異世界帰還書紀<1>

空花 ハルル

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側近選抜試験

試験−0

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大会の前日の午後3時。
冒険者協会の修行場では、武器と武器がぶつかり合う音が鳴り響いていた。
戦っているのは、蒼とサンダーとランツェだ。
明日の試験に備えて、チーム訓練をしているようだ。
「ふぅ、ひとまずここまでにしようか」
「はぁ、疲れた」
蒼は、ルイスのお陰で数倍も強くなった。だが、ランツェとの差が、ほんの少ししか縮まった気しかしない。
「それにしても強くなったよね、二人とも」
蒼は剣の魔法の底力自体が上昇。サンダーは、前よりもスピードが上がっている。そして、雷属性の魔法の制度も上がっている。
「そうか・・はぁ・・」
サンダーも珍しく倒れ込み、息切れをしている。だが、ランツェの半分スパルタ並みの訓練のおかげで、さらに基礎力も上がり、連携力も磨かれている。
「じゃあ、もう3試合くらいしましょうか」
蒼とサンダーは気合で立ち上がり、刀を構えた。

2時間後・・
「連携もこれでオーケーかな?」
大会前の最後の訓練は終わりだ。蒼もサンダーもここまでの訓練をしていれば、負ける可能性は低いだろうと感じている。
「ついに明日か。緊張してるか、蒼」
「してる。だけど、負ける気はしてない」
3人の顔は自身に満ち溢れている。特に、蒼は。
「それじゃあ、明日に備えて、今日は早く寝ましょ。2人は先に部屋でゆっくりしといていいよ」
ランツェは、用意した修行道具などを片付けながら、そう言ってくれた。2人共正直言うと、そうしたかった。だが、手伝い3人で片付けることにした。
5分後・・
「これで、今日は解散ね。明日に備えて、早いうちに睡眠を取っておいた方がいいよ」
そして、修行場を出たところで、それぞれ一旦分かれた。


翌日・・
ついに試験の日が訪れた。朝の早いうちから、寮の窓の外から、大勢の人の声が聞こえる。
「う~ん。そうか、今日が試験か・・」
カーテンを開け、外を見ると、沢山の馬車とそれを取り囲むように騎士が歩いている。
「すごい賑ようだな」
蒼は、急ぎめで着替えとバッグの中を整理し、部屋を出た。
エントランスに行くと、既にサンダーとランツェが座って待っている。
「遅いぞ・・。とでも言おうと思ったけど、蒼にしては早いほうだな。早く行くぞ」
「大通りは、貴族の馬車が沢山走ってるから。別の行き方で行くよ」
どうやら、協会の裏口を使うようだ。3人は、裏口から出て、路地裏を通り抜け続けた。
15分ほど歩き、路地を抜けると、すぐ目の前が闘技場だった。
「久しぶりだね、3人共。参加者の入口は、こっちだよ。」
ヴィトンだ。闘技場の前で、参加者を案内しているらしい。
「ヴィトンさん。来てたんですね」
「そりゃそうだよ。蒼くん達を含めた全員の戦いを見なくちゃ、面白くないからね。上で、レイラ様と一緒に見てるからね」
ヴィトンはそう言うと、3人を見送った。

ー闘技場(裏内部)ー
裏に入ると、既に5チーム位が到着していた。
その中には、ランツェによると、総合学校時代の同級生や先輩などの知った人も参加しているようだ。
周りを見渡していると、突然、誰かが蒼の肩に手を置いた。振り返ると・・。
「久しぶりだね。蒼くん達」
後ろにいたのは、アクセルだった。
「アクセルさん!」
蒼は驚きの余り、少し大声を出してしまった。
「そんなに驚くことでも無いだろ!まさか、試験の参加者の一般情報にすら、目を通してないのか。蒼」
アクセルの後ろから、現れたのは、ルイス。そして、知らない赤髪の女性が一人。ルイスの横に並んでいることから、彼女もルイスのチームメンバーだと思われる。
「まぁまぁ。落ち着いたら・・」
「分かってるって、ラム」
女性の名前は、ラム。見た感じは、25歳くらいのかなり優しそうな顔つきの女性だ。
「ランツェもいるのね。遅れてだけど、チーム結成おめでとう」
「ありがとう。それで・・あれから強くなった?学園時代の強さの順位では、私より一つ下だったけど」
「まぁね。期待しといてよね」
ランツェによると、ラムはランツェの次に強く、能力が中々強い。というより、かなり鬱陶しい能力を持っているとのことだ。
10分後・・
「おい!そろそろ始まるみたいだぞ」
表の方から、ラッパの音や人々の歓声が響いている。まだ参加者が出てきたわけでもないのに。
「早速だが。これから、第一試合を始める。呼ばれた2チームは出てきてくれ。何か質問はあるか?」
説明をしているのは、服装から推測して、おそらくテネレ軍の一員だろう。
「質問です。トーナメント表は張り出されないんですか?」
一人の知らない男性が手を挙げ、質問をする。
「そのことだが、今年から参加者には知らされないことになった。次の対戦相手が誰か分からなくすることで、より公平性を図るためだそうだ」
蒼達を含めた参加者全員が初めて知ったことだ。だが、蒼とサンダーのとっては別に関係のないことだ。
「今、第一回戦Aブロックの対戦チームが決まったようだ」
別のテネレ軍の隊士が紙を持ってやってきた。
「さて、オレ等は何番目に来るんだろうな?」
「対戦カードは・・」
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