではない。
あと五分。
その間にラムを止めなければ、ラムの居場所が軍に発見され
特定されてしまえばラムの命はないだろう。
物事の様子や手がかりが掴めず、
方針や見込みが立たずに困る事。
==============
「ノノ様!いってらっしゃいませ!」
と元気よくノノのお見送りをしたルカ。
「おう!」
ノノはそう言って、今日も釣りへ向かうのだった。
ルネアは今日は一緒に行かない。
そう、ルネアには予定があったからだ。
「さあルカくん!早く僕達もりんご狩りに行きましょう!」
ルネアの目は輝いていた。
ルカはルネアを見て笑ってしまう。
「わかったっちょ!」
そう言って、二人はご機嫌でどこかに出かけるのであった。
ラムは外を歩いていると気づく。
(そう言えば先日…アールの首の傷の事聞きゃ良かった…!
いや待て、もしもの為に今シミュレーションしよう。)
ラムは、早速シミュレーションを開始した。
――「最近様子が変だけど何かあったのか?」
ラムがそう聞くと、アールは驚いた顔をしてから観念した。
「…わかっていたか…実は…」――
(いや待て!これじゃ簡単すぎじゃないか?…アールの事だ、もっと巧妙に嘘を…)
――「…特にない。」
アールはそう答えた。
しかしラムはアールの首を指差して言う。
「お前の様子がおかしい事くらい知ってんだ!
お前の首の痕、夜にコソコソ外に出たりな!」
それを聴いたアールは自分の首を確認した。
「痕?…首…?…なんだこれは、いつの間に…」
痕に気づいてアールは戸惑った。ラムは流石にポカンとすると言った。
「え?知らなかったのか?」――
(ちょっと待てぇい!!)
ラムは自分で想像しておきながらもぜぇぜぇと息が切れていた。
(流石アール、天然だな…って!そうじゃない!
流石にあんな大きな痕じゃ気づかない方がおかしいっつーのっ!)
自分で想像したのに、自分でツッコミを入れてしまうラム。
そして自分自身に疲れてくるのであった。
(俺の想像の中のアールは天然なものばかり…
癒しに負けてんだなぁ…)
ラムはトホホとした顔で思っていると、近くの木の前でアールが座って読書しているのを発見。
(グッドタイミング!いや、どこがグッドなんだっ!
まだ心の準備ができてないってのに…っ!待て、ここは落ち着いて考えろ…会話の内容を…!)
ラムはそう思いつつも、ついいつもの癖で言ってしまう。
「よっ、アール。」
(は…呼んじゃったし…)
ラムは呆れを通り越して笑ってしまっていた。
「君…」
アールは言った。
いや、アール似の青年はそう言った。
青年は本を下ろすと更に言う。
「読書のお邪魔、しないでちょうだい?」
ラムは自分の考える反応の斜め上を行き過ぎて驚きが隠せなかった。
(え…アールこんな口調じゃない…雰囲気もなんか違う…!)
すると青年はニヤリと笑った。
ラムは衝撃を受ける。
アールは性格といい普段といい、こんな顔をする訳がないからだ。
「お前誰だよ!アールじゃないな!」
「きゃは~ん!」
青年はニッコリ笑顔でそう言うと、ラムは不気味なのか顔が青くなってくる。
「素直になっちゃえばいいのに~!君のキタナイ所ってそういうところだよ?
僕みたいにぜ~んぶさらけ出しちゃってさ~!僕キタナイ人、嫌いだから。
あ、片割れくんは別だよ?」
ラムは言っている意味も理解できず呆然としていると、青年は続けた。
「彼が欲しいなら「欲しい」って言っちゃえばいいんだ。
それとも何?求められる方がお好きなのかな?」
ラムは怖くなって一歩後退すると、青年は空かさず近づく。
ラムの目を一直線に見つめ、ラムは怖くなって目を逸らしたくなるが逸らせない。
青年の吸い込まれるような瞳を見ると、ラムは動けなくなっていた。
「ねえどうしたい?どうしたいの?教えて教えて!」
ラムは正直、青年が怖かったので何も答えられなかった。
青年はつまらなそうな顔をしてしまうと、すぐにまた微笑む。
「無理?じゃ、僕が手伝ってあげるから…」
青年はニヤリとした表情でラムの肩に手を置く。
青年の手は真っ黒で鱗のある硬いものへと変化していた。
人間の手ではない、ラムはそれを知ると恐怖が頂点までに達した。
「お…俺に構うなよお化けぇえっ!」
ラムは掠れた声を出しながら叫ぶ。
その時、ラムの体から強大な魔法力が流れ出した。
魔法力が青年の手にグッと伝わると、青年は咄嗟に手を離してしまう。
そして距離を置くと、青年は自分の手を見た。
焼けた様に煙を吐いていて、ちょっぴりヒリヒリとする。
「すっごい力…」
青年は微笑んでしまうと、羽を広げて飛び立つ。
「眠りのお姫様大作戦!開始~!」
青年はそう言って森の方へと飛ぶと、ふと気づいた。
そう、自分が落とした本をそのままにしているのだ。
「あ、本…。まいっか!」
ルネアとルカは近くのりんごの木にやってくると、青りんごを採っていた。
ルネアは青りんごを片手に喜びつつ、太陽にかざしてみたりする。
すると、目の前に光り輝く巨大な何かを発見。
それはまるで巨人。
しかも形がラムに似ていた。
それを見たルネアは青りんごを落としてしまい、唖然としてしまう。
「ヤバてぃん!?ラムの化身じゃん!?」
ルカは木の上で青りんごを齧りながらそう言うと、ルネアはルカの方を見た。
「ラムさ、ガキの頃からしょっちゅう驚いては魔法力で作り上げた化身を出すんだ。
大きくなったから少なくなったけど…相当怖い事あったんかなー。」
「へぇ~…」
ルネアはラムの化身を見上げるのだった。
シナとツウは二人で歌の練習をしていると、ラムの化身に気づく。
「また何かあったの!?」
シナは驚くと、ツウは笑顔。
「そうだね、楽しそうで羨ましいよ。」
リートは坂上の木で妄想を楽しんでいると、ラムの化身に気づいた。
「え…」
リートに関しては呆然と驚いていた。
ダニエルも調理室の窓から覗くと呟く。
「やっと落ち着いたと思ったのに~」
テノは腕を回しながらラムの化身を見上げていた。
「いっちょ止めに行くか…」
テノはそう言って歩き出すが、悲しくもテナーに止められる。
そして最後に、ノノは魚を担ぎながらも丘からラムを見ていた。
「またかぁ…」
児童園の森の少し離れた場所にある洞窟の中、そこにレイが入ってきた。
洞窟の大きな岩に寄りかかり、アールは座っている。
洞窟にはペルドもいた。
レイはそのままアールの肩をトントンと叩く。
アールは振り向くと、彼女はアールの耳元で何かを報告した。
アールはそれに反応すると、アールは腕時計を確認。
しかし暗くて見えない。
そこでレイは黙ってライトを出して照らしてあげると、アールは時間を確認し終えて腕を下ろす。
その神妙で黙々とした行動をとる二人を見て、ペルドは気持ちが悪くなる。
「お前ら無言で何やってる!」
するとアールはペルドに頭を下げると言った。
「私はこれで失礼します。」
そう言って走って洞窟を出ると、ペルドは眉を潜める。
「は?」
更にレイも出てくると言った。
「私も行ってくるわ。」
レイが出ていき、二人の姿が消える。
ペルドは二人が一体どうしたのかと、首を傾げてしまうのだった。
ルカは焦って言った。
「ラムが危ないな~い!
ここいらは戦争の影響で魔法禁止で、使用するともれなく処刑されるんだよおっ!」
「そんな!」
とルネアが言うと、ルカは難しい顔をして続ける。
「最近近くで軍基地ができたらしい…。
ラムは小さい頃は魔法を暴走させるヤツだったから、ここらが警戒されてて…。
五分くらいでくるかも…!
ヤバイ!早よアールぅう!!」
ルカは興奮で落ち着きが全くない。
ルネアは冷静にはなれなかったが、気になる事を聞く。
「なぜアールさん?」
「アイツの声だけが唯一ラムを目覚めさせるの!なんでだろうね!」
ルネアはそれに納得してしまう。
(ラムはアールさんの事好きだもんなぁ。)
しかし今はそれどころではない。
あと五分。
その間にラムを止めなければ、ラムの居場所が軍に発見され
特定されてしまえばラムの命はないだろう。
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