上 下
42 / 49

湖の底へ

しおりを挟む


ミュリエルとデオは湖の上から辺りを見下ろしていた

かなりの高さを飛んでいるが

氷の柱はまだ伸びていく

「寒い」
デオが震えミュリエルを睨む

「これを」
ため息をつきミュリエルはデオに赤い石を手渡した

「あったかいな」

「魔石に炎の魔力を込めたから、自分で調整しなさい」

「わかった」

「黒の騎士たちが湖の周りを警備しているはず。下に降りて合流しよう」

ミュリエルは風を調整し落ちるようにして
地面の近くで浮き上がる

着地すると辺りを見回した

「いないね」

デオも着地し
湖を見た

「水がだいぶ干上がってるな」

水がなくなったことで、湖の側面が
剥き出しになり
真ん中はかなり深くなっていることがわかる

「不思議ね、柱の中から水を汲み上げているなかな?」

真ん中は水面も凍っている

「魔力を感じる」デオが辺りを見回す

「うん、水面からも感じるけど」
ミュリエルは下を見た

「底のほうが寒いっていうか、魔力が濃い」

「騎士も兵士もいないのが気になる」
ミュリエルは少し考えてからデオに向き直る

「炎の魔石を身につけて体を覆うようにイメージしてみて」

デオは頷くと魔力を調整して体を温風で纏うようなイメージを思い描く

「、、、できた!」

「よし、まずは、真ん中の指輪を確認しよう」

「その前に、岸に転移陣を作っておく」
何かあったらここに戻って来れるように

準備が済んだら
また風を纏う

風魔法で飛び
二人は湖の真ん中までやって来た

「あれが、凍った兵士かな」

柱のある足場に凍った人間のような塊があった

「これは、溶かしたとしても生きてないか、、、?」

「時間が経ってるし、凍結が硬すぎる」

 氷に殺意が感じられる

「凍ったら死ぬ」

「俺も最初にお前と戦った時、凍ったけど」

「あれは短時間で解いてあげたでしょ
手加減してたし」

そう言いながらミュリエルは凍った兵士の下に転移陣を転写した

凍った兵士を岸に転移させ
浮き上がったまま、柱中の指輪を 
上から確認した

「あれが、魔女の指輪、、、」
デオが食い入るように眺める

青く光を放つ美しい指輪だ

「魔力が溢れてる」

指輪を媒介に下から

やがて、水が吸い上げられ柱が伸びて
干上がった湖の底が現れた

深い湖の底へも続く氷の柱

二人はゆっくり降りていく

降りきった底には

大きな氷の塊があった
中に美しい女性が凍った状態で固まっている

「氷の魔女、、、?」
デオが曖昧に呟いた

プラチナの長い髪がキラキラと輝き
時をとどめているのか

若い女性が血だらけの少女を抱いていた

「この人がサリア?」

デオがゆっくり氷に触れる

「!!」

炎の魔石で温風を纏っているのに
それを上回る魔力でデオの指が凍りつく

「魔力をあげて!デオ!」

デオは言われた通り全力で指を燃やした
そんなイメージに魔力を練る

凍った指が魔石の力で溶けた瞬間
ぐいっとミュリエルがデオを引っ張った

「魔力で負けたら一瞬で凍る」

氷から離れると

パキンと音がした
ミュリエルとデオは氷の塊を見る

視線が

彼女と目が合った

真っ赤な瞳が意思もなく見開かれて

こちらを見ている

「ミュリエル!」

バキバキっと氷に亀裂が響く

氷柱が真っ二つに
縦にひび割れ

指輪が彼女の手に落ちてきた
それは小さな指にピタリとはまった

小さな体がフワリと浮く

湖の底の地面にどさりと倒れた女のプラチナの髪がキラキラと広がる

浮いている少女を見てデオが呟く
「こども?」

ミュリエルはテレージアのクリスタルを思い出していた

血だらけの少女に傷などはなく

真っ白な髪が血で染まり所々赤い

魔力が少女から湧き出でるように吹き出した

指輪を手に入れたことで少女の体から大量の魔力が放出された

「魔力暴走だ!」

大きな長い柱氷が砕け、
細かく粒子が舞う

視界が白くなって粒子全てが魔力を帯びている

「デオ!一時離脱!全力で魔力を解放して!炎の魔石を燃やすイメージで!」

デオの体をしっかり掴み
ミュリエルは風を操り全力で上に飛ぶ

周りの氷の粒子が二人に襲いかかる

小さすぎて捌けない
炎の魔石の魔力が持つか

思ったより辺りは
氷の粒子に覆われている

まだ、氷の領域から出ない

「転移する!」

岸へ

次の瞬間、二人は岸に転移した

しかし、ここも粒子の中だった

範囲が広すぎる

「炎の魔石の魔力が、、きれる」
デオが小さく唸るように言葉を絞る
 
デオの魔力も消費しすぎた

もっと外に、、!

ウルドの顔が浮かぶ

転移を、

遠すぎる、耳飾りを取って魔力を解放しないと

そう思った時、背後に気配を感じた

寒い濃い魔力

ミュリエルは反射的に魔法で
炎の壁を展開した

氷の粒が二人に降りかかる
炎の壁が二人を守る

が粒子のせいで炎の威力が半分も出ない
防ぎきれない

防御が弱い
魔力が負けてる

少女がまた、手を二人に向けた

いつの間にか炎の魔石は効果を失って
寒さで息が苦しい

手も足も
かじかんで
動かない

もう
ダメか




視界が白くぼやけた先に

黒い影が降りたった

「?」


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

可笑しなお菓子屋、灯屋(あかしや)

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:276pt お気に入り:1

異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,109pt お気に入り:4,743

転生少女は異世界でお店を始めたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,090pt お気に入り:1,706

転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,975pt お気に入り:1,461

ご令嬢は一人だけ別ゲーだったようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:170pt お気に入り:7,986

悪役令嬢が行方不明!?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:213pt お気に入り:5,032

処理中です...