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死にゆくもの

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テレージアがフリードを支えて
森の中に入って行く

どうやらここはテレージアの家がある郊外の森みたいだ

ミュリエルはウルドのそばに座り込むと
彼の状態を確かめる

「大丈夫?怪我とかはないみたいだけど、、もしかして記憶が戻った?」

「ああ、少し、あの男を見たら孤児院に来る前の時の事とか、、」

「そう、、、立てる?」

ウルドは頷くと立ち上がり
森に消えていく二人を見る

「テレージアにもっと話を聞きたかったな」

「そうだね、また今度会いに行こう。
今はそっとしておこう」

ミュリエルが言うとウルドも
「そうだな」と頷く

ウルドはミュリエルの後ろから風になびくピンクゴールドの髪を見ていた

(自分があのレアード、、、。確かに自分の幼少期の記憶にある母は2人いる
フリードの幼い姿を見て兄と呼んでいた、、、ような記憶も、その時、自分は金髪だった)

まだ、断片しか思い出せない

(頭の中がごちゃ混ぜだ)

ミュリエルはウルドを支え
竜に乗ると

二人は転移してライランド邸に戻った

すでに辺りは暗く
兄が待ち構えていた


事の顛末を話したあと
ミュリエルは腕を掴まれる

「何個目だ?」

知らないうちに増えた印を確認したがる兄に
妹は適当に答えた

いまは印も出ていないから目視できるわけではないのだ

「いいじゃない、便利だし悪用しないよ?」

「そう言う問題ではない」

「とにかく、もう竜は攻めてこないし、一応は解決したんだからいいじゃない」

兄から逃げ、ウルドの背にかくれた

ウルドはふぅとため息をつく

「今日はもう遅いですね、俺はそろそろ失礼します。考えたい事もあるので」

スルッとミュリエルから離れるとウルドは中庭から玄関へ向かう

「あ、裏切り者ー」

残されたミュリエルは兄に捕まり
根掘り葉掘り状況を報告させられた



翌日

王城の王太子専用の温室に
綺麗に着飾ったミュリエルと兄ランディ

デオ

青の騎士団副団長ライアンとウルドが

王太子の命で集められていた
昨日兄に話したので報告は兄からやってほしかったが、例のごとく

王太子からのら召集はお断りできないのだ

「それで、白い魔女と黒い魔法使いはどうなんだ?」

王太子の問いに
ミュリエルはサラッと答える

「ジアは心優しい魔女ですよ、友達になりました。黒い魔法使いフリードは邪悪ですが、魔力を封じて来ました。ジアが見守っています」

「そのフリード?は何が目的だったの?
結局は王国の転覆?
谷や竜、村に復讐?
なんでウルドが狙われたの?」

デオが疑問を投げかける

「その全てかも、ウルドが狙われたのは魔力ですね、どうやらフリードは自分を助けてくれた竜に魔力を分け与えていたみたいです」

「彼も竜も自力で魔力を回復できず他人から奪っていたみたいです」

とくに村を滅ぼしてからはあの独特な魔力を補充するのは難しかったはず

竜によって守られていた村は、生贄によって成り立っていた

フリードに村を滅ぼされた事によって

負の連鎖が断ち切られた

そもそも、竜も長く生きた最後の数体だったようだ、テレージアの本にあった

「しかし、話を聞くに、ウルドはぜんぜんミュリエルを護衛できていないじゃんか」

デオがまた、器用に紅茶を注ぎながら
話に割り込んできた

「仕方ないだろう、ミュリエルが規格外すぎるんだ、さすがこの国初の女騎士」

そう言いながら
王太子が紅茶を一口いただくと

ライアンがうなずきながら
「まだ、見習いですが」
とウルドとミュリエルを見た

ランディはため息をつくと王太子に伺いを立てる

「結果的に王城に侵入し、街に竜を放ち、辺境の村を滅ぼして、民を襲い、
ウルドを拉致しようとしたり
しかも、前の青の騎士団長の兄で団長を亡き者とした。そんな男をほっといてよろしいのですか?」

王太子も顎に手をおき考え込む

そんな王太子アルスはこの件を国王より一任されていた

「ライアン、君はどうだ?」

ライアンは静かに目を伏せ
また、顔を上げ、王太子を見る

「父の過去も、その兄との因縁も最近になるまで知り得なかった事でした」

「憎む気持ちはありますが私怨は控えます。しかし、斬っていいと言うのでしたら、そうしますし、殿下が捕らえてこいとおっしゃるのなら捕らえてまいります」

「ミュリエル、お前はどう思う?」
アルスが聞くと
そこにいる一同がミュリエルを見た

「許すことはできない、と思っていました。でも、彼の過去はあまりにも過酷です」

「彼にはもう魔力がほとんどありません。魔力を使う者は、魔力がなくなっても自力で回復しますが、彼の魔力回路は傷つき、もう使いものにならない。与えすぎ、酷使しすぎた。」

「彼は
もはや回復もできないほど、ボロボロな状態だと、最後に対峙した時に感じました。自分で回復できない以上、自分たちに合う黒い魔力を調達するのも難しいでしょう。」

もう村は滅び、谷底に残る黒い魔力の残滓も僅かだった

ミュリエルはウルドを見た

きっと、ウルドが最後の黒い魔力の持ち主だ

彼の実の母親はほとんど魔力を感じなかった

彼らが生き延びるためにはウルドから魔力を奪うしかなかった

「フリードも残りの竜も長くはもたないでしょう」

ミュリエルはフリードが魔法を使えないように印に制約をかけた

魔法を使わなければ少しは生きながらえる

せめて、ジアに彼との時間をあげたかった

でも、、ウルドはどうだろう


フリードが言っていた
弟の魔力

それを感じると

たぶんあなたがそうなんだろう

わたしの憧れ

団長の生まれ変わり






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