なぜか側妃に就職しました。これは永久就職じゃございません。

61 ＪＭＤ 会員番号0001 リサ

私はラッサム侯爵家の一人娘だ。
つまり、婿をとり、家を支えていく。
婿・友人・従者。
幼い頃から、そんな候補者として同じ年代の子供とのお茶会が何度もあった。

はっきり言おう。

私は高飛車で傲慢だった。

同じ年頃の男子は女子に比べて幼い。
女子は可愛い子ちゃんでいる為に中身のない話ばかりだ。
そんな子供達を下に見て、私はテーブルでじっと周りを観察していた。


ある日、私は驚愕した。

俯瞰するように周りを見、上手くその中に溶け込んでいる子供がいた。
騎士団長の子息という脳筋者を演じながら、人との付き合いに上手く距離を取っている子供。
その絶妙なバランスに、擬態も出来ない自分がいかに幼いのかを知った。

擬態と距離感。そしてバランス。
そのコツさえ掴めれば、ひとは手のひらで転がされてくれる。
自分の思うように誘導することは、とても容易い。


ヤルターシ。
それが子供の名前だった。


お父様は人脈は力になるよ。
と、おっしゃった。
広大なこの家と領地を舵取る為に、私はもっと精進しなくては。




学園に入学して。
私は見事に溶け込んでいた。
華やかで楽しい令嬢として、貴族・平民とわずに仲良くなった。
でも自分が何をしたいのかわからない。

～～そんな時、ジュノと知り合った。

＂生きてるのが楽しい♡＂
そんなオーラが全身から出ている。
キラキラとした可愛い姿は、いろんな所に出没するから、私は初め双子か三つ子だと思ってた。

にこにこと弾むように歩いている。
とても目立ってる。視線が行ってしまう。
貧乏だから、生活費のためにバイトしてるんだ。
と、なんのてらいもなく笑った。
いじましさも卑屈さもないその顔が、とても良い。
食堂であの山の様な皿を洗って、小銀貨一枚と銅貨5枚だと知って驚いた。
ヌーティアのケーキセットは小銀貨3枚する。
お茶代にさえならないなんて。
でも奢るなんて出来なかった。
ジュノは楽しくて、さらに誇りを持って働いている。

そんなジュノを見ているのが楽しくて、気がつくと同じような友達が出来ていた。


ＪＭＤ　ージュノを愛でる会ー
が出来たのはその時。

銀貨3枚づつ出し合ってお茶菓子にしましょう。
（学園の食堂は安価だし。）
そしてジュノの可愛いさを語らうお茶会をしましょう。
という女子会からだった。


ジュノは宰相閣下に一目惚れしたらしい。
王宮で働くと宣言して、文官試験も勉強し始めた。
ジュノならば、きっと王宮に行く。

そこで私は初期メンバーとＪＭＤを仕切り直した。
私は会員番号1番
2番は何かあった時の為の保険。
そして3・4・5・6と友人が埋まった。
王宮での益となるメンバーを想定して、20番までを空きにして、学園で入れるのは21番からにした。

きゃっきゃうふふの女子会に、あれよあれよと人が増えていく。

なるほど、人脈は力なり。

誘蛾灯のように瞬くジュノの可愛いさに、群がる輩は多い。
それを密かに潰していく。
この、裏の力はとても心地よい。

会費を取らなくても済むように考えて、密かに薄い本を作った。
同好の士はどこにでもいる。
そして、その沼は深い。


そうして私達は密かにジュノを守って行った。